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社会医療法人財団 大和会

地域連携パスを積極的に導入し地域完結型医療を推進 東大和病院

訪問日 平成25年10月23日
東京都東大和市にある社会医療法人財団大和会・東大和病院は、救急と急性期医療を中心に地域の中核病院として地域医療に貢献してきた。近隣の医療機関と連携して地域連携パスを積極的に導入するなど、地域完結型医療を推進している。その取り組みを取材した。

※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年12月号に掲載されたものです。

東京都第1号となる社会医療法人の認可を取得


 昭和26年に設立された東京都東大和市の社会医療法人財団大和会は、「生命の尊厳と人間愛」を理念に掲げ、地域社会に信頼される保健、医療、福祉を目指してきた。
 法人施設は、東大和市、武蔵村山市を中心に東大和病院をはじめ、介護老人保健施設、平成17年に武蔵村山病院を開設。在宅部門には在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、指定居宅介護支援事業所のほか、市からの委託事業として地域包括支援センターを運営し、急性期から在宅までの医療提供体制を構築している。平成21年には東京都で第1号となる社会医療法人の認可を取得し、現在に至っている。


▲社会医療法人財団 大和会 東大和病院の外観

 法人の中核となる東大和病院は、284床の急性期病院である。救急医療を中心に高度の先進医療を担う地域の中核病院として、北多摩西部二次医療圏の急性期医療に貢献してきた。診療はがん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病の4疾患に運動器疾患を加えた5疾患を中心としており、救急センターの救急搬送受入数は都内有数の年間6000台前後にのぼる。
 平成18年からDPC対象病院となり、1日平均の入院患者数249.8人、平均在院日数は12.7日と284床の民間急性期病院として高いパフォーマンスを誇る。救急医療のほか災害医療にも力を注いでおり、平成19年に東京都災害拠点病院にも指定されている。


▲東大和病院救急センターは、年間6000台前後の救急搬送を受け入れている


平成20年から地域連携パスを稼働


 同院では地域連携クリニカルパスを導入して、地域完結型医療を推進する取り組みを進めている。
 地域連携クリニカルパスを導入した経緯について、東大和病院院長の大高弘稔氏は、次のように語る。
 「院長に就任した平成10年からチーム医療に取り組みはじめて、院内のクリニカルパスを平成11年に立ち上げました。診療科ごとに職員用、患者用のパスを作成し、現在では病院全体として232種類のパスが作成されています。パスの稼働率は全体で83%、特に脳神経外科のパス適用率は96%と非常に高いことで注目されています」。
 パスへの取り組みは早くから院外を視野に活動していた点が大きい、と大高院長は語る。
 「当院では毎年、院内でクリニカルパスの発表会を実施していましたが、平成15年頃より地域連携パスの重要性に注目が集まり始めていました。その頃、地域のなかに連携パスを広げる必要性を感じていたので、院内パスの実績も十分あり、私自身が脳外科医ということもあって、まず脳卒中の地域連携パスに取り組み、地域に呼びかけて近隣の医療機関に院内のクリニカルパスの発表会に参加してもらうことから始めました」。
 平成18年に同院が事務局となり、北多摩西部脳卒中地域連携パス協議会を発足。2年間の準備期間を経て、脳卒中の地域連携パスに診療報酬の点数がついた平成20年4月にスタートしたとのことである。当時は北多摩北部医療圏、北多摩南部医療圏の病院も参加してパスの改良や普及活動を進めていた。現在では周辺の二次医療圏にとどまらず、東京都脳卒中医療連携協議会もパスの普及に努めており、現在も東京都の脳卒中連携パスの先駆的役割を担っている。


連携は顔のみえるコミュニケーションを重視


 連携を進めるうえで重視したことは、顔がみえる関係でのコミュニケーションだという。地域の医師会との交流も大切にしており、年2回の会合を開いている。7月に行われる会合では、病院がどのような機能をもっているか、診療科ごとに現在取り組んでいることについてプレゼンテーションを行い、地域の医師たちと互いにそれぞれの病院、診療所の機能分担、役割分担の理解を深めている。
 前方連携では、救急隊との意見交換を年1回行い、いかにスムーズに救急搬送ができるか、互いの要望を伝えあい対応している。ほかにも患者を紹介してくれる特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの近隣の介護施設に声をかけ、患者の受け入れ、施設入所などについての意見交換も行っており、以前に比べ対応がスムーズになった。一般の患者に対しては、法人全体の取り組みとして参加費無料の「大和会公開医学講座」を毎月開催、専門医による医学知識の普及・啓発活動を行っているが、現在は180回を超えており好評だという。
 また、同院は「救急医療の東京ルール」の幹事病院にもなっている。
 「東京ルール」とは、救急患者が迅速に医療を受けられるよう、地域の救急医療機関が互いに協力・協働して受け入れる制度で、平成21年に導入している。都内の医療圏域ごとに地域救急医療センターを整備し、救急隊が出動して、5病院で受け入れを断られるなど20分以上搬送先が決まらない場合、地域医療センターに連絡し、調整を依頼する。北多摩西部医療圏は7病院が当番制で持ち回りとしているが、同院は調整をコーディネートする幹事病院を引き受けている。
 「当院は年間の救急搬送が6000台前後と救急に力を入れていますが、これ以上救急搬送が増えることは大きな負担となります。一方で地域の急性期医療を担っている自負もありますので、地域完結型医療を構築したいという思いから引き受けています。地域連携パスを通じて医師、看護師をはじめとする多職種のスタッフ、地域の連携先と顔のみえるコミュニケーションが図ることができていますので、地域のなかで互いに救急で助け合うことができています。もし、地域連携パスをやっていなければ、『東京ルール』にもスムーズに対応ができなかったと思います」(大高院長)。
 救急で搬送されるのは、アルコール依存症や生活保護の患者など、さまざまなケースがある。病院だけでは完結することは難しいが、「東京ルール」の会合に警察や行政の担当者にも出席してもらうことで連携の輪が広がりをみせているという。


プロジェクトチームを立ち上げて逆紹介を推進


 また、同院では救急病院として救急と外来は紹介患者を中心とし、症状の安定した患者には逆紹介を推進しているが、思うように逆紹介が伸びていない現状があったという。その理由としては、「診療所の受診を勧められることで病院とつながりがなくなり、診察してもらえなくなるのでは」というイメージを患者がもつためだという。これを解消しようと、平成23年に逆紹介プロジェクトチームを立ち上げ、取り組みを進めた。
 逆紹介の流れは、外来が混雑して時間が確保できない医師や看護師に代わり、チームの専門スタッフが逆紹介が必要な理由や趣旨説明を患者に行う。理解が得られると診療所の情報などを提供し、紹介先を探していくが、情報がなければ直接診療所に連絡して、受診時に患者が困らないように一つひとつの課題を解決することで、納得してもらえるよう対応していく。また、かかりつけ医カードを配布し、何かあれば必ず同院で診察することを伝えている。
 ほかにも、患者が地域のかかりつけ医をもてるよう、近隣5市の診療所の情報を掲載した地図を作成しており、地域の医師から高い評価を受けている。
 「私の患者は脳卒中の後遺症の方が多いのですが、逆紹介するときには、年1回は私が診ること、その時にMRIの検査をすることを約束しています。そうすると患者さんは病院とつながりがあることで安心します。役割分担ということを理解してもらうことは重要だと思います。また、連携先の医療機関には徹底して逆紹介を進めることをお伝えしましたが、私だけでも今までに900人以上の逆紹介をしています。連携をうまく進めるには口だけではなく本気で取り組み、信頼してもらうことが重要ではないでしょうか」(大高院長)。
 これらの取り組みにより、プロジェクトチームの立ち上げ前の逆紹介率は25〜29%であったが、現在では40%にあがるなど成果をみせている。
 紹介については、紹介状を持つ患者を優先させる紹介受付窓口を外来に設置し、あえて一般患者との差別化を図ることで、紹介を受けてからの来院へ誘導する取り組みも行っている。なお、現在の紹介率は43%であるが、地域医療支援病院の要件となる紹介率60%、逆紹介率30%を目標に掲げている。


▲一般患者との差別化を図るため、紹介患者を優先する紹介受付窓口を設置。かかりつけ医をもつことを誘導している

 医療連携において中心的な役割を果たす医療連携室の体制について、東大和病院・地域医療連携センター長の丸橋直樹氏は次のように語る。
 「当院の地域医療連携センターは、『地域連携室』、『連携推進室』、『医療福祉相談室』の3つの部門を統合しています。診療所からの紹介は『地域連携室』が担当し、『連携推進室』は入院業務を行う入院コーディネーターと在宅退院調整を行う退院調整看護師を配置しています。『医療福祉相談室』はMSWを配置して福祉相談のほか、病院から回復期・維持期への転院などの調整を行います。前方連携、後方連携、退院調整を含めて、統合して同じ場所で業務をすることで、各スタッフの連携が図れ、効率的になっています」。


労働環境の改善の取り組み


 新たに設置した入院コーディネーターが病棟の入院業務の一部を担うことで、病棟看護師の負担軽減を図ることができているという。
 入院コーディネーターの役割について、地域医療連携センター連携推進室長の三上由紀子氏は、「手術、入院に際して、さまざまな書類があり、とくに高齢者の方は記載方法がわからないというケースがよくあります。これまでその都度、病棟看護師が確認していましたが、入院コーディネーターが介入してクリニカルパスや書類記載についてご説明することで業務短縮を図っています。独居の方もいらっしゃいますので、薬の管理ができていない方には、ケアマネジャーや訪問看護事業所に連絡して入院の連絡調整を行います。また、当院では術前の休薬などがそれぞれの部署で異なっていたため、院内で統一された休薬期間を決めました」と語る。
 また、同院では多くのケアユニット体制がとられているが、これも病棟看護師の負担軽減につながっているという。同院のケアユニットは脳卒中の専門病棟であるSCU(脳卒中集中治療室)が12床、ICU(集中治療室)が6床、HCU(高度治療室)が14床のほか、平成24年に救急センターにECU(救急病室)を5床設置しており、全284床のうち37床でケアユニットを導入している。看護師が手薄となる夜間は、手厚い配置のケアユニットに救急入院することで、看護師の負担を軽減し、病棟看護師は本来の業務であるベッドサイドでの看護に力を注ぐことが可能となる。急性期病院の多忙な業務のため、看護師の離職率が20%近くあった時期もあったが、現在では入院コーディネーター体制やケアユニット体制が確立され、労働環境の改善につながっているという。

 

 ▲地域医療連携センターは「医療福祉相談室」、「地域連携室」、「連携推進室」を統合しており、職員間の連携も図りやすくなった  ▲入院コーディネーター室。入院に係る業務を専任のスタッフが行うことで看護師の負担軽減を図る

 「入院コーディネーターやケアユニット体制は、医療の質を高めることが目的であると同時に、医師、看護師の負担軽減の一環でもあるわけです。当院はチーム医療を推進しているなかで薬剤師の病棟配置をしていますが、最終的には地域医療連携センターに薬剤師も配置し、薬の管理もそこで完結させたいと考えています」(大高院長)。
 救急と急性期医療を中心に地域の医療機関と連携して、地域完結型医療を推進する同院の取り組みが、今後も注目される。


疾病をもって地域に退院する視点でフォロー
東大和病院 地域連携センター連携推進室 主任 佐々木 秀美 氏(退院調整看護師)

 当院の退院調整は、退院調整看護師である私とMSWの7人で行っています。MSWは主に転院や施設入所、退院調整看護師として関わるのは自宅に戻る医療ニーズのある方になります。病気が治って自宅に退院するわけではないので、疾病をもって地域に退院するという視点でフォローしています。医療依存度が高い、呼吸器をつけて自宅に戻る患者さんに対しては、経済的な課題もあるのでMSWと協働で調整しています。
 医療ニーズが高いことから、訪問看護ステーションや在宅療養支援診療所との連携が大切になります。東大和市の訪問看護ステーションは、当法人の施設を含め、3カ所と少なく、確保することが一番大変ですが、近隣の市と顔がみえる関係で連携をとっているので、依頼すると受けていただける体制がとれています。
 また、当院は退院調整のリンクナースを各病棟に配置し、退院調整看護師と同様の業務を病棟で行っています。リンクナースは看護部長や教育担当の看護師長の研修を受け、院内独自の基準を満たした者で、在宅につながる患者さんの早期の発見のほか、比較的軽度の患者さんへの退院調整を病棟主導で効率的に行っています。

急性期の中核病院として地域のニーズに応える
社会医療法人財団 大和会 東大和病院 院長 大高 弘稔氏

 臨床指標を考慮した目標管理を行うため、平成17年からバランスト・スコアカード(BSC)を医局を始めとして全職種に導入していますが、全職種が目標を設定しBSCを作成するのは当院の特徴だと思います。毎年1 月の賀詞交歓会の場で前年度目標達成度の検証と新年度の目標を公表し、病院全体のBSC を提示しますが、これをもとに全職種がBSC 作成に取り組んでいます。
 また、病院が手狭でありハード部分の改善は以前から課題としてありましたが、当院の向かいにある法人本部の跡地に(仮称)東大和病院クリニカル・センターを新設し、外来の一部移設や健診センターの拡大を行います。それに伴い当院にできた空きスペースで手術室の増設、内視鏡センターなどの拡大、最新医療機器を導入し、病院機能をより向上させる予定です。
 今後の超高齢化社会になっていくなかで、合併症を抱えた患者が増えていくので、1 人の患者にたくさんの医療スタッフが関わっていく必要があります。医療スタッフの一人ひとりがスキルを磨きながら、よりチーム医療の推進に取り組むことが重要と考えています。
 今後も救急を中心にした高度な医療を提供し、地域連携の核となり、急性期中核病院として地域のニーズに応えていきたいと考えています。


<< 法人概要 >>
法人名 社会医療法人財団 大和会 設立時期 昭和26年
法人施設 武蔵村山病院(300 床)/介護老人保健施設東大和ケアセンター/村山大和診療所(在宅療養支援診療所)/東大和訪問看護ステーション/えのき訪問看護ステーション/訪問介護事業所「東大和ヘルパーステーション」/指定居宅介護支援事業所「東大和病院ケアサポート」/指定居宅介護支援事業所「武蔵村山病院ケアサポート」/東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい(東大和市委託事業)/武蔵村山市北部地域包括支援センター(武蔵村山市委託事業)
理事長 佐藤 光史 氏 院長 大高 弘稔 氏
職員数 764 人(平成25 年3月末現在) 病床数 284床
電話 042-562-1411 FAX 042-562-1399
URL http://www.yamatokai.or.jp/higasiyamato/


※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年10月号に掲載されたものです。
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