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【山梨県】

失語症患者らが友の会結成 言語聴覚士が運営 情報共有、社会参加促す

山梨日日新聞 2019年1月30日(水)
失語症者らが集う定例会で、自分が住む地域について話す会員=甲斐・双葉ふれあい文化館
失語症者らが集う定例会で、自分が住む地域について話す会員=甲斐・双葉ふれあい文化館

 山梨県言語聴覚士会(内山量史会長)が、失語症者や家族、言語聴覚士らでつくる団体「失語症友の会『ふじやま』」を立ち上げ、県内全域での失語症者のネットワークづくりを進めている。日ごろ、他者とのコミュニケーションが不足しがちな当事者に集いの場を設けていて、症状改善につなげることを目指している。日本言語聴覚士協会によると、47都道府県にある言語聴覚士会のうち、失語症者や家族が集う団体を言語聴覚士が運営しているのは山梨だけ。同会は、言語聴覚士が運営を担うことで所属する医療機関を通じ、より多くの失語症者に参加を促せると期待する。〈小林諒一〉

 「富士は日本一の山−」。19日午後、甲斐・双葉ふれあい文化館の一室で開かれた、同会の第3回定例会。これまで友の会に参加していなかった失語症者12人が、童謡「ふじの山」を高らかに歌い上げた。食事を取りながら近況報告をしたり、福笑いを楽しんだりして交流を深める会員。失語症者と家族に笑顔の輪が広がった。
 「同じ症状の人と出会えてうれしい。みんなと話すのは本当に楽しいね」。2017年2月ごろに脳出血を患って失語症になった韮崎市穴山町の秋山尹胤さん(85)は、満足そうな表情で話した。長女の志津江さん(51)は「父は自宅にこもりがちで、これまで集まれる場がなかった。私も失語症の患者や家族と会話することで、よりよい支援方法を学べている」と語った。
 NPO法人「日本失語症協議会」(東京)によると、全国各地には失語症者と家族による自助団体「友の会」が組織されている。だが会員の高齢化と新入会員の減少から、90年代に全国で約150団体存在していた友の会は、近年では100団体以下に減少しているという。

◎支援方法を共有
 県言語聴覚士会によると、友の会の会員が集う「山梨県失語症者のつどい」(県失語症友の会連合会主催)への参加者と団体数は、122人5団体(06年)から47人2団体(18年、失語症友の会「ふじやま」を除く)に減少。2団体は、県内全域ではなく特定の地域や系列の医療機関に通う患者らで構成されている。
 対して、ふじやまには県内全域から自由に参加でき、当事者の連帯感を深め、家族も悩みや支援方法を共有し情報交換ができる場となる。失語症者が退院し自宅に戻ってからも、言語聴覚士が継続的して指導できる利点もある。
 ふじやまは、既存の友の会との連携を図り、失語症者・家族と言語聴覚士の交流を促進しようと、18年7月に設立された。現在は40〜70代の失語症者17人が会員。
 失語症者は1〜2カ月程度の急性期と、約6カ月の回復期の間、入院しながら言語聴覚療法を受ける。その後は介護型療養病床に入院するほか、退院して介護保険サービスによる訪問リハビリや通所リハビリを利用する。
 ただ、言語聴覚士の多くは医療機関に勤務していることから、失語症者に対し、短期的な機能回復訓練になりがちなのが長年の課題。ふじやまは言語聴覚士が団体運営に携わることで、地域で暮らし始めた失語症者の様子を継続的に把握。「『言葉が出づらい』『いらいらする』など当事者や家族の悩みを聞き、医療現場での訓練に生かしていきたい」(同会)という。

◎生きがいづくり
 「自宅や病院で過ごしがちな失語症者が、友の会にくると表情が豊かになる」と内山会長。「言語聴覚士が関わることで失語症者の社会参加を促し、生きがいづくりに貢献したい」と話している。
 失語症友の会「ふじやま」は、今後も2カ月に1回定例会を開き、失語症者らの交流を深めていく。問い合わせは同会事務局(春日居サイバーナイフ・リハビリ病院言語聴覚療法科内)、電話0553(26)4126。