熊本市が27日公表した慈恵病院(同市西区)の「こうのとりのゆりかご」の2019年度運用状況では、預けられた11人のうち10人が、医療関係者が立ち会わない「自宅出産」だった。ゆりかごの扉外に置かれ一時低体温状態となった子もおり、母子の命にかかわる危険な預け入れが依然続いている。
約13年間に県外から預けられた子どもは累計106人となり、父母らの居住地が判明した118人の約9割を占めた。熊本にとどまらない課題であることも改めて浮き彫りとなった。
19年度では、精密検査などの医療行為を必要とした子どもは4人、低出生体重児も2人いた。ゆりかごの運用を検証する市の専門部会(部会長・山縣文治関西大教授、6人)は「(自宅出産は)母子の体へのリスクや、子どもの今後の育ちに影響がある」と指摘。ただ、具体的な防止策について専門部会から提言はなかった。
預けた理由は、生活困窮と養育拒否が各4件で最多。預けた子にきょうだいがいるのは5件、うち3件は「3人以上」と父母らが答えており、医療機関に行かず自宅出産を選んだ背景に経済的困窮があることも考えられる。
ゆりかごは親の匿名性が最大の論点であるため、子どもの「出自を知る権利」をどう確保するかという問題が常に横たわる。専門部会は今回、「子と親をつなぐ貴重な情報」として、病院側に預け入れ時の情報の確保や、預ける人への積極的な接触を求めた。
ただ、子どもが扉外に置かれた事例では、預けに来た母親が、病院職員らに接触し身元が判明することを恐れて扉を開けなかったことが判明している。同病院の蓮田健理事長兼院長は「これまで預けた人に必死に接触してきたが、それが一律に子どものためになるとは言えないのではないか」と疑問を呈す。
子どもの命と人権を守り、子を産み育てることが難しい家庭を必要な支援にどうつなげていくか。一病院や一自治体が背負うのではなく、国全体で取り組むべき課題だ。(深川杏樹)
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