サービス取組み事例紹介
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石川県 社会福祉法人 佛子園

天然温泉とカフェが町民たちの憩いの場に 三草二木 西圓寺

地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




廃寺を再生せよ〜西圓寺プロジェクト〜


西圓寺の町おこしについて説明する岸本マネージャー  石川県小松市野田町の中心にある西圓寺。
 西圓寺はもともと500年を超える歴史を持つお寺でしたが、3年前に住職が亡くなった後、後継者が見つからず、廃寺になってしまいます。荒れ放題になる寺を放置するわけにもいかず、また、地域の人々にずっと親しまれてきた寺を取り壊すのも忍びないということで、社会福祉法人佛子園が中心となり、地域住民とともに廃寺の再生に取り組みました。
 県内で障害者更生施設や授産施設を運営している佛子園が、西圓寺の再生プロジェクトにおいて重視したことは、「障害者福祉」の領域を超え、障害者だけではなく、老若男女すべてにとって優しい施設、地域住民が集える場として再生することでした。
 地域住民を巻き込み、人が集うためには、「話し合いのプロセス、そして、施設に明確なコンセプトを持たせることが重要」(清水愛美施設長)ということで、2年間にわたって何度も野田町の住民と話し合いを重ねていきました。
 そして、平成19年11月、西圓寺は福祉施設「三草二木 西圓寺(さんそうにもく さいえんじ)」として生まれ変わります。


天然温泉とカフェが町民たちの憩いの場に


カフェを利用する地域住民  「三草二木(さんそうにもく)」というコンセプトには、草木が違った成長をし、違った花を咲かせ、違った実を結ぶように、老若男女、障害のあるなしにかかわらず、お互いの個性が尊重され、持ち味を発揮しながら支え合う、人にやさしい地域コミュニティを目指すというソーシャルインクルージョン(包括する社会の創造)の理念が込められています。
 地域コミュニティとしての最大の特長は、何といっても温泉があることでしょう。「西圓寺温泉」と名付けられた天然温泉は、男湯、女湯ともに内湯と露天風呂があり、一般の方には400円、野田町の住民の方にはなんと無料で開放されています。また、受付前には足湯コーナーも設けられ、こちらは一般の方にも無料で開放されています。
 「温泉があれば、老若男女問わず、地域の人に喜ばれ、気軽に人が集うようになる」と、お寺の改修の際に掘削されたものです。
 また、本堂内陣はカフェに改修し、地域の交流スペースになっています。本堂を使ったカフェには、西圓寺の虹梁の柱や障子がそのまま残されています。改修の際に見つかった調度品もうまく活用されています。古寺の面影を残した和のテイストが心地よく、天井も高いため、ゆったりと落ち着いて過ごすことができます。このカフェは、夜、酒場に早変わりする他、カフェの隅には子供たちも楽しめるようにと駄菓子コーナーも設けられています。
 取材中、女性客同志が足湯で、また、カフェのカウンターで温泉に入浴された町民の方とスタッフが会話を楽しんでいる様子がとても印象的でした。
 「以前は町の人同志が交流する機会はほとんどなかったんです。温泉ができたことで、毎日のように利用してくれて、こうしてカウンターでくつろいでいかれ、自然と町の人同志の交流がうまれたんです。みんなすごく喜んでいます。町の雰囲気が変わりましたね」そう語るスタッフの村永さんも野田町の町民の一人です。
 このように「三草二木 西圓寺」には、天然温泉や足湯、駄菓子コーナーやカフェ、酒場を目当てに子供からお年寄りまで地域住民が自然に集うようになりました。


ワークシェアで生まれる利用者と町民の交流


野田町の住民と利用者たち  「三草二木 西圓寺」には、もう一つ働く場としての顔があります。  現在、「三草二木 西圓寺」には就労継続支援B型の施設の利用者として7名の障害者が登録し、施設内で販売する漬物づくりや、庭や温泉の清掃やカフェの運営にあたっています。
 働く場としての最大の特長は、ワークシェアという発想を取り入れている点です。
 野田町には、定年などで引退してもまだまだ元気に働ける方、家事が忙しくても短時間なら働ける主婦の方がたくさんいらっしゃいます。「三草二木 西圓寺」では、一日長時間働かなくても、それぞれの体力や都合に合わせて勤務時間や勤務日数を設定できるように、「ワークシェア手帳」という手帳をつくり、働いた時間に応じてポイントがたまり、毎月、たまった分の報酬が受けられる仕組みを導入しました。利用者(障害者)と地域の住民、高齢者の方々が、できることをやれる範囲で仕事を分け合い、例え1時間でも2時間でも運営に参加し、みんなで西圓寺を支えるようにしたのです。
 例えば、カフェの厨房では、利用者が仕込みを手伝い、地元の主婦がおばんざいづくりで持ち味を発揮しています。また、漬物づくりでも、手づくりの味噌、梅干、漬物などの漬け込みを利用者や職員に指導してくれたのは地元の主婦の方々です。現在も、袋詰め、シールやラベル貼りなどパッケージングは利用者が中心となって行いますが、漬物づくりは利用者と職員と地元の主婦の方々が一緒になって作業します。
 ここでも、それぞれの持ち味を活かして支え合う「三草二木」のコンセプトが貫かれているのです。


地域コミュニティ、そして、町おこしの拠点へ


浴場の清掃を行なう利用者  当初、町民の中には、障害者と働くことに対して不安の声もあったそうですが、一緒に掃除をしたり、作業を共にすることで徐々に気持ちがほぐれ、今ではすっかり利用者たちが町に溶け込んでいる様子です。利用者たちと一緒に働く方もいれば、それを支えようと、家で取れた野菜をさし入れてくれる方もいらっしゃいます。開所してわずか半年間ですが、町の生活の一部に「三草二木 西圓寺」があり、まさに目指すべくソーシャルインクルージョン(包括する社会の創造)が具現化したことを見せています。
 今春には、本堂のカフェスペースを利用して町民と一緒に和太鼓の体験会が行われ、ミュージシャンを招いたライブも開催されました。人が集い、人が交流すれば、新しい試みも生まれます。公演後には、町民から本堂の使い方についてたくさんの意見が寄せられたそうで、廃寺で取り壊されそうになっていた西圓寺が、今では町おこしのシンボルになっています。
 昔から、お寺は日常的に町の人たちが集い、子供たちも境内で遊び、節目節目には様々な行事が行われる町の生活にとってかけがいのない場所でした。西圓寺プロジェクトは、単に廃寺を再生しただけではなく、人と人との交流やお寺が今まで地域で果たしてきた機能まで再生することに成功しました。「昔からお寺は荒廃を繰り返してきましたが、これでもうそんなことはなくなると思います」と、雄谷良成理事長も手応えをつかんでいる様子です。
 取材日の数日前には、天然温泉を中心にテレビでも紹介され、地域外からもたくさんのお客様が「三草二木 西圓寺」を訪れました。今後、障害者雇用、廃寺再生の事例としてのみならず、地域共生のモデルケースとして、ますます注目を集めることでしょう。

取材日 : 平成20年6月

今回のポイント


@ コンセプトを明確にし、そのコンセプトに基づいた機能を持たせている
A 温泉を核としてカフェ・居酒屋というコミュニティスペースを持つことで、自然と人が集まり、交流する場をつくっている
B 「障害者福祉」の領域を超えて、町民と一緒になって廃寺再生に取り組んだこと


経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


施設名 三草二木 西圓寺
設置者名 社会福祉法人 佛子園
所在地 石川県小松市野田町丁68番
電話番号 0761-48-7773
代表者 清水 愛美 施設長
施設種類 就労継続支援B型
障害種別 知的・身体・精神障害者
開所時期 平成19年11月
利用者数 20名
職員数 常勤3名
FAX 0761-21-2120
連絡担当者 岸本 貴之 マネージャー
事業内容 温泉施設・カフェの運営味噌・漬物など特産品づくり
平均工賃 140〜210円/時