サービス取組み事例紹介
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愛知県 社会福祉法人 むそう

当事者が主役、高いクオリティーを実現する 「中華茶房うんぷう」

当機構の「長寿・子育て・障害者基金」助成事業で、障害者の就労支援に積極的に取り組んでいる事例を紹介します。

インタビュー風景(動画)




やりたいことをアナウンスし続ける


理事長の戸枝さん
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 「ラーメン店を開きたい」。
 社会福祉法人むそうの理事長である戸枝陽基さんは、就労の場としてラーメン店を開こうと考えました。本来ラーメン店は競合が多く、就労の場として行うにはリスクが高いとのことですが、収益率が高く成功すると工賃アップに繋がるため、あえてリスクの高いラーメン店に挑戦されたそうです。
 戸枝さんは成功するためには専門家の力が必要であると考えたのですが、ラーメン業界へのコネクションなどはありませんでした。
 そこで戸枝さんは誰かに会うと「ラーメン店を開きたい」という自分の想いをアナウンスし続けたのです。そうした結果、プロの料理人や中華料理店を経営しているかたと知り合うことができて協力して貰えたそうです。
 さらにそのプロの料理人のかたが縁でエバラ食品さんとのパイプができ、1食ごとの保存用パックを活用したほうが良いなどのアドバイスをいただき、味にこだわりのあるラーメン店を開くことが出来たそうです。
 その甲斐あって、今では開設したラーメン店「中華茶房うんぷう」は障害者の就労の場としてではなく、「おいしいラーメン店」として地元の雑誌やインターネットなどに取り上げられるほどの人気店となりました。
 「自分で出来ないことは出来ないと居直って、出来る人に助けて貰うことも大事」だと戸枝さんは言います。



食材へのこだわりと就労の場のコラボレーション


しょうゆラーメン
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しおラーメン
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 ラーメンの具材には、同法人で行っている自然養鶏の卵(なちゅらん)と鹿児島県から仕入れた黒豚をチャーシューとして使用しています。
 「なちゅらん」とは「安全な飼料しか与えない」「抗生物質などは与えない」「たっぷりの緑餌を与える」というこだわりがある養鶏卵です。
 また、チャーシューは鹿児島県から黒豚を仕入れるというこだわりがありますが、こちらは「社会福祉法人ゆうかり」が就労の場として畜産している黒豚ということもあって、就労の場同士のコラボレーションも図られています。
 このような、就労の場同士の連携が広がれば、工賃アップや障害者雇用が新たに生み出されるといった相乗的な効果も期待できるのではないでしょうか。


生活介護事業所としての「中華茶房うんぷう」


 「中華茶房うんぷう」では障害程度区分1,2のかたはいません。利用者のかたは障害程度区分3から6のかたで構成され、生活介護サービスの中で働かれています。
 「ラーメン店での仕事は『生きがいづくり』としての活動」とのことです。それでも工賃は多いかたで3万円程度、少ないかたでも1万円弱とのことです。

ラーメンのプレート
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 障害程度区分が重く、言葉を話せないかたが多いということもあり、ラーメンを注文する際は予め色分けされたラーメンのプレートを利用者のかたに渡す、といった注文方法が取られています。



サラダバー
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 ラーメンにセットでサラダバーとドリンクバーを付けることができますが、これは「中華茶房うんぷう」の開設当初、お客様をかなり待たせてしまったこともあり、それを補うため、最初にサラダを召し上がっていただこう、と考えられたものです。




本物の環境で仕事をする


中華茶房うんぷうの店内
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 調理では、麺が茹であがるとトースターのように自動的にあがってくるようになっています。そこからは、茹で上がった麺を振る、スープを入れる、返しを入れる、トッピングを入れる、運ぶの5工程に仕事が振り分けられています。
 ところがある時、麺を振り始めてふと隣をみたら、次の工程の2人が揃っていなかったということがあったそうです。



中華茶房うんぷうの店内
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 戸枝さんがその様子を見ていたところ、麺を振っていた利用者が自発的に次の工程を行ったそうです。最近では一人で他の工程も担当されているとのことでした。
 本物の環境で働くことが仕事の幅を広げているのだと思われます。




「中華茶房うんぷう」のあるアートスクウェア


アートスクウェア外観
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 今回紹介した「中華茶房うんぷう」は愛知県半田市で就労移行支援、生活介護事業所の飲食店として社会福祉法人むそうが運営するアートスクウェア内にあります。
 最寄り駅は名古屋鉄道河和線の阿久比駅または植大駅。
 取材当日は特急が止まる阿久比駅で降りましたが、辺り一面に広がる田畑、少し遠くの小山が紅葉し始めた、のどかな景色が駅のホームから目に入りました。
 そこから車で川沿いを通って、山の方へ上ること10分程度。県営団地や病院に囲まれた、道から少し小高い場所にアートスクウェアはあります。
 アートスクウェアには「中華茶房うんぷう」のほかにバリ・インドネシア・ベトナムなどの手作りアクセサリーや小物、アジアン家具も販売する「アジアン雑貨」、陶芸や絵画等を作品展示する「アートスペースむく」があります。中国をイメージした「中華茶房うんぷう」、アジアをイメージする「アジアン雑貨」、絵画の等の作品展示でヨーロッパがイメージでき、アートスクウェアはシルクロードを表現しています。



身体が動かなくても仕事がしたい


アジアン雑貨店内
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 アートスクウェアの中に入って右手が「中華茶房うんぷう」、左手が「アジアン雑貨」です。アジアン雑貨では重症心身障害のかたが働かれています。
 「身体が動かなくても仕事はしたいのではないか。」という考えから重心のかたでも働けるようにと、利用者の勤務時間は各自の状況により設定されており、短い場合でも30分程度は働かれているとのことです。


アジアン雑貨で販売する商品
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 「アジアン雑貨」で販売する製品にはバーコードが付けられており、利用者はレジでバーコードの読み取り機を持って、車いすに寝たままお客様を待ちます。
 発注する商品は最終的には職員がバランスを調整しますが、利用者がカタログから仕入れを決めているとのことで、自分が仕入れた商品が売れるととてもうれしそうな顔をするそうです。




2つの階段と10個の支援


 むそうは、アートスクウェア以外にも喫茶店、シイタケの栽培、ホームヘルプサービス、自然養鶏など多岐に渡る事業を展開し、愛知県半田市の知多地域において他のNPO法人や社会福祉法人、医療機関等と密接な連携を図っていますが、そこには、当事者を取り巻くサービスには2つの階段があり、10個の支援が必要という考えかたが基になっています。
 2つの階段とは「地域で暮らす」階段と「親亡き後、地域でずっと暮らしていく」階段であり、10個の支援とは、「地域で暮らす」階段にある、「働く場所」、「住む場所」、「余暇・社会参加支援」の3つと「親亡き後、地域でずっと暮らしていく」階段にある「所得保障」、「権利保障」、「医療保障」、「家族援助」、「相談支援」、「地域の意識変革」、「人材育成」の7つです。
 親亡き後、終末期を含めて安定的に地域で暮らしていくためには、所得の保障は当然に必要で、財産の管理や別のサービスを受けるにも後見人、権利擁護が必要となります。他にも医療との連携が必要であり、当事者の暮らしぶりが安定していくためには家族が安定している必要があり、家族への支援も必要になります。相談支援はそれら全体をマネジメントします。
 親亡き後でも当事者が地域でずっと暮らしていけるように、という7つの支援には「むそうのサービスではなくても、当事者のかたがずっと地域で幸せに暮らしてほしい」という戸枝さんの願いが込められています。



地域交流、餅つき大会


もちつき大会チラシ
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 むそうでは「地域の意識改革」の一つとしてお花見やお祭りなど市民との日常的な触れ合いを大切にしていますが、取材当日のこの日はアートスクウェアで餅つき大会が開催されていました。
 近隣のかたが臼(うす)を用意してくださり、初めて餅つき大会を実施することになったとのことです。



つきたての餅
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 杵(きね)を支えてもらいながら「ヨイショッ」の掛け声とともに振り下ろす利用者の姿が愉しげでした。
 「昔は近所の人が集まって、よく餅つきをしていたなぁ」と戸枝さん。
 どの地域でも昔と比べると住民のつながりが希薄となっている中、アートスクウェアには地域の集いの場としての役割も果たしているように感じました。



むそうのビジネスモデルをアジアのスタンダードに


 最後に、今アナウンスしたいことを戸枝さんにお聞きしたところ、「この愛知県半田市では障害者が生涯地域で暮らしていける方法論、仕組みはある程度できた。そのビジネスモデルを実践する仲間を全国各地で増やしていきたい、それが次のステップです。」と言われました。
 むそうのビジネスモデルを実践するうえで重要なことは、むそうの支店をつくるイメージではなく、地域の文化や特性を活かして、地域独自、法人独自の支援を組み立てることにあります。
 さらに「むそうのビジネスモデルを日本からアジアのスタンダードにしたい」という戸枝さん、これからもその想いをアナウンスし続けていくことでしょう。

 ※ 機構の広報誌「月刊誌WAM」の“勘どころ経営講座”において平成21年10月号から6か月間連載で、戸枝さんにご執筆いただいています。ご興味ご関心のあるかたは総務部総務課までお問い合わせください。




取材日 : 平成21年12月

機構の助成事業について


 今回取材した社会福祉法人むそうは平成21年度「長寿・子育て・障害者基金」助成事業において、「自立支援法における新体系移行推進事業」として、平成23年度までに新体系サービスへ移行が求められる中、新体系への移行がスムーズに実施できることを目的に、研修会を全国数か所で実施しています。
 自立支援法については廃止の方向性も示されているところであり、研修会の打ち出しかたをどうするか悩まれたそうですが、多くの参加希望があり、盛況とのことでした。

 平成22年度からの助成事業については機構ホームページでご案内しています。ご興味ご関心のあるかたはそちらをご覧ください。


施設概要


施設名 アートスクウェア(中華茶房うんぷう、アジアン雑貨)
開所時期 平成16年
運営者名 社会福祉法人 むそう
利用者数 (中華茶房うんぷう) 6名
(アジアン雑貨) 4名
所在地 (法人本部)
愛知県半田市天王町一丁目40番地5
(アートスクウェア)
愛知県半田市長根町3-1-11
職員数 (中華茶房うんぷう) 3名
(アジアン雑貨) 4名
電話番号 (法人本部)0569-22-4072
(アートスクウェア)0569-20-2577
FAX (法人本部)0569-22-4073
(アートスクウェア)0569-20-2588
代表者 理事長 戸枝 陽基 氏
連絡担当者 瀬 佳奈子 氏
施設種別 就労移行支援、生活介護
事業内容 飲食店運営、雑貨店運営、陶芸、絵画など
障害種別 知的、身体、精神
平均工賃 平均約20,000円
URL http://www.musou03.org/