サービス取組み事例紹介
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東京都 社会福祉法人めぐはうす

商店街に拠点を持ち、店舗運営、商店会活動に取り組む地域活動支援センターMOTA

地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




下高井戸の商店街にあるアットホームなスペース


地域生活支援センターMOTA  地域生活支援センターMOTA(モタ)は、精神に障害がある人が地域でいきいきと生活できるようと、平成14年、東京都世田谷区の下高井戸に設立された施設です。MOTAという名前は“もたもたしてもいいよ”という意味と、活動の拠点である下高井戸(しもたかいど)の地名から「もた」の二文字をとってつけたそうです。そんな名前の由来通り、MOTAは下高井戸の街に溶け込み、障害のある人もない人も気軽に、気楽に出入りするフレンドリーでアットホームな存在です。
 MOTAでは商店街に面した一階のオープンスペースで、ミーティングや音楽会、学習会やレクリエーションをおこなっています。プログラムがない時でもユーザー(障害者)がふらっと訪れて仲間と話をしたり、スタッフに相談を持ちかけたりします。取材したこの日もユーザーとスタッフの数人が和気あいあいとおしゃべりに花を咲かせていました。
 「ここには何を楽しみに通っていますか?」という問いかけに、「一人暮らしだけど、ここには仲間がいるから」「スタッフにいろいろ相談できるから」と、ユーザーの皆さんがMOTAを日常の拠り 所にしている様子が伺えます。


まず街の真ん中に居場所をつくることから


MOTAでの交流の様子  MOTAの重要な方針のひとつに「地域連携」があります。障害者施設の中には“障害者が地域に溶け込んで暮らす”というモットーを掲げる所は多いものの、ともすれば街中から一歩離れた場所に活動拠点が設けられているケースがあります。しかし、同センターでは「地域で当たり前に暮らすためには、街の中に自然に出入りできる所でなければ」と、設立の際に商店街の中に絞って場所を探したといいます。そんな強い決意もあり、MOTAは京王線下高井戸駅から徒歩2分、賑やかな下高井戸商店街にスペースを見つけることができました。
 下高井戸商店街はとても活気のある商店街です。駅を中心に、四方に食料品店やコーヒーショップ、生花店や雑貨店、ドラッグストアや書店など暮らしに必要なお店が広がっており、とても人通りが多い商店街です。また、商店街の人たちも親切で、道に迷うと「このすぐ先よ」とわざわざ店から出て道順を教えてくれるようなあたたかさがあります。
 街の真ん中に居を構える、そのこと自体がまずMOTAの地域連携といえるでしょう。


ゴミ拾いから「ありがとう」のコミュニケーション


沖縄ショップ“てぃんからゆがふぅ  立地条件だけで地域との関わりを得ようとしているわけではありません。
 MOTAの取り組みのひとつに沖縄ショップ“てぃんからゆがふぅ 天からの恵み”の運営があります。てぃんからゆがふぅは同じく下高井戸商店街の中にあるお店で、主に沖縄の食材とリサイクル品を販売しています。
 もともとこのショップは支援センターの施設家賃と運営費を捻出するために始めましたが、開店から約6年、今では下高井戸の沖縄食材の店として商店街の中に定着しています。店内には純黒糖、サーターアンダギー、シークヮーサー、ちんすこうなど沖縄の食材やお菓子が約80種類、そして地域の方たちから寄付された服、アクセサリー、食器などのリサイクル品が所狭しと並んでいます。
 店を営むことで地域の人々との関わりは十分持てますが、MOTAの皆さんは商店会に所属する意義を生かし、商店街活動にも熱心に参加しています。町内会の祭りを手伝ったり、自らお店を出したり。てぃんからゆがふぅでは下高スタンプという商店街の活性化を図るスタンプ事業にも参加しています。「スタンプの実績は芳しくありませんが・・・」とスタッフの野瀬さんは苦笑しますが、スタンプ会議や商店会のミーティングに積極的に出席することで、MOTAの活動をPRする機会が得られたり、新たな相談が持ち込まれたりするそうです。
 また、毎月一回、クリーン作戦と称してユーザーたちが自発的に店舗周辺のゴミ拾いをおこなっています。その活動の中から“こんにちは”“ありがとう”のコミュニケーションが生まれ、MOTAがさらに地域に根付くきっかけとなっています。そのような日々の積み重ねは障害者にとって日常の暮らしそのものであり、また、周囲の人たちの障害に対する理解にもつながっています。


お客様とのやり取りで復職を


ユーザーの鬼沢さん  てぃんからゆがふぅの運営は地域連携のみならず就労の準備等の役割も果たしています。
 ここで週4日働くユーザーのひとり鬼沢さんは、商品の発注、検品、値札貼り、接客など、販売の一連の流れを担当しています。鬼沢さんは精神の病で寝込んでいる時に人とのコミュニケーション不足を感じ、復職に向けてここで働き始めました。「いきなり復職するのは難しいですが、ここでの仕事を通じて頭の使い方を慣らすことができる」と言います。たとえばウコンの効用など、商品のポイントをきちんと説明することはもちろん、マニュアル通りの解説では納得しないお客様には他の切り口で商品の説明をしなければなりません。お客様によってコミュニケーションのとり方を工夫することを意識しているそうです。「売上をあげるためには改善と提案が必要。ここでは問題解決型のモチベーションを保つことができる」と仕事への意欲的な取り組みを語ります。
 お客様との会話から得られる適度な緊張感、ユーザー同士の助け合いと癒しがあるこの店の存在が復職への大きな助けとなっているようです。


地域の風景を絵はがきに


まごの手便にて絵はがき作成の様子  同じ商店街の中にもうひとつ“まごの手便”という施設があります。MOTAを設置する社会福祉法人めぐはうすが運営する共同作業所です。MOTAより小さなユニットで活動するのが特徴で、仕事にあまり負荷をかけず、作業を通じて元気を取り戻すことに主眼を置いています。
 ここでは主に絵はがきやカレンダーを作って販売していますが、その絵柄がまさに地域らしさを表しています。昔ながらの趣を色濃く残す東急世田谷線の電車や沿線風景を描いた作品がほとんどで、これらを一枚百円で福祉ショップや商店に置いて販売します。
 「世田谷線は地域のシンボル。愛着のある人がいっぱいいます」とスタッフの岡部さんは素材を選んだ理由を話します。この絵がきっかけとなって、ユーザーと地域の人々との会話が弾むこともあるとか。これも地域に溶け込んで暮らすという施設の方針を具現化する一例のように思いました。

取材日 : 平成20年9月

今回のポイント


@障害のある人が地域で自然に暮らすという施設の方針を店の立地、商店街活動など、ハード・ソフト両面で具現化している。
A職員・スタッフの働きかけだけでなく、ユーザーたちが当事者意識を持ってプログラムの構築や実施、店舗運営に関わっている。

中小企業診断士 荒木 さと子

施設概要


施設名 地域生活支援センターMOTA
設置者名 社会福祉法人めぐはうす
所在地 東京都世田谷区赤堤5-33-5 野口ビル2階
電話番号 03-3325-7307
代表者 開原 久代 氏
施設種類 地域活動支援センターI型
障害種別 精神
開所時期 平成5年3月
利用者数 83名
職員数 常勤4名非常勤5名
FAX 03-3325-7307
連絡担当者 野瀬 千亜紀 氏
事業内容 地域活動支援センター指定相談支援事業 他
平均工賃

平成21年12月現在