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【宮城県】

<週刊せんだい>福祉現場 真冬に訪ねて(1)ある夜の訪問介護

河北新報 2018年2月2日(金)

「痛くはないですか」。声掛けしながら歯ブラシを動かす小松さん。歯磨き後は口の周りにリップクリームを塗って保湿を欠かさない=1月17日午後8時半ごろ

<就寝の準備手助け>
  日中から冷たい雨が降り続いていた1月中旬の午後8時少し前、仙台市太白区内の民家を訪れた訪問介護員の小松リリアナさん(44)は、真っ先に洗面台へ向かった。インフルエンザなど感染症を最も警戒し、手洗いとうがいを徹底する。
 小松さんは福祉事業を展開する泉区のNPO法人「あいの実」に7年前から勤務している。この日は、神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)で闘病中の46歳の女性宅へ、2時間のサービスに入った。
 2015年に発病した女性は、人工呼吸器を装着して寝たきりの生活を送る。会社員の夫(45)と中学2年の長女(14)と共に暮らしながら、土日祝日を含めた毎日午前6時から午後10時まで、あいの実など市内約10事業者の訪問介護を利用する。
 就寝前の時間帯は、歯磨きなどの口腔(こうくう)ケアや洗顔がサービスの中心になる。「口の中、失礼しますね」。小松さんは手袋とマスクを着け、歯ブラシやスポンジで丁寧に磨いた。
 感染予防のマスクや手袋には、世間から「着用は失礼だ」「素手の方が温かみがある」といった誤解もある。夫は「妻には風邪が大敵。肺炎を引き起こすと入院することになる」と衛生的なケアに感謝する。

<要望の確認まめに> 
 「頭、上げて」「左手に枕を」。女性は声を発することはできないが、指先を動かしてベッド前方に取り付けたパソコン画面の文字盤に信号を送り、意思を表示させる。「どこか痛いですか」「寒いですか」。小松さんも小まめに要望を確かめる。
 一年中、女性は半袖に短パン姿を好む。体を楽にするためだ。冷えないよう、26度に設定したエアコンの温風が当たる位置にベッドがある。加湿器を使って湿度にも気を配る。夜間にたんの吸引をする長女は、「室内が乾燥すると、たんが固まって出にくくなるのです」と言う。
 吸引した唾液やたんがたまった容器を最後に洗浄し、小松さんのサービスは時間通りに終了した。午後10時すぎ、女性宅を出ると、雨はみぞれ混じりの雪に変わっていた。
 「この寒さにはまだ慣れないんですよ」。温暖な中南米ニカラグア出身で、1995年から夫の古里の仙台に暮らす。「利用者さんやご家族が一生懸命頑張っている姿を見ると、私も仕事にやりがいを感じます」と小松さん。「今夜は道路が凍らないうちに帰れそうですね」。白い息を弾ませて、運転席に乗り込んだ。
       ◇
 障害者や高齢者の暮らしを支えるサービスを提供している仙台市内の事業者を訪ね、冬場の苦労や福祉社会への思いについて聞きました。

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