
「主体的に診察をさせてもらえることが経験につながる」と話す女性=福井県福井市の県立病院
厚生労働省がこのほど公表した2021年度の臨床研修医の採用実績によると、福井県内の医療機関に20年度比16人増の計64人が採用され、伸び率は47都道府県でトップとなった。22年度も同程度の採用数になる見込み。県内で研修を行っている医師は「主体的に診察をさせてもらえる」「指導体制が手厚い」などと話す。
21年度の臨床研修は県内7カ所を含む全国1026カ所の医療機関が受け入れ、研修先は医師の希望と各医療機関の募集条件のマッチングで決まる。
県内の臨床研修医の採用実績は10年度の70人が最も多く、例年60人程度を採用していたが、19年度は55人、20年度は48人と減少傾向が続いていた。
県は採用数増加に向け、20年度からこれまで年1回だったオンラインによる合同説明会を2回に増やしたり、医療機関と協力しPR動画を作成したほか、県内出身の県外大学の医学部生を対象に県内で医師になることを条件にした奨学金も創設した。
県地域医療課によると、22年度の採用人数は昨年10月時点で58人。マッチングは今年3月まで行われるため、本年度と同程度の採用になる見込みという。
採用後の県内医療期間の環境も評価されている。
福井市の県立病院では21年度に18人が新たに臨床研修を行っている。島根県出身の女性は、患者のファーストタッチ(最初の診察)を任せてもらえることを魅力に挙げ、「自分で治療の計画を立てた上で、指導医にアドバイスをもらえる」と話す。救急の症例が多く、軽症から重症まで幅広い患者を診ることも経験につながっているという。
福井市の福井赤十字病院は、麻酔科の研修期間を8週間とし、他の病院の2倍の長さで設定している。大阪府の大学を卒業後、Uターンした研修医2年目の男性は「患者の全身管理が必要な麻酔科での研修が充実していることで、医者としての基礎をしっかり身に付けられる」と話す。
県によると例年、臨床研修医の7〜8割が研修終了後も県内に残る。今後も県外の医学生や臨床研修医などの病院見学に対する支援や、U・Iターンの意向のある医師と医療機関とのマッチングを促進し、医師確保につなげるとしている。