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【熊本県】

不器用さ、発達障害かも 脳機能に起因も 怒らず適切な支援を 熊本市で講演会

熊本日日新聞 2020年3月9日(月)
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発達性協調運動障害について講演する中井昭夫・武庫川女子大教授=熊本市中央区

 手先の不器用さや運動下手は発達障害かも−。熊本市で2月上旬、運動機能にかかわる発達障害「発達性協調運動障害(DCD)」についての講演会があり、小児科医らが「不器用なのは脳機能が原因の可能性がある。子どもを傷つけない適切な支援が必要だ」と呼び掛けた。

 講演会は、医療や福祉、教育関係者でつくる熊本小児保健研究会が主催。中央区の熊本大医学部であり、会員ら400人が聴いた。

 講演した武庫川女子大教育研究所の中井昭夫教授(小児科医)によると、「真っすぐはさみを使えない」「のりで手がべとべとになる」などの不器用さや「逆上がりできない」などの運動下手は、発達障害が関わっている可能性がある。子どもの5〜6%にDCDの傾向が見られる、とのデータもあるという。

 手先を使う、走るなどの運動は「身体の能力」と捉えられがちだが、実は体の「協調」をコントロールする脳の機能が重要−。中井教授はこう説明する。運動は、視覚などから得た感覚を筋肉の動かし方やスピードなどを調整する一連の動き。脳の機能に障害があると、右と左で手の動きがスムーズにいかなくなることがある。

 例えば学童期に「筆圧が強すぎて鉛筆の芯が折れる」「消しゴムをうまく使えずノートがくしゃくしゃ」のように表面化する。こうなると集中力も長続きせず、周りに話し掛けて先生から注意を受けることも。こうしたときに必要なのは鉛筆や消しゴムの力加減を教えること。「おしゃべりを怒っても問題は解決しない」という。

 ただ、不器用さや運動下手は周りから目立つ。中井教授は「音楽の笛や跳び箱を真面目にやろうとしてもうまくいかなければ、皆の前で失敗がさらされて、本人は傷つく。ここで反復練習をさせても効果はない」と指摘する。

 DCDであれば、5〜7割が大人になっても不器用さが続き、「料理がうまくできない」「メークやひげそりが苦手」など日常生活に支障を来す。その結果、うつや社会に出たがらない、といった2次障害を引き起こしかねないという。

 改善の鍵は、共に考え、適切に援助する信頼できる家族や教師の存在だ。「発達障害であったとしても、適切な運動指導があれば、苦手の克服は可能」。体育に限らず音楽や図工、生活の場で過度な不器用さが見受けられた場合、「発達障害かもしれない」という視点を持つだけで、支援と理解につなげられる可能性が高まる。

 最後に中井教授は、発想を転換することで不器用さを深刻に考えすぎない大切さについても助言。「靴ひもが結べなければ、ひもなしのかっこいい靴を探せばいい。逆上がりやスキップがうまくできなくても、大人になってやる機会ってありませんよね」と結んだ。(林田賢一郎)