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東京都 社会福祉法人 東京都知的障害者育成会

就労の意欲の向上で高い就職率を実現するすきっぷ

一般就労の実績が著しい事業者、企業内での実習の取り組みなど、一般就労へ向けた取り組みとして優秀な事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)





一般企業への就労率93%


クリーニング班で働く女性 世田谷区立知的障害者就労支援センター「すきっぷ」は、世田谷区から社会福祉法人東京都知的障害者育成会が運営を委託されている知的障害者のための通所授産施設です。
 「すきっぷ」の特長は、通所期間を2年間と設定し、就労を視野に入れた作業訓練および社会生活技能訓練に特化している点にあります。
 一般企業への就労を希望する意識の高い障害者が集まるという側面や都内の大手企業が障害者雇用を推進しているという側面も手伝って、入所した全利用者のうち93%が、事務職や清掃業、店舗・バックヤードでの仕事、食品・厨房内作業等、大手企業への就労に成功しています。
 「すきっぷ」に入所すると、水曜日は、会社でのマナーや訪問・面接のマナー、コミュニケーション等について学ぶ生活活動やボールゲーム等を行う運動プログラム、(水曜日を除く)月曜日〜金曜日はクリーニング班と印刷班に分かれて作業を行います。いずれの作業班においても、個別目標・支援プログラムがしっかり立てられ、「時間を守る」「報・連・相(ホウレンソウ)が行える」「作業指示を正確に守る」などといった、どんな仕事に就いても求められる基本的な能力を中心に訓練していきます。


就労意欲を高める!


すきっぷOBの写真 「すきっぷ」には利用者たちの就労に対する意欲や訓練に臨む意欲を高める仕組みやサポート体制が整っています。
 センター内の壁には「すきっぷ」のOB達が就労先で働く姿を撮影した写真が飾られています。また、利用者(障害者)を連れて就労先で働くOBを訪問するプログラムも設定しています。OB達がいきいきと働く姿を見ることで、利用者たちは自分が将来働く姿を具体的にイメージすることができるのです。
 通所している利用者全員が就労を目指している点も、利用者同志がやる気を高め合い、互いの励まし合いにつながっています。また、「すきっぷ」では永年勤続表彰式を毎年開いています。働き続けている利用終了者に表彰状が渡され、皆でその頑張りを讃えます。表彰状をもらう経験の少ない彼らにとって先輩たちが表彰状をもらい、晴れがましい姿を見るのは大きな刺激になり、「次は自分が」というモチベーションにつながっています。
 クリーニング班、印刷班それぞれに5人の職員が配置されており、作業指導から実習指導、アフターケア、職域開拓に至るまで、利用者の特性を把握している担当職員が支援にあたります。指導方針として利用者に自信をつけてもらうことに重きをおいており、できるまで同じことを繰り返したり、4ヶ月に1度、面接を行い個別目標・支援プログラムに記載された評価結果をフィードバックし、伸びている項目を具体的に示し、その頑張りを評価します。
 また、「すきっぷ」は就労支援に特化していますが、作業訓練で得られた収益は、工賃として利用者に還元しています。工賃は能力給を導入しており、4ヶ月に1度、作業能力と作業態度と目標への努力という3つの視点で1時間あたりの時給が計算され、最低1時間あたり120円〜最高一時間あたり300円の差がつくようになっています。そして、支給する前には、どうしてこのような時給計算になったのか、利用者にお金と労働の関係性を理解させるために必ず工賃説明が行われます。
 すきっぷでは見学者への作業説明を利用者が一部行います。これは自己啓発を図り、またお客様への対応について学ぶ、という目的に依るものです。「作業説明を上手に行う」という目標を立てて、回を追うごとに上達する利用者もいます。なお、見学の方からは資料代として500円を頂いていますが、その半分を利用者に工賃として還元しています。


ネットワークで就労を支える


印刷班で働く男性 せっかく一般企業に就労が決まっても、継続しないケースも少なくありません。また、様々な支援機関が連携していればより効果的な支援が行えるのに、そうなっていない地域が多いのが現状です。
 予算を大きく取り、他の行政に先駆けて、障害者就労の問題に取り組んできた世田谷区は、各施設が機能を専門特化させると共に、それらが連携を図ることで、障害者に対してより質の高い支援を行うことができる「世田谷区就労支援ネットワーク」を形成してきました。
 例えば、「すきっぷ」は知的障害者を中心に就労移行支援をおこなっていますが、同区内には精神障害者を中心に就労支援を行う「しごとねっと」が存在します。両者はお互いに就労情報をとりまとめ、職員同士の情報交換をおこなっています。また、安定した職業生活を営むには「就労」と「生活」双方の支援が欠かせません。このことから卒業した利用者に安定した就労生活を支援する就労障害者生活支援センター「クローバー」を紹介し、就労後に生じる様々なトラブルの相談窓口を用意して利用者たちの就労継続を支援しています。
 このように点と点がつながって線となることで、センターの卒業生が就労先に定着できるように地域ぐるみで支援できる体制を整えているのです。


夢を叶える合理的なシステム


 夢を実現するためには、「夢を具体的にイメージし、達成期限を決めることだ」と言われます。「すきっぷ」の就労支援システムも全く同様で、2年以内に就労するという明確な期限があり、OBを訪問する等、夢を具体的にイメージするためのプログラムがあり、同じ夢に向かう仲間や夢の実現を支援する職員の存在があります。「一般企業に就労したい」という利用者の夢を叶える上で、大変合理的なシステムであると感じました。
 他の専門機関と連携を図る世田谷区就労支援ネットワークを含め、他の市区町村がこの世田谷区のモデルを真似て、水平展開されていくことが期待されます。


取材日 : 平成20年2月


今回のポイント


@ 通所期間を2年間に設定し、就労移行支援に特化したことで、利用者と職員が共通の目標を目指して訓練に臨めるため、高い効果が期待できる。
A 就労に対する意欲、訓練に臨む意欲を高める仕組みがある。
B 地域の機能特化した専門機関をネットワーク化することで、高いレベルで障害者の就労を支えることができる。


経営コンサルタント 石田 和之


施設概要


施設名 世田谷区立障害者就労支援センター
すきっぷ
(旧 世田谷区立知的障害者就労支援センター
すきっぷ)
設置者名 社会福祉法人
東京都知的障害者育成会
所在地 世田谷区船橋5-33-1
電話番号 03-3302-7911
代表者 上滝 彦三郎 施設長
施設種類 障害福祉サービス事業(就労移行支援)
障害種別 主に知的障害者
開所時期 平成10年4月(平成20年4月新体系移行)
利用者数 定員40名現員45名
職員数 常勤18名常勤以外5名
FAX 03-3302-7925
連絡担当者 福田 公人 副施設長
事業内容 クリーニング・封筒印刷や名刺作成など
平均工賃 33,319円(平成20年度)
URL http://www.ikuseikai-tky.or.jp/~iku-skip/

平成21年7月現在


事業所コメント


一人でも多くの「働きたい!の実現」に加えて、今後はアフターケアの一層の強化を図っていきます。
(併設事業である)就労相談室が、区内移行施設の就労促進のお手伝いを積極的にさせていただきます。