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【熊本県】

熊本地震の復興住宅、見守り活動にコロナの影 感染防止で訪問自粛

熊本日日新聞 2020年4月13日(月)
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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、電話での安否確認に切り替えた甲佐町の地域支え合いセンター=8日、甲佐町社会福祉協議会

 熊本地震の被災者が入居する災害公営住宅(復興住宅)の「見守り活動」に新型コロナウイルスが暗い影を落としている。感染拡大を防ぐため、自治体の「地域支え合いセンター」は直接訪問を自粛。交流活動も休止を余儀なくされた。入居者は、感染すると重症化が懸念される高齢者が多く、現場は手探りを続けている。

 「コロナのせいで人と会う機会が減った。最近はテレビを見るばかりで退屈」。8日、甲佐町豊内の復興住宅「甲佐団地」。1人暮らしの女性(84)は疲れた表情をみせた。

 地震で自宅が全壊。仮設住宅を経て昨年4月に入居した。当初は広々とした住まいに喜んだが、プレハブが軒を連ねた仮設と比べ、隣近所と距離ができ、付き合いが減った。

 甲佐町を含む御船保健所管内で2月22日、コロナ感染が確認され、団地内の唯一の集会所も利用を制限。外出自粛の影響から人影もまばらで、女性は「病気で倒れても誰も気づかんでしょう」と話す。

 昨年3月完成の甲佐団地には現在、満室の30世帯が入居。このうち4割が、1人で暮らす65歳以上の高齢者世帯だ。町福祉課は「対面での会話を楽しみにしている人もいるが、感染リスクはゼロではない。コロナが収まるまではやむを得ない」と頭を悩ませる。

 町では、支援が必要な仮設退去者の見守り支援を地域支え合いセンターが展開。さらに見守り支援を地域の福祉活動に移行させようと、民生委員が訪問に同行するなど、地ならしを続けてきた。

 落語会などの交流イベントも毎月開催。今後、団地に隣接する子育て支援住宅の入居者にも参加してもらい、若年世帯との交流も進めるはずだった。

 だが、コロナ感染が広がり、交流イベントは休止。個別の訪問も自粛し、電話での安否確認に切り替えた。このため、自宅に閉じこもった人の体調の変化を見逃す不安は残る。

 県によると、県内14市町村にある地域支え合いセンターの多くは甲佐町と同様、電話対応に切り替え、訪問は支援が特に必要な人に限定。その場合も「家の中に入らず、玄関先で話す」(宇城市)、「相談員の検温を欠かさない」(西原村)など神経を使う。

 阪神や東日本の大震災の被災地では、復興住宅での孤独死が問題化。甲佐団地代表の矢鍋雄次さん(69)は「入居者の中には体が不自由な人もいる。もしもの時のために入居者と話し合いたいが、何もできない状況」と危機感を募らせる。

 阪神大震災の被災地で訪問活動を続ける神戸市のNPO法人「よろず相談室」元理事長の牧秀一さん(70)は「入居者とのつながりが断たれると、SOSも出せなくなる。孤独感を深めないよう、電話や手紙、チラシのポスティングなど、できる範囲で支援を続けるしかない」と話した。(臼杵大介)