福祉医療経営情報記事
トップ



 

◆◆ 平成23年度 ◆◆

平成23年度 福祉・医療経営セミナー報告

−「医療施設整備・機能強化セミナー」報告−【東京会場】
「地域医療における中小病院の専門特化への可能性」

 福祉医療機構

 当機構の経営支援室は、平成23年9月2日全社協・灘尾ホールにおいて、病院経営者等を対象に「地域医療における中小病院の専門特化への可能性」と題して医療施設整備・機能強化セミナーを開催しました。
 地域医療の中心的担い手である中小病院は、医療技術の進歩、DPCの進展や地域医療計画の見直しをはじめとした医療政策の変化など経営環境にもさまざまな変化が見込まれる現在、地域の中で自院がどのような立ち位置にあるか見定め、限られた経営資源を最大限かつ効果的に活用し、地域完結型医療の一翼を担う機能分化・連携を進めていくことが可能かどうか、選択と集中の方向性を検討することが重要となります。
 そのための視点としては、たとえば特定の診療分野への専門特化、在宅療養支援を担う地域の核となる施設への転換、高度医療を駆使する超急性期病院やその後方支援となる亜急性期や回復期への特化など様々な形が考えられます。
 今回のセミナーでは、「病院の専門特化」に焦点を当て、なぜ専門特化が必要か、どのような専門に経営のかじを切るか、それを実現するための経営資源の確保や体制の構築はいかにあるべきかなどについて、先駆的な実践事例のご紹介とパネルディスカッションを通じて、皆さまとともに考えていただくことを目的としたセミナーを開催いたしました。
研修風景
 最初に、当機構の理事である瀬上から「本日のねらい」として、融資審査の視点から、経営理念の明確化や適切な事業計画、資金調達計画の策定の必要性について説明を行いました。特に、事業計画の策定には政策の本質的な狙いを十分に検討したうえで、地域の医療ニーズに合わせて行うことが大切であると指摘を行い、これらを踏まえた病院機能の選択と集中が重要であるという問題提起を行いました。

 次に、基調講演として、IMS(イムス)グループ医療法人社団明芳会板橋中央総合病院理事長・中村哲也氏から「グループのトップから見た中小病院における専門特化の可能性とは」と題して、同法人の設立経緯、経営理念に触れた上で、日本の将来推計人口と社会保障国民会議で示された「2025年における医療・介護費用を試算した現状投影シナリオと複数の改革シナリオ」から、グループ内医療機関をどのようにして機能分化へ対応してきたか、また今後の方向性について講演がありました。
 具体的には、社会保障国民会議において示された改革のシナリオでは、現状(2007年)と改革シナリオ(B2とB3シナリオ)とを比較すると、103万床ある急性期、亜急性期・回復期等の一般病床が、2025年には高度急性期26万床、一般急性期49万床に再編されていくと見てとれます。このような改革に対応するためには、総合病院はより救急総合病院としてハード面やソフト面を人材も含めた形で充実していかなければならないということと、ケアミックス病院はどちらかというと一般病院の救急総合病院に変えていくという方向性が見えてきます。このため、いわゆる町の病院といわれる中小規模の病院はミニ総合病院という方向性ではなく、専門に特化した病院にしていくべきだとの考えを示されました。
 特に中小病院についてはその地域にその病院がなぜ必要なのかということをよく考えながら行っていかなければならないという点を強調されました。
 以上のような背景の中で、IMSグループ内にある医療機関の機能分化への対応としては、

総合病院 : より救急総合病院の充実へ
ケアミックス病院 : 救急総合病院化へ
中小規模病院 : より専門特化した病院へ
療養病院 : より重症化の受入れへ
精神科病院 : 合併症、認知症対応化へ
診療所 : 総合診療所、透析、在宅療養支援など機能分化へ

ということを考え、その具体的な4つの事例紹介が行われました。

 最後に、全体を通しての考察として、
・中小の病院を専門特化し、余分な医療機器や資源を省き、効率化を進めることができた。
・専門特化したことで、高度な技術をもった医師・看護師等の採用ができた。
・他の医療施設との医療連携が明確となり、より施設間のパイプを太くすることができた。
・徹底して病院の機能やスタッフを充実した。
という点を挙げた上で、現場力(職員個々の力)を強化することが重要で、それには経営理念や目標が職員全員に行き届いていることが重要であるという点を強調されました。限られた病床数を有効的に活用するため、現場スタッフがみんなで考え、みんなで発案し、みんなで実行し進んできた、これからもみんなで考え前進していきたい、との考え方が示されました。
 以上のような話のあと、午後は実践事例紹介と、当機構理事瀬上をコーディネーターに、公認会計士の長氏を加え、パネルディスカッションを行いました。
 なおパネルディスカッションでは、
@専門特化にあたり医師、看護婦等の確保について
A今後の医療の方向性として「質」について
B経営面での視点について
 の3つのポイントを中心に議論を行いました。

 なお、今後の福祉・医療経営セミナーの予定は、
http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspx
になります。

    【講演内容】
    〜【基調講演】〜
    「グループのトップから見た中小病院における専門特化への可能性とは」
    <講師> IMSグループ 医療法人社団明芳会 
    板橋中央総合病院 理事長 中村 哲也 氏

    〜【パネルディスカッション】〜
    地域における中小病院の専門特化への可能性
    実践事例紹介1 〜脳血管領域〜
    <講師・パネリスト>財団法人脳血管研究所付属美原記念病院 院長 美原 盤 氏
    実践事例紹介2 〜整形外科特殊治療領域〜
    <講師・パネリスト>医療法人社団悠仁会 羊ケ岡病院 理事長 岡村 健司 氏
    実践事例紹介3 〜循環器領域〜
    <講師・パネリスト>医療法人社団浅ノ川 心臓血管センター金沢循環器病院 
    最高経営責任者 名村 正伸 氏
    <パネリスト>   東日本税理士法人 副所長 長 英一郎 氏