サービス取組み事例紹介
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大阪府 社会福祉法人 ひびき福祉会

“質の高い労働”“自主製品で高い工賃”を目指す ハイワークひびき

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




下請けから抜け出す!


クッキーの焼き上がり

 町工場が集積する東大阪市高井田中に、勝井鋼業株式会社の5階建ての社屋があります。
 「ハイワークひびき」は、1997年12月、勝井鋼業の勝井社長によって無償提供されたビルの4階に、社会福祉法人 ひびき福祉会が開設した知的障害者授産施設です。
 「ハイワーク」という名は「ハイ・クオリティ・ワーキング」から由来するもので、“障害があっても質の高い労働” “自主製品を作ることにより高い工賃” を目指しています。
 社会福祉法人 ひびき福祉会では、1984年に開設した授産施設「ひびき」をはじめ、1992年に開設した「第三ひびき」に至るまで、企業からの下請け業務を授産していましたが、下請けを続ける限り、安い工賃から脱却できません。なんとかもっと高い工賃が得られる仕事はないものかと模索して、行きついたのが焼き菓子の自主生産でした。開設当初こそ、他の洋菓子の店から仕事を請けることもあったそうですが、現在は、マドレーヌ、ブラウニー、フィナンシェ、クッキーなどの洋菓子全般を自主生産し、2002年11月には「ハイワークひびき」の直営店「洋菓子のBliss」を開設して生ケーキの販売もしています。


日本一のマドレーヌをつくる


マドレーヌを包装する様子

 「ハイワークひびき」で製造される洋菓子は「Bliss(ブリス)」の名前で親しまれ、2007年度の年商は3500万円に達しています。
 「“美味しいケーキを食べたい”という人は沢山いるけれど、“安いケーキを食べたい”という人はいない」
 と語る亀井勝氏(社会福祉法人 ひびき会理事長)は、高い工賃を支払うためには価格競争に巻き込まれずに高付加価値・高品質の商品を提供することが必要だと考えました。授産施設の洋菓子と言えば、すぐにクッキーが連想されますが、最初に「ハイワークひびき」が取り組んだのは「マドレーヌ」でした。当時、「ハイワークひびき」の施設長だった亀井勝氏は「日本一のマドレーヌをつくる」という高い目標を掲げ、大阪で有名な調理学校の教員という経歴を持った人を、指導員として招き入れて、商品化させました。そして、マドレーヌと同様に、妥協を許すことなく素材を厳選しブラウニー、フィナンシェといった定番商品を加えていきます。
 製品はブランド名「Bliss(ブリス:「無上の幸せ」という意味)」で統一し、ロゴやデザイン、包装にもこだわりました。地域で繁盛する洋菓子の店には、「(シュークリームやプリンなど)最下限価格帯の商品のクオリティが高い」という共通ルールがありますが、「Bliss(ブリス)」のマドレーヌ(100円)にも同様のことが言えます。「施設だから」という甘えを排除し、最下限価格帯の商品にも妥協せず、最初から街の洋菓子 店に負けない競争力のある商品づくりを目指して顧客の信頼を積み重ねていったことが「Bliss(ブリス)」のブランド力を高めていったと思われます。


頼まれた注文は断らない


「洋菓子のBliss」の生ケーキ

 とはいえ、良い商品さえをつくれば自然と売れていくものではありませんし、バザーで販売するだけでは、障害者に工賃を支払うどころか、十分な仕事を確保することさえできません。
 そこで、「ハイワークひびき」では、保育所や他の福祉施設など卸販売ルートを開拓したり、ヤマト運輸グループのヤマトホームコンビニエンスという通販カタログに掲載したり、一般企業や組織団体がイベントで配布する粗品や贈答用の菓子を受注するなど積極的な販路開拓を行いました。小回りが利く強みを活かし、包装やラッピングで工夫を凝らしたオーダーメイドのギフト商品や「頼まれた注文は断らない」という姿勢が顧客の信頼につながり、毎月、定期的に注文をくれる事業者も少なくありません。
 また、より安定した売上を確保するために、月々2,600円で季節感を取り入れたお菓子の詰め合わせを家庭にお届けする頒布会を実施し、約200名の会員顧客の獲得、年間約500万円の売上確保に成功しました。
 さらに、2002年11月、「ハイワークひびき」を大きく飛躍させるきっかけをつくったのが、直営店「洋菓子のBliss」(八戸ノ里店)の 出店 です。「洋菓子のBliss」では、プロのパティシエを招聘し、生ケーキの製造・販売を行うとともに、生ケーキを集客商品として、「ハイワークひびき」で製造する焼き菓子の販売につなげています。2004年2月には、喫茶コーナーを併設する「洋菓子のBliss」(俊徳道店)もオープンさせました。
 このように、頒布会の会員や毎月定期的に発注をくれる事業者など固定ファンをコツコツつくってきたことに加え、贈答用の菓子や生ケーキなど洋菓子の中でも市場が大きく高単価が期待できる分野に参入している点が高い業績につながっているのです。


機械化は障害者の仕事を奪わない


オープンに入れられるクッキー

 「ハイワークひびき」では、販路開拓を進める一方で、増えていく販売量に対応するために、積極的に機械を導入し、生産体制を強化してきました。機械化によって障害者の仕事が奪われるものではなく、機械を導入することで、作業が簡易化、分業化され、逆に障害の重い利用者が活躍できる仕事も増えていきました。
 現在、 「ハイワークひびき」では、洋菓子職人を含めた職員6名、利用者23名(重度8名、中度8名、軽度7名)が働いており、勤務時間も9時から17時までと一般企業並みの勤務体制が敷かれています。
 たとえ障害者がやれる仕事の範囲が狭かったとしても、“一つの仕事を正確に完全にやりきることが一番尊い”という指導方針のもと、原材料を機械で攪拌するスタッフ、クッキーの型抜きをするスタッフ、焼き上がったクッキーを袋詰めするスタッフなど、熟練レベルによって適材適所に人員配置がなされています。
 開設当時、月額平均14,000円だった工賃も、売上増と能力向上に伴って、現在、月額平均35,000円まで引き上げられ、中には月額50,000円の収入を得ている利用者もいます。


強いリーダーシップが不可欠


「洋菓子のBliss」のスタッフの皆さん

 亀井勝氏が社会福祉法人 ひびき福祉会の成り立ちや障害者雇用への思いを綴った著書「逃げたらアカン」の中に、次のようなエピソードが紹介されています。
 頒布会を発展させようと会員向けのアンケートを実施した際、「夏場はクッキーが食べづらい」というお客様の声があり、この意見を受けて、職員の皆さんから「7月と8月の頒布会を統合して年12ヶ月毎月実施していた頒布会を11ヶ月にしよう」という提案が挙げられました。これを聴いた亀井氏は「1ヶ月分の売上が完全に失われるわけで、企業であればそんな発想はしない。福祉施設の発想である。1ヶ月分の減収をどこでリカバリーするのか具体的な提案がなければこの意見は認められない」と猛反対しました。その結果、夏場の商品構成を見直して、年12ヶ月で頒布会を継続することになりました。
 どんな組織にも共通することですが、卓越した成果を挙げるためには、強いリーダーシップと、リーダーが掲げたビジョンの実現に向け事業を推進する人たちの存在が不可欠です。
 前述の通り、「ハイワークひびき」にも、高い目標を掲げ安易な妥協を許さない亀井勝氏の強いリーダーシップと、現・施設長の山田紀子氏をはじめ、菓子職人など推進役の存在がありました。
 特に、亀井氏が「日本一のマドレーヌをつくろう」という高い志を立てなければ、プロの菓子職人が「ハイワークひびき」に集うことはありえなかったわけで、強力なリーダーシップの必要性を強く感じさせられた事例でした。


取材日 : 平成20年1月

今回のポイント


@ プロのパティシエが創作する本格的な洋菓子を製造するとともに、ロゴ・デザインやパッケージにもこだわり自社製作品のブランド化に取り組むことで街の洋菓子店に負けない競争力をもつ。
A 頒布会の実施や直営店「Bliss(ブリス)」のオープン等、安定した販路を確保する他、小回りが利く強みを活かし、包装やラッピングを工夫して企業がイベントで配布する粗品や贈答用の菓子をオーダーメイドで受注するなど積極的な販路開拓を行っている。
B 攪拌や包装など機械化できる作業は機械化を進め、機械化に伴って生じる簡易作業について障害者の力を借りることで大量生産を可能にしている。


中小企業診断士 稲山 由美子

施設概要


施設名 ハイワークひびき
設置者名 社会福祉法人 ひびき福祉会
所在地 東大阪市高井田中1-8-14
(河内永和駅)
電話番号 06-6618-1147
代表者 亀井 勝 理事長
施設種類 就労移行・生活介護
障害種別 知的・精神・身体
開所時期 1997年12月
利用者数 22名
職員数 常勤7名
非常勤1名
FAX 06-6618-1148
連絡担当者 山田 紀子 施設長
事業内容 菓子製造・販売
平均工賃 28,000円〜49,000円

平成21年8月現在

事業所コメント


今年3月移行後、喫茶でも利用者が働いています。おいしいケーキと飲み物を提供しています。