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【秋田県】

在宅患者の思い共有、サービス活用広がる ナラティブブック秋田

秋田魁新報 2020年11月4日(水)
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「ナラティブブック秋田」のデモ画面

 主に在宅医療を受ける患者の医療情報や生活情報、死生観などを患者・家族と医療・介護の従事者間で共有するクラウドサービスシステム「ナラティブブック秋田」の活用が県内で広がっている。県医師会が事業主体となり、現在は五つの郡市医師会が導入。患者の思いを家族や医療・介護従事者が共有し尊重することで、医療や介護サービスの向上が期待される。

 「ナラティブ」は「物語」の意味。患者本人や家族のほか、患者が許可した医師やケアマネジャーが、スマートフォンやタブレット端末からシステムに患者の基本情報、既往歴、服薬情報、本人の希望、治療の目標などを入力し、それぞれが閲覧できるようにする。写真を投稿したり、メッセージをやりとりしたりもできる。

 2015年に由利本荘医師会が全国初の試みとして始めた。その後、18年に県医師会が事業主体となって導入地域を拡大。現在は能代市山本郡、男鹿潟上南秋、由利本荘、横手市、湯沢市雄勝郡の5医師会が導入する。

 県医師会によると、参加機関は病院、診療所、看護関連施設、薬局、介護施設など約160施設。これまでの累積登録患者数は約430人となっている。

 JA秋田厚生連山本訪問看護ステーション(能代市)は、昨年10月からナラティブブック秋田に参加した。自宅で70代の娘と2人で暮らす90代女性の患者のケースでは、当初は2人とも「機械は使えない」と利用に消極的だったという。

 それでも、看護師は訪問した際、娘に持参したタブレット端末でナラティブブックの使い方を説明。患者の薬の服用方法などを示していったところ、「画面を見ながら説明を受けると分かりやすい」と、利用に前向きな姿勢に変化。主治医が投稿した桜並木の写真をきっかけに、患者本人も思い出話を積極的にするようになり、親子での閲覧が習慣化した。

 同ステーションの担当者は「ナラティブブックが患者の人生を振り返るきっかけになった。情報をリアルタイムで共有できるため、多職種連携の認識のすれ違い防止ができ、安心にもつながる」とする。

 他地域では、高齢独居の親を遠方で見守る家族が活用した事例や、難病の患者について治療歴など多くの情報を共有している事例がある。

 当初から取り組みを進めてきた県医師会の伊藤伸一副会長は「病気だけを診るのではなく、その人の生活や思いの全体像を共有できる。地域包括ケアの充実、本人が望む治療やケアについて話し合う『アドバンス・ケア・プランニング(ACP)』の手段としても有効だ」と強調する。

 動画を掲載できるようになるなど、システムは改善を重ねている。来年度からは医療的ケア児を対象とする「キッズナラティブ」を始める計画。伊藤副会長は「これまでの蓄積で、ナラティブブックが大きな力を持つことが分かってきた。取り組みを全県に広げ、多くの人に利用してもらいたい」と話した。

 ナラティブブック秋田は、原則として在宅で医療、介護を受けている人は誰でも利用できる。本人に代わって家族がIDを取得することも可能。現段階では導入する5郡市医師会の医療機関などが参加している。

 本人や家族がインターネットを使える場合は、ナラティブブック秋田のホームページ(http://www.akita.med.or.jp/nb−akita/)でIDを取得する。本人、家族がインターネットを使えない場合などは、かかりつけ医や利用する介護施設に相談する。

 ナラティブブック秋田に参加している施設リストはホームページに掲載している。問い合わせは県医師会事務局TEL018・833・7401(平日午前8時半〜午後5時15分)