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◆◆ 平成23年度 ◆◆

平成23年度 福祉・医療経営セミナー報告

−「医療施設整備・機能強化セミナー」報告−【東京会場】
「地域医療連携に向けた在宅療養支援の課題と展望」

 福祉医療機構

 当機構の経営支援室は、平成23年10月25日全社協・灘尾ホールにおいて、「地域医療連携に向けた在宅療養支援の課題と展望」をテーマに、先駆的な実践事例の紹介とパネルディスカッションを通じて、将来に向かって持続可能性のある経営基盤を確立するためのご参考としていただけることを目的として、医療施設整備・機能強化セミナーを開催しました。

 セミナーの冒頭、社団法人日本医師会の常任理事である三上 裕司 氏から挨拶があり、その後、東海北陸厚生局長(当機構の前理事)である瀬上 清貴 氏からイントロダクションとして、現在の医療政策の動向などのガイダンスがありました。
 瀬上氏からは、将来に向かって持続可能性のある経営基盤を確立するには、「地域の医療ニーズ・医療政策の動向に合致した計画を策定し、政策動向への積極的な適合を図ることが重要」であるとして、「最近の医療を取り巻く環境」、「次期診療報酬改定の基本方針」、「社会保障・税の一体改革に関する検討ポイント」などについての解説がありました。
 その後、医療法人大雄会理事長の伊藤 伸一 氏から実践事例の紹介として「地域医療における在宅療養支援の現状と将来像」と題した講演がありました。

 講演の概要は、次のとおりです。
 伊藤氏はこれまで、経営のバイブルとして昭和62年に公開された、「国民医療総合対策本部の中間報告」を傍らに置いて経営の舵を切ってきたとのことですが、それに代わる新たな経営のバイブルとして以下の2つの資料を紹介されました。

   ○ 社会保障国民会議の最終報告(平成20年11月4日)
   ○ 社会保障・税一体改革成案(平成23年6月30日)

 現在の社会保障への不安材料となっている国民の総医療費(2010年で対国民所得比の10%、36兆6千億円)の問題や、人口構造(団塊の世代が医療費等の給付を受ける側に回り、かつ少子化)の問題などがある中で、これらの資料は、今後の日本の医療、介護、社会保障の方向性を示した、羅針盤としての機能を担う非常に重要なものとしてとらえているとのことでした。
 このうち、社会保障・税一体改革成案において、「在宅医療の充実等」、「地域包括ケアシステムの構築」、「居宅サービスの充実」と居住系・在宅系サービスにかかる記述が3つも書かれているというのは注目に値する、としてポイントを強調されました。
 今後の医療・介護の方向性は、まさしく居住系・在宅系サービスを充実していくことにあるが、どのようにして居住系・在宅系サービスに参入していくか、また「病院・病床の機能分化、集約化」、「施設から地域へ」、「医療から介護へ」という流れの中で、今後の自院の立ち位置をどこに置くか、を考えて経営をしなければならないという説明がありました。

 また、在宅医療体制を推進していくうえでの現状として、例えば、住み慣れた自宅や、地域での看取りを実施していくうえでは、「死亡場所の年次推移」から、日本では8割近くが病院で死亡しており、いわば「自宅で死なない文化」ができていること、さらに、死亡者が最大になるのは2040年に166万人であると推計されているが、将来の病床数を考慮すると、そこに大きな問題が内包されていること、また、往診・訪問診療の状況と医師の負担感、在宅療養支援病院の届出数の推移等を挙げ、往診・訪問診療、在宅療養支援病院の数は増加しているが、いずれも在宅看取り数が極めて少なく、かつ70%以上の在宅療養支援診療所の医師が24時間体制への負担を感じていること、などが説明されました。
 その他にも避けて通れない問題として、「認知症高齢者の割合は2045年には2002年に比べ概ね150%程度に急増する見込みであること」、「今後の世帯形態として65歳以上の高齢者の単独世帯や高齢者の夫婦のみの世帯が増加し、2025年には、それぞれ高齢世帯の概ね3分の1が単独世帯か夫婦のみ世帯となる見込みであること」、さらに「2025年に向けて、労働力人口が減少する中で、介護職員は倍以上に必要となることが見込まれること」、「各都道府県の医療計画に関する数値目標等がまだまだ不十分であること」など様々な問題点を取り上げられました。

 次に視点を変え、「人口動態から見た地域医療の在り方」として、二次医療圏ごとの後期高齢者増加率及び医療・介護施設の整備必要量などの説明がありました。
 大都市部、地方都市部、過疎地域ごとに、2010年から2035年までの人口の増減率と75歳以上の増加率をわかりやすくグラフを用いて解説し、大都市部ほど75歳以上増加率が大きく、整備すべき施設やサービス量は大きくなるが、一方、過疎地域では、整備する施設の必要量は十分と言える段階にきているのではないか、ということでした。
 以上のような説明の後、講演の最後に自院における医療連携の話がありました。

 午後からは、実践事例として「シームレスな医療・介護連携の実現に向けて」と題して社会医療法人 高橋病院 理事長 高橋 肇 氏から、「在宅緩和ケアと医療連携」と題して医療法人社団和顔会 要町ホームケアクリニック 院長 吉澤 明孝 氏から、「仮想病院を中心に医療連携を推進」と題して社団法人伊都医師会 ゆめ病院 初代院長 小西 紀彦 氏から、それぞれ実践事例の紹介の後、パネルディスカッションが行われました。

 今後の福祉・医療経営セミナーの予定は、
http://hp.wam.go.jp/guide/keiei/seminar_information/tabid/667/Default.aspx
です。
    【講演内容】
    イントロダクション 東海北陸厚生局長
    <講師>(前独立行政法人福祉医療機構 理事) 瀬上 清貴 氏

    実践事例紹介@ 「地域医療における在宅療養支援の現状と将来像」
    【講師・コーディネーター】 医療法人大雄会 理事長 伊藤 伸一 氏

    実践事例紹介A 「シームレスな医療・介護連携の実現に向けて」
    【講師・パネリスト】 社会医療法人 高橋病院 理事長 高橋 肇 氏

    実践事例紹介B 「在宅緩和ケアと医療連携」
    【講師・パネリスト】 医療法人社団和顔会 要町ホームケアクリニック 院長
    医療法人社団愛語会 要町病院 副院長 吉澤 明孝 氏

    実践事例紹介C 「仮想病院を中心に医療連携を推進」
    【講師・パネリスト】 社団法人伊都医師会 ゆめ病院 初代院長 小西 紀彦 氏


    パネルディスカッション「地域医療連携に向けた在宅療養支援の課題と展望」
    【コーディネーター 】
    医療法人大雄会        理事長 伊藤 伸一 氏
    東海北陸厚生局長       瀬上 清貴 氏
    【パ ネ リ ス ト】
    社会医療法人高橋病院       理事長 高橋 肇 氏
    医療法人社団和顔会
    要町ホームクリニック 院長
    医療法人社団愛語会 要町病院  副院長 吉澤 明孝 氏
    社団法人伊都医師会 ゆめ病院   初代院長 小西 紀彦 氏
    東日本税理士法人 副所長     公認会計士 長 英一郎 氏