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【岡山県】

県展12年連続で入選以上 真庭の障害者就労支援施設

山陽新聞 2018年9月20日(木)

昼休みにアート制作に励む利用者ら

 岡山県内最大の美術公募展「第69回県美術展覧会(県展)」の洋画部門に利用者が入選し、施設として12年連続で入賞・入選を果たした障害者就労支援施設「スカイハート灯(ともしび)」(真庭市若代)。さぞかしアートに特化した活動を展開しているのだろうと思いきや、普段は企業の下請け作業が中心だという。現地を訪ね、快挙を続ける舞台裏を探った。

 どアップの達磨(だるま)大師を豪快に描き上げた水墨画、背景をちらし広告で埋め、ポップに仕上げたちぎり絵…。工場跡を活用した施設の2階に上がると、利用者が手掛けた独創的な絵画や立体造形、本人のプロフィルが部屋ごとに展示され、ギャラリーのような空間が広がっていた。

 発表の場をつくり、励みにしてもらおうと5年前に“改装”。支援員の松田圭一さん(41)によると、見学者に進んで自作を説明するようになった人もいるという。

 ただ、就労支援を掲げるだけに、日常の活動はフルーツキャップの折り畳みや苗ポットの土入れなど、確実に工賃が出る内職がメイン。アート制作はもっぱら昼休みで、真庭や津山、新見市から通う約20人のうち10人前後が取り組む。

 

■アートとは無縁

 その昼休み―。「物差しがない」。今回の県展で同施設から唯一入選した藤原正一さん(67)=真庭市=が探し始めると、すぐに松田さんも手伝う。藤原さんの作品は大小無数の丸やひし形で画面を埋め尽くす。その必需品が物差しだからだ。しばらくしてお気に入りの阪神タイガースの物差しが見つかり、ひとしきり野球談議で盛り上がった後、藤原さんは制作に没頭した。

 「利用者が希望する画材を用意したり、会話でリラックスしてもらったり。創作しやすい環境を整えることで、『私もやってみたい』と自発性が芽生え、何人もの人が眠っていた才能を開花させている」と松田さん。藤原さんら利用者の大半が、以前はアートとは無縁の生活を送っていたというから驚きだ。

 中には県展に落選し、長期間ふさぎ込む人も。そんな時も決して制作を強制せず、本人が意欲を取り戻すまで待つことを職員間で徹底している。

 

■発表の機会増加

 施設開所翌年の2007年に当時の利用者が県展賞を受けて以来、延べ25人が毎回、県展特別賞、桃花賞など入選以上に入ってきた。活躍が広まるにつれ、津山市での個展が実現したり、真庭市役所に常設の展示場所ができたりと発表機会が増加。11月には京都の画廊が主催する展示会も現地で予定される。

 「アート制作の収入による自立促進も開所目的の一つ。実績を積み重ね、販路開拓へさらに力を尽くす」と施設を運営するNPO法人「灯心会」の藤原恒雄理事長(78)。プロアーティストが誕生する日も遠くないかもしれない。

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