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【高知県】

空き家をゲストハウスに 高知市のお遍路ハウス33 高齢者集う

高知新聞 2017年12月26日(火)

「お遍路ハウス33」で毎月開催される認知症カフェ(高知市長浜)

 空き家を「人に喜ばれる」場所にしたい――。高齢の母親が老人ホームに入居し、住む人がいなくなった家。家族がリフォームを施して、女性宿泊専用ゲストハウスに生まれ変わった。高知市長浜の四国霊場33番札所・雪蹊寺にほど近い「お遍路ハウス33」。近所の高齢者らが集う「認知症カフェ」も毎月開かれ、憩いと交流の場になっている。

 「♪もう、いくつ寝ると、お正月〜」

 12月中旬に開かれた認知症カフェ。オカリナとウクレレの伴奏に乗せて、明るい歌声が響いた。

 ウクレレ奏者が「次は『てんとう虫のサンバ』です。昔、男女2人のデュオが歌っていましたよね」と参加者に語り掛けると、「そうそう、『チェリッシュ』。今、パンツ(大人用紙おむつ)のCMに出ゆう…」「夢がないわねえ。ワハハ」と、にぎやかな笑い声。

 この日は、近隣から徒歩や自転車、乗り合いの車でやって来た高齢の男女17人が集まり、歌の後、お茶とおやつタイム、体操、お年玉を入れるポチ袋作り―と盛りだくさんの2時間を過ごした。

 会場の「お遍路ハウス33」は、近くに住む小桜典子さん(54)が2016年に改修し、オープンさせたゲストハウスだ。義母(80)が長年独り暮らしをしていたが、認知症で要介護認定を受け、同年5月に施設に入所。当時、義母は古新聞や本、着られないサイズも含めた洋服、健康食品のストック…と大量の物に囲まれて暮らし、足の踏み場もない状態だった。

 夫は仕事で忙しく、弁当を届けたり、病院に付き添ったりとほぼ一人で義母の世話をしていた典子さん。ある時、高知新聞で空き家を活用した遍路宿整備を進めるNPOの活動を知り、「ご奉仕にもなる」と、空き家になった後の活用を思い付いた。入所前から義母の言動には妄想が入り交じり、ぼや騒ぎも起きるなど、家族は心配や不安が絶えず疲弊していたが、「お遍路ハウスにするなら頑張れそう」と希望を感じたという。

 義母の了承も得て、老人ホームに移った後、生前整理を手掛ける同市内の業者に連絡し、不要品をまとめて処分。ヒノキのフローリングやしっくいの壁など県産素材を活用した温かい空間にリフォームし、ステンドグラスの照明をアクセントに置いた。

 「『ビフォア』がいわゆるごみ屋敷状態だったので、物を増やさず、この場所が生きるようにしたいと思いました」と典子さん。

 内装を整えていた同年秋、再び高知新聞で県内の認知症カフェを紹介する広告を目にし、「この家も使えるのでは」と高知市の担当部署に連絡。地域の居宅介護支援事業所なども主体に加わり、「さくらカフェ」と銘打って同年11月から開催。折り紙、押し花アート、交通安全教室など多様なレクリエーションを毎月企画している。

 義母も帰宅を兼ねて毎月参加し、ご近所さんと話をしたり手先を動かしたり、穏やかな時間を過ごす。住み慣れた家を離れ、新しい環境で暮らすことに葛藤もあったに違いないが、「独りで、どうしようと思いよったから。人に使ってもらえてうれしい」と今の心境を話した。

 「心のストレスが、以前の部屋の状態にも表れていたのだと思う。施設にお世話になるようになって、(様子が)落ち着きました」。典子さんはほっとした表情で語る。

 宿の情報は主にインターネットで発信し、これまでにカナダや中国など海外からのバックパッカー、お遍路さんらの女性客が宿泊。「高知での癒やしの場となりました」「おしゃれなカフェみたいで夢のようでした」などの感想が宿帳につづられている。

 13年の全国調査で、県内の空き家率は鹿児島県に次ぐ第2位の10・6%。背景には少子高齢化があり、「親と子の世帯が一緒に住まないケースが増え、亡くなった後も活用される見込みのない空き家が増えている」と県住宅課の担当者。実態調査はされていないが、典子さんのように、独居していた親が施設に入居し、空き家となるケースも少なくないようだ。

 「ゲストハウスにすることがベストな選択だったのかは分かりませんが、新しい出会いに満ちた空間の運営は楽しい。認知症や、親の家の片付けという問題はとても身近な話題。切羽詰まって転換できたという一つの例になったと思います。同じように困っている方もたくさんいると思う」と典子さんは話している。

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