サービス取組み事例紹介
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京都府 特定非営利活動法人!-Style(エクスクラメーション・スタイル)

斬新なアイディアで「驚き」を創出する !-factory

企業との連携や、ユニークな事業を取り上げ、他にはない先進的な事業を展開する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




商品を通じて社会に“驚き”や“気づき”を


!-factoryマネージャー吉野智和氏
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 「!-factory(エクスクラメーションファクトリー)」は、通所授産施設の職員だったマネージャーの吉野智和さんと京都市内で飲食店を経営している理事長の田中純輔さんとの出会いをきっかけとして、2007年4月、京都府八幡市上津屋にオープンした多機能型の事業所です。「!(エクスクラメーション)」というユニークな施設の名称には、施設でつくる商品を世に出していくことで、社会に対して“驚き”や“気づき”を与えたいという彼らの思いが込められています。



!-factoryの利用者と職員のみなさん
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 白を基調とした平屋建ての施設は、周囲の畑や田んぼの緑色とのコントラストが印象的です。施設内も白を基調としており、原色のモダンなインテリアが並ぶ休憩スペースは、明るく開放感があり、まるでスタイリッシュなカフェのような雰囲気を醸し出しています。
 現在、!-factory(エクスクラメーションファクトリー)では、陶器製品を製作するPRODUCTteam(プロダクトチーム)と食品加工事業を行なうKITCHENteam(キッチンチーム)に分かれ、24人の利用者がいきいきと働いています。



オリジナル陶器ブランド「・irie・(アイリー)」を生産するPRODUCTteam


陶器を製作するPRODUCTteamの作業風景
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 !-factory(エクスクラメーションファクトリー)のこだわりは「バザーなど福祉の関係先で販売するのではなく、一般市場で販路を確保して販売していくこと」と吉野智和マネージャーは言います。陶器生産の取引先開拓は、一年に2回名古屋で開催される「クリエーターズマーケット」や、「ギフトショー」といった企業のバイヤーと出会える見本市に出展したり、インターネット等で募集されるデザインコンペに参加するなどして、継続的かつ積極的な営業活動を行なっています。






オリジナル陶器ブランド・irie・(アイリー)の花器
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 現在、PRODUCTteamでは、「・irie・(アイリー)」というオリジナルのブランド名で花器や生活雑貨、食器などを生産し、「松花堂美術館ミュージアムショップ」や「bao-bab.fleur 新宿MYLORD店(バオバブフルール)」などから注文を受け提供しています。PRODUCTteamでつくる陶器は、いずれもデザイン性が高く、「そこにあることでその場の空気が変わる、思わず笑みがこぼれる商品」というコンセプトの通り、「どことなく気分が“ほっ”とする」ような商品ばかり。
 デザインや商品企画はプロのアドバイスを受けているのかと思えば、基本的には吉野マネージャーが中心となってスタッフたちが知恵を絞り合って企画しているそうです。吉野マネージャーやチーフスタッフの秋保行宏さんは、!-factory(エクスクラメーションファクトリー)を設立する以前に働いていた共同作業所でも陶器製品の製作に関わっていたそうで、それらの経験と持ち前のセンスが生きているのでしょう。



カタログ通販会社との連携で生まれたヒット商品「手づくり陶器のおうち型スタンプ」


食器づくりに励む利用者
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 PRODUCTteamでは、オリジナルブランド「・irie・(アイリー)」の他にも、販売先の企業と連携し、企業の担当者と共同で商品の企画開発を進めています。企業との連携により企画された商品は「思いも寄らなかったユニークなアイディア商品が生まれる」と吉野マネージャーは言います。たとえば、ヒット商品例として、大手通信販売会社である株式会社フェリシモと企画した「手づくり陶器のおうち型スタンプ」が挙げられます。当初、吉野マネージャーは「おうち型の小さな陶器」を「指輪置き」として提案したそうですが、フェリシモから「スタンプにして販売しよう」と逆提案をされ、目からウロコが落ちる思いだったそうです。この商品はPRODUCTteamで手づくりするおうち型の小さな陶器に、消しゴムはんこ作家cache blanc(カシェブラン)さんのゴム印を合わせたスタンプで、デスクまわりに並べておくだけでも見て楽しめる可愛らしい商品です。マーケティングやセールスが得意な企業との連携による商品づくりの好例と言えるでしょう。
 ちなみに、フェリシモは、まだ、商品もなければ、施設さえも立ち上がっていない段階から、吉野マネージャーたちが営業活動を行ない、事業にかける思いや商品のコンセプト、自分たちができることをプレゼンテーションすることで取引の内諾を得ていた取引先で、施設が立ち上がると同時にスムーズに契約が進み、取引がはじまったそうです。


おうち型の小さな陶器
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 商品を完成させてから販売先を開拓するという手順を踏みがちですが、先に販路を見つけて、その販路が望んでいる商品を企画し生産した方が合理的ですし、当然のことながら販売量も期待できます。特に、企業を相手にする場合、マーケティングやセールスは福祉施設よりも企業の方が長けているわけですから、餅屋は餅屋に任せ、福祉施設は生産(品質や納期)管理に徹するのが得策です。このように!-factory(エクスクラメーションファクトリー)のPRODUCTteamは、「・irie・(アイリー)」というオリジナルブランドを持つ一方で、フェリシモをはじめとする企業と連携し、いわゆる「オーダーメイド方式」で受注し、ほとんど在庫を残すことなく生産、販売活動を行なうことで収益を上げています。



飲食店向けに半調理品をオーダーメイドで提供するKITCHENteam


KITCHENteamの作業風景
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 !-factory(エクスクラメーションファクトリー)のもう一つの事業の柱となっている食品加工事業(KITCHENteam)も、陶器生産と同様に、飲食店向けに半調理品をオーダーメイドで提供しています。半調理品は、カレーのルーや鶏がらスープ、玉ねぎの飴色炒めなど、仕込みに時間のかかるものが中心となっています。
 取引先は、当法人の理事長田中純輔さんが経営する株式会社J・F・Sの「Tyoujiya〜丁子屋〜和食ダイニング」「restaurant&garden chou-cho(レストラン・アンド・ガーデン・チョウチョ)カフェレストラン」をはじめ、田中さんのご人脈や紹介により広がった京 野菜と炭火焼きの居酒屋や、蒸し料理専門店などこだわり料理を提供するお店が中心です。
 「飲食店のオーナーは、単純なコストダウンを目的として、半調理品の生産を依頼してくるわけではありません。KITCHENteamが時間のかかる仕込みをお手伝いすることで、料理人は他の仕事に手間をかけられ、よりこだわりのある料理を提供できるのです」と吉野マネージャー。


取引先の一つ、ハートガーデンのメニュー
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 確かに、飲食店にとって、コストダウンが目的ならば福祉サービス事業所に依頼するよりも、工場で大量生産した業務用加工食品を取り扱っている商社やメーカーに注文した方がより安価に入手できます。先に挙げたこだわり料理を提供する飲食店にとって、KITCHENteamがつくる半調理品は、価格ではなく「手づくりであること」に加え、「自店の望んでいる味付けや煮込み加減や焼き加減」で提供してくれる点で大きな価値があるわけです。
 また、半調理品の生産にあたっては、利用者のかたが包丁を使用しなくても調理できるようにフードプロセッサーを、また、短時間に一定品質の調理ができるようにスチームコンべクション(蒸気により加熱する機械)等の機械を導入したり、味付けや包丁を必要とする工程を職員がサポートしたりすることで、品質レベルを一定に維持しています。



飲食店と強力なパートナーシップを築くキッチン代行業


ハートガーデンの入口
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 とはいえ、KITCHENteamの取引先はこだわり料理の飲食店ばかりではありません。取引先の一つで京都市内の複合施設の1Fにある「café+deli+gallery heartgarden(カフェ+デリ+ギャラリー・ハートガーデン以下、ハートガーデン)」というカフェでは、ハヤシライスやチキンカレー、ハンバーガーといった軽食を約15品目提供していますが、ここで提供する軽食のほとんどはKITCHENteamが手づくりしたものです。KITCHENteamでは、ハヤシライスのルーやハンバーグ、料理に添えるポーションに至るまで、真空パックマシンを用いて、1人前ずつ真空パックに詰め、冷凍した上で、ハートガーデンに納品しています。出来立ての手づくり料理を真空パックに詰めるわけですから、市販や業務用のレトルト品とはひと味違います。ハートガーデンでは、この真空パックをお客様から軽食のオーダーが入った都度、電子レンジや湯煎機にかけることで、温かく美味しい料理を提供できる仕組みを取り入れています。このシステムなら誰が調理しても均質な味で料理を提供できる上、厨房はわずかなスペースでも対応できるため、カフェや飲食店にとってホールを広く取り、より多くの座席数を確保できるというメリットがあります。


手づくり料理を1人前ずつ真空パックしたもの
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 このように、多品種少量で自店の味を手づくりして納品してくれる!-factory(エクスクラメーションファクトリー) KITCHENteamは、飲食店にとって、無くてはならない強力なパートナーとなっています。まるで、チェーンストアのセントラルキッチンのような存在であり、単なる食品加工事業ではなく「飲食店のキッチン代行業」と言った方が適切かもわかりません。
 最近、外食業界では、ハートガーデンに限らず、冷凍食品を電子レンジで温めて料理を提供する飲食店が増えていますから、福祉サービス事業所にとって「飲食店のキッチン代行業」は大きな潜在市場がありそうです。
 コストダウンを望む企業から単純作業を言われるがまま受託するのでは、工賃アップの実現は難しいでしょう。さらに、不況で消費が低迷し企業が収益を上げるのに四苦八苦している現状を見ると、今後は受託できる仕事量が減少したり、取引が中止になったりするケースも出てくるでしょう。しかし、!-factory(エクスクラメーションファクトリー)のように企業にとって必要不可欠な付加価値を提供し、無くてはならない強力なパートナーに位置づけられれば、高い収入が期待できますし、何よりも永きにわたって取引が継続するに違いありません。!-factory(エクスクラメーションファクトリー)は、設立後3年に満たない新しい施設ですが、企業連携のモデル事例として、障害福祉サービス業界に新しい風を吹かせそうです。




取材日 : 平成21年8月

今回のポイント


@ 商品を完成させてから販売先を見つけるのではなく、先に販路を見つけて、その販路が望んでいる商品を企画し生産する。
A 飲食店にとって手間暇がかかる仕込み作業を、飲食店の望む味付けや煮込み加減、焼き加減で提供する。
B 調理機能をまるごと引き受けることで、飲食店にとって必要不可欠な存在になる。


経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


施設名 !-factory
(エクスクラメーション・ファクトリー)
開所時期 平成19年4月
設置者名 特定非営利活動法人!-Style
(エクスクラメーション・スタイル)
利用者数 24名
所在地 京都府八幡市上津屋南村7
職員数 常勤7名 常勤以外1名 
電話番号 075-983-8966
FAX 075-983-8966
代表者 田中 純輔 氏
連絡担当者 吉野 智和 氏
施設種別 就労移行支援
就労継続支援B型
事業内容 陶器生産事業、食品加工事業
障害種別 知的、精神
平均工賃