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【岡山県】

当事者と交流授業10年目 岡山の中学、こころの病気学ぶ

山陽新聞 2017年12月5日(火)

関さん(手前の輪の右奥)の話を聞く京山中の生徒たち

 岡山市立京山中(同市北区津島京町)が学区内の福祉事業所と連携して進める人権学習「こころの病気を学ぶ授業」が、10年目を迎えた。偏見が強い精神疾患について当事者との交流を通して理解を深める全国でも先駆的な取り組みだ。生徒が身近な病気として受け止めるようになるなど効果が注目され、本年度から他校にも動きが広がっている。

 「統合失調症は患者が大きな事件を起こした時だけ注目される。でも、ほとんどの人は危険ではないんだよ」

 11月24日、精神科の万成病院(同谷万成)多目的ホール。精神障害の当事者との交流会で関常夫さん(64)=新見市=が車座の生徒に語り掛ける。30年前に統合失調症を発病した経緯や苦しみを話し「『そのままのあなたでいい』と言ってくれることが回復には大切」と伝えた。

 この日は2年生316人が参加。当事者のライブ演奏や詩の朗読もあり、藤澤夏海さん(13)は「普通の人ばかりで病気を身近に感じた。周りの支えが大事だと思った」と感想を話した。

意識に変化 

 授業は、万成病院の多機能型事業所「ひまわり」の田淵泰子施設長が「偏見、差別をなくすには教育が大切」と学校に呼び掛け、2008年度に始まった。事前に専門家らの研修を受けた教員が統合失調症を中心に授業する。当初は4時間の授業構成だったが、内容を深めるため、現在は7時間に増やしている。

 前半は各クラスで、ストレスや不安から幻聴などが現れる病気の基礎知識、かつて患者を病院の劣悪な環境に置いた人権侵害の事例、偏見をなくす今の取り組みを学ぶ。後半は田淵施設長の講演や障害当事者との交流に充てている。

 生徒へのアンケート(16年)では「自分も精神疾患になる可能性はあると思った」との回答が授業実施前の26%から58%に、「身近に患者がいたら力になりたい」という答えも29%から65%へと、それぞれ大きく増えた。

 障害当事者との交流には「変わった人というイメージがなくなった」「一日一日を大切に生きていることに感動した」「どうすれば偏見がなくなるか考えるようになった」などの感想が寄せられた。

 日本精神神経学会の元理事長で精神分裂病から統合失調症への病名変更に携わった佐藤光源東北大名誉教授(79)=岡山市=は「当事者と直接触れ合うことは偏見を持たなくする効果が極めて高い」と話す。

他校も注目

 厚生労働省によると、精神疾患の患者は14年時点で392万人と1999年の204万人から倍近くに増えている。統合失調症は思春期に兆候が出やすいとされ、「自分や友人がもし病気になったら、授業で学んだことが生きるはず」と京山中の担当・河田慶介教諭(54)は言う。

 授業に注目した西大寺中(同市東区西大寺上)は17年度から全学年で2時間の授業と田淵施設長の講演会を開始。旭東中(同大多羅町)も18年度、実施を検討中だ。

 田淵施設長は「京山中との10年にわたる実践を情報発信し、他の地域でも学校と医療・福祉事業所が連携して取り組んでもらえるようにしたい」と話している。

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