
公式ウェブサイトの「いのちの相談室」
平常時は考える機会の少ない終末期医療や移植医療について啓発しようと、福岡県筑後地区の病院や経済界が連携し、一般財団法人「久留米・筑後移植医療推進財団」を設立した。移植医療に特化した推進団体は県内では初めてという。
財団は、病気や健康について正しく学ぶ広報誌の発行、健康相談やセカンドオピニオンをウェブ上で受け付ける「いのちの相談室」事業などを手掛ける。医療への市民の理解を深めることで、移植医療受け入れの環境づくりも目指す。
2010年に改正臓器移植法が全面施行され、本人の臓器提供の意思が不明でも、家族の承諾があれば臓器提供できるようになった。だが、心臓など6種の臓器で、移植希望の登録者は1万5605人(今年11月末現在)いる一方、実際の移植件数は昨年318件だった(いずれも日本臓器移植ネットワーク調べ)。
臓器移植には地域差がある。10年以降、脳死となり臓器提供した件数は、人口100万人あたりで北海道が年0・689件と最多だった。九州は年0・427件にとどまる。北海道には医療界と経済界でつくる北海道移植医療推進財団があり、約20年にわたって市民講座や講習会を開き、環境を整えてきた。
筑後地区の財団は(1)健康増進(2)病気予防(3)終末期医療(4)移植医療‐を活動の軸とする。北海道の財団の創設に携わり、今回の財団創設の中心となった藤堂省理事(聖マリア病院研究所長)は「一般市民が健康の大切さを思い、その先に終末期、移植医療を考えることにつながる。医療人が思いをくみ取って対応するには、関係機関がチームを組む必要がある」と財団の意義を語る。
財団は広報誌10万部を年数回発行し、新聞折り込みや地域の病院で配布。公式ウェブサイトの専用フォーム「いのちの相談室」では、健康相談やセカンドオピニオンを受け付け、専門の医師などにつなぐ。
今月13日にはコロナ禍で延期されていた設立総会を久留米大で開いた。財団の永田見生理事長(久留米大理事長)は「命を守り、命をつなぐことが財団の使命。地域医療の向上に向けてさまざまな活動を展開する」とあいさつした。