サービス取組み事例紹介
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富山県 社会福祉法人フォーレスト八尾会

卓越した商品開発力を強みに地域と協働する フォーレスト八尾会

地域住民を巻き込んだ事業スタイルや、自治体との連携をした事業、地域の特産品を活かした事業等、地域と連携をしながら発展する事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




目抜き通りの交流拠点「工房 風のたより」


工房風のたより施設内
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 富山市八尾町は伝統芸能「越中おわら風の盆」で全国的に知られており、盆踊りが見られる毎年8月20日〜9月3日の観光シーズンには約30万人もの観光客が訪れます。
 社会福祉法人フォーレスト八尾会が運営する就労継続支援事業所「おわらの里」の拠点の一つ、「工房 風のたより」は、おわら踊りの目抜き通り、上新町商店街の中心に位置しています。施設内には、観光みやげ品の工房、お菓子の工房の他、喫茶コーナーや体験コーナーが併設されており、地元の人や観光で訪れたお客様が気軽に立ち寄れる町の交流拠点になっています。



観光みやげ品を手づくりする利用者たち
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 取材で訪れた日、観光みやげ品の工房では6名の利用者が、お菓子の工房では2名の利用者がそれぞれ黙々と手作業を進めていました。喫茶コーナーの周囲には、工房で手づくりされた観光みやげ品(20アイテム150円〜4000円)やお菓子(15アイテム150円〜1000円)、桑の特産品(8アイテム500円〜3000円)が陳列されており、その豊富な品揃えは訪れたお客様の目を飽きさせません。
 「このしおりには10人の人が関わっています。いわゆる受託の商品だと仕事の範囲が決まってしまうので、関われない人がでてきてしまう。自主製品を少量多品種でつくり、仕事を分解すれば、多くの人が仕事に関われる。だから、うちは自主製品にこだわっています」と職員の島滝 しず子さんが語るように、これらの商品のほとんどが自主製品です。自分たちが工房でつくった商品をお客様が手にとってくれて、目の前で売れていくことが、利用者のみなさんのやりがいにつながっている様子です。


お客様の声を聞き逃さない


桑せんべい おわら踊り子
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 「越中おわら風の盆」の開催期間中こそ観光客で賑わうものの、八尾町の人口はわずか2万2000人です。目抜き通りとはいえ、普段、商店街の人通りはまばら。利用者たちの仕事をつくること、工賃を支払うために事業収入を上げていくことは、容易ではないでしょう。
 職員のかたから陳列されている商品について説明を受けると、様々な創意工夫がされていることがわかり、目からウロコが落ちる思いでした。
 「おわらの里」でつくる自主製品は、地域の活性化を図り、地域にまつわるものや地域の産物を用いて開発している点が特長です。
 例えば、八尾町は江戸時代には日本の蚕種の4分の1を生産したほど養蚕で栄えたそうですが、今年5月1日に発売したばかりの「桑せんべい おわら踊り子」(350円)は、八尾町で収穫されたお米に桑の葉の粉末を混ぜ、一つひとつ踊り子の型をくりぬいて焼き上げています。
 また、「八尾和紙」「おわら」という八尾町の2大観光資源を活かして商品化した「和紙おわらはがき」(1000円)は、第42回全国推奨観光土産品審査会において品質やデザイン性が評価され、民間企業が名を連ねる中で日本観光協会会長賞を受賞しています。

和紙でつくるおわらはがきと紙風船
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 とりわけユニークな観光みやげ品に紙風船「風のたより」(500円)があります。富山と言えば、「富山の薬売り」が有名です。かつて、富山の薬売りは家庭を訪問した際、子供たちに紙風船を配っていたそうで、この紙風船にメッセージ記入欄を設け、便箋にアレンジしたのです。
 いずれも「おわらの里」でしか買えない商品ばかりなので、八尾町を訪れた観光客に好評のようです。
 こうした商品開発のアイデアはどのように生まれるのでしょうか?
 「“風のたより”は県の観光連盟から紙風船をたくさんいただいたのがきっかけでした。その紙風船をお客様にお配りしていたら、“懐かしい”“嬉しい”といった声を数多く頂戴しました。それだけ喜ばれるのであればということで、紙風船を自主製品として作りはじめたのです」
 島滝さんがこう語るように「おわらの里」は、お客様の声や反応を逃さず、商品開発に活かしています。また、他所の観光地にも足を運び、観光客が手にするみやげ品や、自分たちも「ほしい」と感じた商品をアイデアの種にして試作品をつくり、売れ行きを確かめながら定番商品化していくのだそうです。
 さらに、「ガーゼのものはないの?」というお客様の声を聴けば、タオル地だった商品をガーゼに変更したり、横長の模様の布を縦長の模様に変更したりと、変化するお客様のニーズを捉えながら、常に商品に改良を加えているのです。


アイデアを集めて次々と商品開発にチャレンジ


蚕のまゆでつくる五月人形
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 こうした創意工夫により、「おわらの里」の利用者たちがつくる観光みやげ品は、 8月20日〜30日の前夜祭、9月1日〜3日の本祭を合わせた「越中おわら風の盆」の期間中、2週間で毎年250万円〜300万円を売り上げるそうです。
 お祭り期間中の売上は「おわらの里」にとって大きな利益であることに違いありませんが、それでも事業収入全体(昨年度1600万円)の15%程度に過ぎません。人口22,000人の小さな町で、利用者たちの仕事を創出していくために、「おわらの里」ではさらなる創意工夫を重ね、事業収入を上げています。
 例えば、お正月は「八尾和紙」を使ったえと色紙やしめ飾り、3月は蚕のまゆで作る雛人形、同じく、5月も蚕のまゆで作る五月人形など、観光みやげ品と同様に八尾町ならではの素材を活かした季節商品で売上をつくっていきます。
 また、前述した通り、八尾町はかつて養蚕業で栄えていました。町の賑わいを取り戻したいと願う「おわらの里」は、「桑deルネッサンス研究会」という市民団体と連携し、町内の遊休農地に桑畑再生に向けて桑の植え付けをはじめると共に、桑を使った名産品の開発に取り組んでいます。

桑の実
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 商品開発にあたっては、地元の関係機関の提案だけではなく、八尾を訪れた観光客にも町づくりに参加してほしいという願いから、桑の粉末を郵送し、桑粉を使ったアイデアレシピを募集しました。この呼びかけに、全国から約100点の応募があったそうです。現在、「工房 風のたより」に併設している桑菓子工房「まるべりー」では、これらのアイデアを参考に、「桑シフォンケーキ」(400円〜1000円)をはじめ、地元の高校の提案による「くわっきー(クッキー)」(200円)、さらには、ご当地ソフト「桑ソフトクリーム」(300円)を商品化し、観光客に人気を博しています。
 また、この桑畑の再生に関しては、他の福祉サービス事業所にも声をかけ、草刈りや桑の苗の定植を手伝っていただいているそうで、企業と福祉施設の連携のみならず、福祉施設同士の連携も生まれているそうです。


企業や観光協会との協働で生まれた「おわら桑摘み茶」


おわら桑摘み茶
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 「おわらの里」が観光資源として期待を寄せる桑の葉は、中国では古くから健康茶として珍重されてきました。近年では研究も進み、桑の葉に、脂肪やコレステロール抑制効果、血糖値改善などの効果があることもわかっています。
 こうした桑の葉の健康効果に着目した富山の製薬会社や観光協会と共に企画した商品に、「おわら桑摘み茶」があります。ペットボトルに入った「おわら桑摘み茶」(500ml入/150円)は、現在、スーパー、駅や空港の売店等で市販されています。
 「おわら桑摘み茶」の企画販売に関して特筆しておきたい点は、「おわらの里」がメーカーに桑の葉の原料を供給するだけではなく、「おわらの里」でも1本90円で仕入れて店頭販売し、さらに「おわら桑摘み茶」の収益金の一部(1.5円/本)が「おわらの里」(桑畑再生事業)に入ってくる仕組みになっていることです。すなわち、「おわら桑摘み茶」の広がりは、メーカーである製薬会社の収益につながるばかりではなく、「おわらの里」の運営支援、ひいては八尾町の桑畑の再生や活性化につながるというわけです。

桑の葉の粉末を入れたクッキーをつくる利用者
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 お客様の声を拾うとともに、知恵と工夫で、地域の資源を様々な商品に仕立て上げている「おわらの里」ですが、消費が減退していく中で、どれだけ消費者が買いたくなるものを産み出していくかが課題と言います。特に、今後は「桑ソフトクリーム」のようにその場で消費するものに注力していきたいと考えているそうです。
 「つくったものが売れていくことが何より嬉しく、自主製品ならではのやりがいです。だから、“おわらの里”では、利用者も職員も関係なく、みんなで“できること探し”“売れるもの探し”をしています。“いいこと探し”をすれば仕事は楽しいですよね」と語る島滝さん。
 このような仕事を楽しむ姿勢やワクワクする気持ちが、他の関係機関を巻き込む大きな力やアイデアを産む原動力になっているのでしょう。


取材日 : 平成21年5月

今回のポイント


@ 卓越した商品開発力で、八尾町の特長を活かした商品づくりを行なっている
A 顧客ニーズを捉えながら、商品改良を繰り返している
B 企業や市民団体、福祉施設などと積極的に連携し、中心となって町づくりに取り組んでいる


経営コンサルタント 石田 和之

施設概要


施設名 おわらの里
設置者名 社会福祉法人フォーレスト八尾会
所在地 富山県富山市八尾町53番地3
電話番号 076-454-2117
代表者 小林 次木 氏
施設種別 就労継続支援B型
障害種別 身体、知的、精神
開所時期 平成9年4月
利用者数 32名
職員数 常勤6名、常勤以外1名
FAX 076-454-2117
連絡担当者 島滝 しず子 氏
事業内容 おわら観光みやげ品、農園、喫茶店、菓子製造販売
平均工賃 13,000円
URL http://www.cty8.com/forest/index.html