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愛知県 社会福祉法人 AJU自立の家

平均工賃10万円の維持に向けて わだちコンピュータハウス

事業を活性化し、工賃を伸ばしている事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




「働く場」としての共通認識


職場の風景

 わだちコンピュータハウスは、名古屋市昭和区にあります。四肢まひを中心とした重度の障害者が働く場所として、1984年10月に無認可作業所「わだち作業所」はスタートしました。その後、1990年度には身体障害者通所施設「わだちコンピュータハウス」となり、2007年度に他の作業所に先駆け、就労移行支援、就労継続支援A・B型、生活介護の多機能型事業所へ移行しました。

 創業当時の仕事内容は、手作業による反復作業が中心で、平均工賃は数千〜1万円という状況でした。しかし、「1日働いても数百円では働き甲斐がない」「経済的に自立した生活を送りたい!」という利用者(作業所を利用している障害者)の強い思いがあり、職員と利用者が一体となって工賃アップに取り組むことになりました。
 各々の身体機能を生かして、なにかもっと価値の高い仕事ができないか、そう考えたときに思い当ったのがコンピュータの仕事でした。コンピュータは、障害の程度が比較的重度でもキーボードを打つことができれば仕事ができます。利用者にとっては正にぴったりな仕事でした。この仕事をするにあたり、技術を習得するためのコンピュータ講座や、業務知識を習得するための簿記講座を受講するなどを経て、全員でスキルアップを図りました。このような取り組みの中で、施設は日中の「居場所」ではなく「働く場」である、という職員と利用者の共通認識も育まれていきました。
 その後、ITに対する社会的ニーズの高まりを背景として、わだちコンピュータハウスは順調に業績を伸ばし、平成8年度には遂に工賃10万円を達成しました。
 それでは、わだちコンピュータハウスが工賃10万円を達成できている秘訣を探ってみましょう。


利用者が主体的に仕事を推進!


ホームページ作成の様子

 現在のわだちコンピュータハウスの業務内容は、行政や一般企業からの受託によるデータ入力・加工、ホームページ制作、事務処理系システムの開発、アンケートの企画・集計・分析、行政計画のコンサルティング、テープ起こし、DM代行発送、障害者向けITサポートなど、コンピュータ関連の業務を中心に多岐にわたっています。
 これらの業務を利用者自身が主体的に推進するのがわだちの特徴です。コンピュータの仕事はモニターに向かってばかりというイメージがあるかもしれませんが、そうではなく、顧客との打ち合わせが重要です。このような顧客との調整を、利用者が行っている場合がほとんどです。中には速さや正確さを要求される仕事もありますが、そのような場合には障害のないアルバイトやパートを活用しています。顧客との調整や仕事の分担を職員が行っていたのでは、職員の人数に限りがあるため仕事の量も自ずと制限されますが、利用者自身が調整することで効率があがり、スムーズに業務を遂行することができます。
 また、仕事面だけでなく、施設の運営も利用者の中から選ばれた運営委員が中心になって行っています。運営委員とは施設運営上のリーダーで、事業計画や予算作成、会計事務や給与査定、新しい利用者の入所判定などを行います。

 利用者の給与は、年1回運営委員が利用者と面談して査定します。当然多少、意見の食い違いが発生するケースもあります。しかし、このような問題を職場で話し合い、問題解決をしていく経験は、顧客との仕事の現場に生かされています。このように、わだちコンピュータハウスには、利用者が主体的に仕事を進めていくという文化が根付いているのです。


中部国際空港(セントレア)に、わだちの知恵あり!


中部国際空港セントレアのコンサルティングを担当した湯浅さん

 現在、わだちコンピュータハウスの中でも大きなウェイトを占めるようになってきた仕事が、行政計画のコンサルティング事業です。障害者の立場から、行政に対して、バリアフリーなまちづくりの提案などを行う仕事です。実際に、中部国際空港(セントレア)のコンサルティング事業を請け負いました。肢体不自由だけでなく、聴覚障害、視覚障害、知的障害など様々な人の意見をわだちコンピュータハウスが主体となって取りまとめ、障害者が利用しやすい空港にするための提案を空港会社に対して行いました。
 それまでの行政計画のコンサルティングでは、完成間近になってから相談に来ることが多くありました。完成間近では、設備面など既に修正がきかないことが多く、実際には形だけの提案に終わってしまうケースがほとんどでした。しかし、中部国際空港(セントレア)の場合には、空港の建設が開始される前の早い段階から打ち合わせを開始し、5年間で延べ1,500回もの打合せを行いました。そのため、多くの提案を実際に採用してもらうことが出来ています。愛・地球博でもコンサルティングを担いました。

 このように、障害者という立場を生かした、やりがいのある仕事を提供できていることも、利用者が一生懸命働く原動力になっています。「とてもやりがいのある仕事を提供できているのではないか」、と施設長の水谷所長は自信を持って話してくれました。


仕事の特性や利用者の状況に応じた多様な働き方


打ち合わせの様子

 コンピュータやコンサルティングの仕事は、忙しいときと暇なときで波があります。納品前や客先での打ち合わせ、現地調査などが立て込んでくると、仕事は深夜や休日に及ぶこともあります。そのような仕事の特性を踏まえて、勤務時間はフレックスタイム制になっています。
 また、障害の程度によって、在宅勤務をしている利用者も2名います。在宅勤務の利用者には、自宅からIT回線を通して、ホームページ更新の仕事をしてもらっています。このように、仕事の特性や利用者の状況に応じて、多様な働き方を提供し、活躍できる環境を整えています。


工賃向上を続けるために


所長の水谷さん

 順調に成長し平均工賃月額10万円を達成してきたわだちコンピューターハウスですが、今、ひとつの課題に直面しています。それは、利用者技術レベルの安定です。わだちコンピューターハウスではめでたいことに、この2年間で5名の利用者が一般就労しました。コンピューターの仕事は専門性が高い分野も多く、就労する際にも役立っています。しかし、同時に技術を学んだ利用者が抜けるため、一時的に生産性が下がります。平均工賃10万円を今後も維持していくためには、全員が効率的にスキルアップしていくことが重要です。そのために、組織全体で教育体制や仕事の協力体制の構築に取り組んでいます。
 更に、工賃向上を目指し、新規事業にも積極的に取り組んでいます。現在力を入れて取り組んでいるのは、東海豪雨災害での被災経験をきっかけに考えた防災企画商品の販売です。新規事業がすぐに軌道に乗ることは難しいことですが、長いスパンで軌道に乗せていこうと計画を立てています。
 「経済的に自立した生活を送りたい」という利用者の思いを実現しよう、これがわだちコンピューターハウスの原点です。そのために、スキルアップと新規事業の立ち上げを繰り返し、今日も工賃向上チャレンジしています。


取材日 : 平成20年9月

今回のポイント


@ 仕事の推進や施設の運営を利用者自身が主体的に行っている
A 他には無い、やりがいのある仕事を提供している
B 仕事の特性や利用者の状況に応じた多様な働き方を提供している
C 新規事業にも積極的にチャレンジしている


中小企業診断士 早坂 健治

施設概要


施設名 わだちコンピュータハウス
設置者名 社会福祉法人 AJU自立の家
所在地 愛知県名古屋市昭和区下構町1-3-3
電話番号 052-841-9888
代表者 所長 水谷 真 氏
施設種類 就労移行支援、就労継続支援A型、B型、生活介護
障害種別 身体障害、精神障害
開所時期 30956
利用者数 37名 (身体35名、精神2名)
職員数 常勤8名 非常勤5名 計13名
FAX 052-841-3788
連絡担当者 所長 水谷 真 氏
事業内容 データ入力・加工、ホームページ制作、事務系システム開発、アンケートの集計・分析、
行政計画のコンサルタント、テープ起こし、DM発送代行、障害者向けITサポートなど
平均工賃 96,838円(平成19年度)
URL http://www.aju-cil.com/wadachi/wadachitop.php


平成22年1月現在