疾患一覧
介護

虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)

  心筋(心臓の筋肉)への血液の供給量が減ったり障害されたりすることにより引き起こされます。「狭心症」と「心筋梗塞(こうそく)」が代表的です。

1)狭心症(きょうしんしょう)

  心筋が血液不足に陥ることにより起こります。体動時に冠血管からの酸素供給が間に合わなくなり生じる「労作性(ろうさせい)狭心症」と、安静時や睡眠時に起こる「安静狭心症」があります。

  • 主症状

    • ・発作は突然始まります。
    • ・重苦しい、締めつけられるなどの痛みが胸部全体で起こります。
    • ・動悸、不整脈、呼吸困難、頭痛、嘔吐(おうと)などが生じます。
    • ・痛みはだいたい5分以内におさまります。
  • 生活上の障害

    • ・運動をすると発作が起きやすいため、活動が制限されます。
    • ・症状を軽快させるニトログリセリンを常備することが求められます。
  • 予後のリスク

    • ・発作の頻度や強度が増す、発作の持続時間が長くなるといった症状の悪化が起こりえます。
    • ・急性心筋梗塞に至るおそれがあります。
  • 気をつけたいこと

    • ・負荷の大きい運動を避けます。運動を完全に制限すると機能低下を招きます。
    • ・肥満は心臓に負担をかけるため、高カロリー食は控えます。
    • ・入浴はぬるめのお湯が望ましいといえます。長時間は入らないことです。
    • ・排便指導(力まないようにする)、便通をよくする食事、トイレ室内が寒くないことが重要です。
    • ・発作時は迅速に医療機関と連携します。

2)心筋梗塞(しんきんこうそく)

  冠状動脈が完全に閉塞し、心筋に血液が届かなくなることにより起こります。

  • 主症状

    • ・頸部(けいぶ)、肩、胸腹部にわたる不快さや激しい痛みが生じます。症状は胸部とは限りません。
    • ・呼吸困難や嘔吐を伴うことが多くあります。
    • ・痛みは30分以上から数時間続きます。
  • 生活上の障害

    • ・息切れ、動悸、疲労感、脱力感などがあります。
    • ・夜間に呼吸困難が起こることがあります。
  • 予後のリスク

    • ・心不全の急性悪化による呼吸困難、不整脈による突然死、再梗塞に注意が必要です。
  • 気をつけたいこと

    • ・痛みがおさまっても医療機関に受診することが必要です。
    • ・それ以外は狭心症と共通します。

閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)

   四肢の主要な動脈の動脈硬化が進み、狭窄または閉塞が起こることにより血液の流れが悪くなり、手足に循環障害を起こす疾患です。

  • 主症状

    • ・手足の冷感、しびれ、疼痛(とうつう)が生じます。
    • ・一定距離を歩行すると下肢が痛み、数分すると回復します(間欠性跛行(はこう))。
    • ・安静時に手足の痛みがあります。
    • ・潰瘍、壊疽(えそ)が生じます。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
  • 予後のリスク

    • ・重症の虚血による足趾(そくし)の切断が起こりえます。
    • ・突然の下肢の痛みや蒼白、脈拍の消失としてあらわれる急性動脈閉塞に注意が必要です。
    • ・致命的な血管障害への移行が起こりえます。突然の呼吸困難や意識障害などが徴候です。
  • 気をつけたいこと

    • ・内服薬(抗血小板薬、血管拡張薬)の確実な服用が必要です。病状管理に果たす役割が大きいです。
    • ・間欠性跛行があっても、運動の機会を無くさないようにします(買い物など)。
    • ・禁煙への心がけが必要です。喫煙は危険因子のなかでもリスクが高いといえます。
    • ・フットケアが大切です。日頃から足の状態を気づかい、小さな傷や変化に気づいたら受診するようにします。
    • ・全身の動脈硬化の部分症状であるため、心筋梗塞や脳梗塞にも注意が必要です。

高血圧(こうけつあつ)

   血管に強い圧力がかかり続けている状態です。高血圧の基準は、収縮期血圧(「上」と通称される)が140以上、あるいは拡張期血圧(下)が90以上で保たれている状態です。

  • 主症状

    • ・自覚症状はありません。
    • ・高血圧特有の症状はありません。
  • 生活上の障害

    • ・高血圧そのものが生活障害として現われることはありません。
  • 予後のリスク

    • ・高血圧を放置することで、動脈硬化、脳卒中、虚血性心疾患、腎不全などの発症につながります。
  • 気をつけたいこと

    • ・薬剤の継続的な内服が必要です。
    • ・肥満の予防。
    • ・塩分を控えます。
    • ・適度な運動。散歩などの有酸素運動がよく、逆に急激に力をこめる無酸素運動は危険です。
    • ・怒りや悲しみ、緊張状態などのストレスをかけない、早めに解消することが必要です。
    • ・寒い環境を避けます。また、温度差を少なくします。
    • ・心疾患や脳卒中の既往がある場合、運動は医師の許可を得ることが必要です。

糖尿病(とうにょうびょう)

  インスリンの作用の不足によって血糖値が通常より高くなってしまう病気です。インスリンを分泌する細胞がアレルギー反応により破壊され発症する1型、遺伝的素因と生活習慣により発症する2型があります。ほとんどは2型です。

  • 主症状

    • ・通常、症状はありません。
    • ・著しい高血糖になった場合は、口の渇き、多飲、多尿、体重減少、昏睡(こんすい)などが生じます。
    • ・三大合併症の「腎症」「網膜症」「神経障害」を引き起こすと、それぞれの症状があらわれます。腎症は病状が腎不全まで進行すると、夜間尿や浮腫(ふしゅ)が起こります。網膜症は視力低下です。神経障害はしびれ、疼痛、温(おん)痛覚(つうかく)の鈍麻、立ちくらみ、胃もたれ、便秘などが生じます。
  • 生活上の障害

    • ・感染症にかかりやすく、重症化もしやすくなります。
    • ・合併症の各症状からQOLが低下します。
    • ・治療法により低血糖を起こすおそれがあります。症状は初期には空腹感や動悸、発汗などが起こります。さらに低下すると、眠気や視力障害、痙攣、昏睡などが生じます。
  • 予後のリスク

    • ・合併症の腎症では、腎不全の進行による尿毒症が起こるようになり、人工透析も必要になってきます。網膜症は失明が起こりえます。神経障害は外傷や壊疽、転倒の危険性が増大します。
  • 気をつけたいこと

    • ・血糖値を適正に保つこと。インスリン注射の継続(1型)、食事の摂取方法などを検討します。
    • ・急変時(低血糖など)の対応に備えます。
    • ・フットケアで足への意識を高めます。

慢性腎不全(まんせいじんふぜん)

  腎機能が不可逆的に低下した状態です。原因になる疾患は糖尿病、高血圧、慢性糸(し)球体(きゅうたい)腎炎が多くあります。

  • 主症状

    • ・腎機能50%以下までは無症状が大半です。
    • ・初期は軽度の貧血、高血圧、夜間頻尿が起こります。
    • ・進行すると、貧血の悪化や強い疲労感が生じます。
    • ・末期は尿毒症になり、意識障害、嘔吐、呼吸困難、腹水、浮腫などが生じます。人工透析による治療が必要になります。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
    • ・末期は定期の人工透析が不可欠です。
  • 予後のリスク

    • ・腎機能の低下につれて、心疾患(心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳梗塞)の発症率が高まります。
  • 気をつけたいこと

    • ・過労や感染症は病状を悪化させやすくします。
    • ・薬剤の使用。抗生物質や解熱剤は腎機能に悪影響を与える危険性があります。
    • ・貧血の治療は重要です。合併症のリスクを下げてくれます。
    • ・血圧、血糖のコントロールが必要です。
    • ・低蛋白の食事、塩分摂取の管理が必要です。
    • ・排尿量、浮腫の観察が必要です。

消化器がん(しょうかきがん)

  身体の各所に生じ、増大や転移をして生命を脅かす病気です。消化器がんには、「消化管のがん」として食道がん、胃がん、大腸がんなど、「消化管以外のがん」として肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、胆道がんなどがあります。

  • 主症状

    • ・いずれのがんも、早期には無症状の場合が多いです。
    • ・食道がんは嘔(おう)気(き)、嚥下(えんげ)困難、嚥下痛、吐血などが起こります。胃がんは嘔気、嚥下困難、吐血、腹痛、腹水、タール便などが起こります。大腸がんは嘔気、腹痛、便秘、下痢、下血などが起こります。
    • ・消化管以外のがんの多くは、高度に進行してから症状が現れます。肝臓がんは腹痛、腹腔内出血によるショックなどが生じます。膵臓がんは黄疸(おうだん)、吐下血、腹痛、背中の痛みなどが生じます。胆道がんは黄疸、腹痛などが生じます。
    • ・転移後は、転移先の臓器の症状が重なります。
  • 生活上の障害

    • ・上記の疼痛、不快さ。また、行動力や気力が減退します。
    • ・進行に伴い、症状は局所から全身に広がっていきます。
    • ・根治治療が困難な場合、生きる意欲を失うことにつながります。
  • 予後のリスク

    • ・根治治療を受けない限り、進行に差はありますが病状は悪化します。
  • 気をつけたいこと

    • ・疼痛のコントロール。どの程度の痛みを感じているのか、把握に努めます。
    • ・薬の内服が困難になっていないか確認します。
    • ・患者、家族が望む治療、終末の迎え方を検討します。

前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)

  加齢とともに前立腺が肥大する病気です。

  • 主症状

    • ・排尿困難感が生じます(勢いがない、時間がかかる、力む必要がある、尿切れが悪い)。
    • ・残尿感があります。
    • ・頻尿、夜間尿があります。
  • 生活上の障害

    • ・尿失禁。特に、尿意を伴う切迫性尿失禁、残尿があふれ出る溢流性(いつりゅうせい)尿失禁などがあります。
  • 予後のリスク

    • ・膀胱(ぼうこう)留置カテーテルを導入している場合、尿路感染症の発症のおそれがあります。
    • ・薬剤の使用等による残尿量の増大や尿閉(にょうへい)のおそれがあります。尿閉には緊急の導尿が必要です。
  • 気をつけたいこと

    • ・安易におむつを着けず、排尿状況(時間、量、尿意の有無など)を確認し、トイレ介助等に結びつけます。
    • ・排尿障害は、脳血管障害や心疾患、腎不全、神経変性疾患などでも起こります。

摂食・嚥下障害(せっしょく・えんげしょうがい)

  加齢や脳血管障害、パーキンソン病などの疾患により、食べ物の咀嚼や嚥下に障害がある状態です。

  • 主症状

    • ・物を飲み込むのが困難になります。
    • ・飲み込みの際にむせたり、咳き込んだりします。
    • ・朝方の咳き込みが多いです。
    • ・喉や胸につまった感じがあります。
    • ・食べ物が口の中で引っかかったり、残ったりします。
    • ・食べるのに時間がかかります。
    • ・食べ物が口の中に逆流したり、吐いたりします。
    • ・口が渇きます、または逆に唾液(だえき)が多くなります。
  • 生活上の障害

    • ・唾液や食べ物が気管に入り(誤嚥(ごえん))、窒息や誤嚥性肺炎を起こす危険があります。
  • 予後のリスク

    • ・口の中が不衛生な状態で誤嚥を起こした場合、重症の肺炎に至るおそれがあります。
  • 気をつけたいこと

    • ・高齢者の場合、嚥下反射や咳反射が低下しているため、誤嚥を起こしてもむせないことがあります(不顕性誤嚥)。誤嚥のサインは発熱、脱水、声の変化などです。
    • ・誤嚥予防のため、食事の内容は半固形物(おかゆ、ゼリーなど)が望ましいです。また、可能であれば食事は座位でとります。
    • ・口腔ケアで口内を衛生的に保ちます。
    • ・生活リズムを整えます。覚醒状態の向上により、誤嚥の危険性は低下します。
    • ・噛むことや会話することは、嚥下リハビリにつながります。
    • ・誤嚥すると必ず肺炎になるわけではなく、予防するには栄養状態や感染症に注意し、虚弱状態に陥らせないことが重要です。

脳血管障害(のうけっかんしょうがい)

   脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患の後遺症として多様な病態をあらわす障害です。

  • 主症状

    • ・受傷した脳の部位、重症度により障害やその重なり方は異なります。以下は代表的なものです。

      @片麻痺。嚥下機能の低下、失語症、知覚障害、視野障害を伴うことも多くあります。

      A高次脳機能障害。失語、失認、失行、同名半(どうめいはん)盲(もう)、皮質(ひしつ)盲(もう)が症状です。

      • ・失語―言葉の理解も表現もできない、どちらかができない、復唱はできる、復唱だけできない、など多様な症状があります。
      • ・失認―触った感覚はあるが物体を認識できない、非言語性の音(鍵がガチャガチャ鳴る音や鳥の鳴き声)の識別が困難などの症状があります。
      • ・失行―衣服の着脱が困難、物を組み立てるなどの作業ができない、箸と茶碗を持って食事できない、など多様な症状があります。
      • ・同名半盲―右(左)半分が見えません。
      • ・皮質盲―光を感じることができません。

      B感覚障害。体性感覚(皮膚の感覚)、内臓感覚(吐き気や痛みなど臓器の感覚)、特殊感覚(視覚、聴覚、味覚など)に異常が生じます。

      C脳血管性認知症。認知機能障害を起こします。血管障害のタイプにより複数の病型があります。

  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
  • 予後のリスク

    • ・急性期後のリハビリの遅れから身体機能の回復度合をせばめます。
    • ・維持期の症状を正しく把握できず、事故(転倒、火傷など)につながります。
    • ・コミュニケーションの不良から他の疾患の発症や悪化のサインを見逃します。
  • 気をつけたいこと

    • ・一人ひとり、症状は異なります。
    • ・障害の特徴や程度を正しく把握します。
    • ・個々の特徴に沿って生活環境を整えます。
    • ・周囲からは見えない障害があることを意識し、できないことを責めないようにします。
    • ・本人のやるせない気持ちの理解に努めます。

慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)

  気管支、細気管支、肺胞などに慢性の炎症が生じ、空気の出し入れに障害が起こる疾患です。

  • 主症状

    • ・咳、痰、動いたときに呼吸困難が起こります。
    • ・症状は徐々に進行します。悪化すると、安静時にも呼吸が苦しくなります。
  • 生活上の障害

    • ・動くと息苦しいため、行動が制限されます。行動範囲がせばまります。
    • ・不安な状態に陥りやすくなります。
  • 予後のリスク

    • ・感染症による急性増(きゅうせいぞう)悪(あく)。
    • ・在宅酸素の場合、酸素の過剰投与による意識状態の悪化が起こりえます。
  • 気をつけたいこと

    • ・禁煙。たばこが原因の90%といわれます。
    • ・肺の組織が壊れているため、感染症を起こしやすくなります。手洗いやうがいの励行、インフルエンザワクチンの接種などで予防します。
    • ・不安感が強いことが多く、精神面のサポートは不可欠です。

喘息(ぜんそく)

  慢性的に気道に炎症が起こっている状態です。ほこりや気温の変化などの刺激が加わると気管支が狭くなり、発作を起こします。

  • 主症状

    • ・呼吸がゼーゼー、ヒューヒューします。
    • ・咳や痰が続きます。
    • ・会話や歩行程度で呼吸が苦しくなります。
    • ・重篤な発作では呼吸困難が生じます。
  • 生活上の障害

    • ・喘息症状を誘発する環境の生活に順応するのが難しくなります。ほこりやペットの毛、室内外の気温差、季節などがリスクにつながります。
  • 予後のリスク

    • ・喘息発作。
    • ・感染症の併発が起こりえます。
  • 気をつけたいこと

    • ・一人ひとり異なる症状の原因を把握し、症状を起こしにくい環境をつくります。
    • ・軽症のとき、症状のないときも治療を継続し、体質改善に取り組みます。
    • ・梅雨時や冬場は症状が出やすくなります。
    • ・手洗いやうがいなどで喘息を悪化させる感染症を予防します。

肺炎(はいえん)

  肺に細菌やウイルスが感染し、呼吸困難や発熱、咳などを引き起こす疾患です。誤嚥により起こるものは、誤嚥性肺炎といいます。

  • 主症状

    • ・呼吸困難、発熱、咳、痰です。
    • ・高齢者の場合、重症化しやすくなります。
  • 生活上の障害

    • ・誤嚥性肺炎の場合、発症後は絶食と抗生剤による治療が行われます。入院治療も多いです。
  • 予後のリスク

    • ・慢性の呼吸器疾患、心疾患、腎不全、糖尿病、肝機能障害などを患っている場合、病状悪化の危険性が高くなります。
  • 気をつけたいこと

    • ・外出後の手洗い、うがいの励行。家族も心がけます。冬場は人ごみを避けます。
    • ・食欲がない、元気がない、脱水などは発症のサインとして疑います。
    • ・肺炎の原因として多い肺炎球菌のワクチン接種が予防に有効です。

パーキンソン病(ぱーきんそんびょう)

  脳内の神経伝達物質であるドーパミンが不足し、運動障害等の神経症状が徐々に進行していく疾患です。

  • 主症状

    • ・振戦(しんせん)(手足のふるえ)があります。片側の手足から始まり、病状の進行とともに両側に広がっていきます。
    • ・寡動(かどう)があります。動作を開始するのに時間がかかり、動きも緩慢になります。手指の細かい動きなどに現れます。顔面に現れると表情が乏しくなります。
    • ・筋固縮があります。関節の曲げ伸ばしなどを他者が試みたときに抵抗を感じます。抵抗には持続的な抵抗や断続的な抵抗のくり返しなどが生じます。
    • ・姿勢反射障害があります。身体の後方へのバランスが悪く、立位姿勢が前傾します。突進するように歩きます。踏ん張りがきかず転倒しやすくなります。
    • ・その他、自立神経症状として、起立性低血圧、発汗障害、便秘などが生じます。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
  • 予後のリスク

    • ・病状の進行とともに、立ち上がりや歩行時に転倒しやすくなります。
    • ・薬の効果が切れる「オフ」の状況(薬の効果が短くなる、効果が現れたり切れたりする)での事故(入浴中の溺死など)が起こりえます。
    • ・寝たきりになると、呼吸器や循環器の機能低下、感染、褥瘡が生じやすくなります。
  • 気をつけたいこと

    • ・発病初期は、動作に時間はかかっても本人の力で行ってもらう努力をサポートします。
    • ・転倒の危険を防ぐため、手すりの設置や段差解消など。浴室など滑りやすい場所に注意します。
    • ・薬の効き方を日々モニタリングし、服用方法を医師と再検討していきます。食事や入浴時に効果が現れるようにする、薬物効果に合わせた生活リズムをつくるなどが必要です。

脊髄小脳変性症(せきずいしょうのうへんせいしょう)

  運動失調を主症状とする神経変性疾患の総称です。非遺伝性と遺伝性があります。代表的なものは、晩発性(ばんはつせい)皮質性(ひしつせい)小脳(しょうのう)萎縮症(いしゅくしょう)、多系統(たけいとう)萎縮症としてオリーブ橋(きょう)小脳萎縮症があります。

  • 主症状

    • ・小脳性の運動失調、脊髄性の運動失調があります。厳密には個々の疾患により異なります。
    • ・一般症状としては、歩行の障害、手足がうまく動かせない、姿勢の保持が難しい、ろれつが回らない、眼振(がんしん)(眼球が揺れる)、測定障害(物の位置を確認できない)などの症状があります。
  • 生活上の障害

    • ・症状全般にみられる運動失調=運動が円滑に行えないことによる不自由、障害があります。
  • 予後のリスク

    • ・病状の進行が緩やかで、その時点の障害にあわせた生活スタイルや介護の体制を比較的とりやすいといえます。
    • ・障害が高度に進むと、嚥下障害や呼吸器障害、排尿障害などが生じてきます。
  • 気をつけたいこと

    • ・不自由さを改善する工夫を積極的に試みていきます。生活の質を向上できます。
    • ・生活動作訓練を継続することが、状態の維持に役立ちます。

シャイ・ドレーガー症候群(しゃい・どれーがーしょうこうぐん)

  脊髄小脳変性症の項で紹介した多系統萎縮症の一疾患です。自律神経の障害を中心としながら、パーキンソンニズム(パーキンソン病と同様の症状)と小脳性の運動失調が加わり進行していく疾患です。

  • 主症状

    • ・自律神経症状として、起立性低血圧と排尿障害が顕著にみられます。その他、発汗や唾液分泌の障害、便秘、インポテンツなどが起こります。
    • ・パーキンソンニズムとしては固縮、寡動がよくみられます。小脳性の運動失調は歩行のふらつきなどです。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状です。特徴的には立ちくらみや食事中の失神、排尿障害による尿失禁などがあります。
  • 予後のリスク

    • ・起立性低血圧による転倒です。また、しだいに起き上がれなくなり、寝たきりになります。
    • ・発症から7〜8年で死亡する例が多いです。
  • 気をつけたいこと

    • ・起立性低血圧の備えとして、生活動作(起き上がりなど)の指導が必要です。例えば、弾性ストッキングの使用です。
    • ・最適な対症療法をとれるよう、症状とその変化の様子を把握します。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)

  脳幹脊髄の下位運動ニューロンが侵され、筋肉の萎縮や筋力低下をきたす疾患です。

  • 主症状

    • ・手足や頸部の筋萎縮、筋力低下が起こります。舌の萎縮、安静時の筋肉の細かな収縮などが起こります。
    • ・進行すると、嚥下障害や言語障害、呼吸不全などが生じます。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
    • ・運動ニューロン以外は変性せず、感覚や自律神経は障害されません。意識や感覚が明瞭なぶん、本人の精神的なつらさに大きいものがあります。
  • 予後のリスク

    • ・進行が速く、発症から3〜5年程度で自力呼吸ができなくなります。延命には人工呼吸器の装着が必要となります。
  • 気をつけたいこと

    • ・歩行障害から呼吸の障害、寝たきりといった経過を急速にたどることもあり、訪問系のサービスや福祉用具の導入は先手を意識して対応していきます。
    • ・進行性で予後が不良であることに対する患者や家族の気持ちを察し、当事者たちが望む療養環境をつくります。

褥瘡(じょくそう)

  皮膚が当たる部位の毛細血管の血流が途絶え、皮膚の細胞が壊死する疾患です。

  • 主症状

    • ・皮膚の発赤(ほっせき)、腫脹(しゅちょう)(血液成分の貯留)、水疱(すいほう)、表皮剥離(びらん)、潰瘍、壊死が生じます。
    • ・発生しやすいのは、筋肉や皮下脂肪が少ない骨の突出した部分です。肩甲骨部、仙骨部、大転子(だいてんし)部(体の側面の太腿上あたり)、座骨結節部、踵(しょう)骨(こつ)部(かかと)です。
    • ・疼痛はある場合とない場合があります。
  • 生活上の障害

    • ・介護におけるより一層の労力や医療処置が必要となります。
  • 予後のリスク

    • ・悪化につれて、感染しやすくなります。
    • ・損傷が筋肉や骨にまで達し、骨が飛び出した状態になります。
    • ・体力の低下や他の疾患の引き金になります。
  • 気をつけたいこと

    • ・日頃から皮膚の赤みの有無を確認します。
    • ・他の基礎疾患の病状改善に努めます。全身状態がよいと褥瘡の予防につながり、発症したときも快方へ向かいやすくなります。
    • ・栄養状態を良好にします。
    • ・皮膚にかかる圧力を分散します。定期的な体位変換、症状に合わせた除圧マットなどの使用が必要です。
    • ・本人や介護者の努力が報われるよう、介護に適した居室環境であることが必要です。冬場は末梢循環障害を起こしやすいため、室温にも注意が必要です。

疥癬(かいせん)

  ヒゼンダニというダニの一種が皮膚に寄生して生じる激しいかゆみを伴う皮膚病です。通常疥癬と感染力の強いノルウェー疥癬があります。

  • 主症状

    • @通常疥癬

      • ・指の間や手根部(手のひらの手首近く)、下腹部、大腿部など皮膚の柔らかい部位に激しいかゆみを伴った小さな発疹が多発します。外陰部に小結節が多発します。
      • ・皮膚の角質がモグラのトンネルのように盛り上がる「疥癬トンネル」ができます。
      • ・添い寝など長時間の接触で感染します。抱きかかえるような短時間の接触は問題ありません。
      • ・治療が終わっても、アレルギー反応でかゆみがひどいことがあります。

    • Aノルウェー疥癬

      • ・皮膚全体が赤くなります。
      • ・発生部位が通常疥癬より広範囲で、耳や頭部にも広がります。
      • ・大量の鱗屑(りんせつ)(皮膚の剥げたもの)が出ます。
      • ・体の骨ばった部位、摩擦を受けやすい部位に厚い角質が付着します。
      • ・かゆみを訴えない場合があります。
      • ・直接感染だけでなく、患者の衣類や寝具、ほこりとなった角質片が舞い飛ぶことによっても感染します。

  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
  • 予後のリスク

    • ・発見の遅れや放置による病状の悪化が考えられます。リンパ節炎などの合併症の発症もあります
    • ・ノルウェー疥癬の場合、人を介しての二次感染や、施設内では集団感染のおそれがあります。
  • 気をつけたいこと

    • ・潜伏期間が1か月ほどあるため、施設間などを移動するときは情報を密にします。
    • ・皮膚科専門医でも見つけにくい例があり、かゆみがない場合は角化型(かくかがた)の水虫、爪水虫などと判断され放置されやすくなります。
    • ・二次感染を防ぎます。介護に携わる人は手洗いを励行します。ノルウェー疥癬の場合は、リネン類ははたかず速やかに袋に入れます。
    • ・基礎疾患の病態が不良など、免疫力が低下している人は感染しやすいため、施設系サービスを利用の際には念頭におきます。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

  水疱瘡(みずぼうそう)に罹ると、治癒後も病因の水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスは神経節に封じ込められて潜伏します。帯状疱疹は何らかの理由で体力低下をきたしたとき、このウイルスが再び活動することによって発症する皮膚病です。

  • 主症状

    • ・はじめは皮膚を帯状にかゆみやチクチクする痛みが出ます。
    • ・やがて症状が出た部位に赤い発疹や水疱ができます。胸、腹、背中、手足、顔などです。
    • ・皮膚症状と多少前後して、強い痛みがあらわれます。
    • ・皮膚症状は約1か月ほどで治まります。痛みはしつこく残ることがあります。
  • 生活上の障害

    • ・疼痛があります(個人差あり)。痛みの強さとともに神経痛、知覚過敏、脱力など多様です。
  • 予後のリスク

    • ・皮膚症状が治まった後も痛みが続きます(疱疹後神経痛)。それによる活動性の低下が起こりえます。
    • ・発症部位による悪影響があります。眼の周囲では結膜の炎症などが生じます。
    • ・顔面神経麻痺、耳鳴りなどの後遺症が起こりえます。
    • ・まれに中枢神経(脳、脊髄)障害が生じます。
    • ・激しい痛みによる急死が起こりえます。
  • 気をつけたいこと

    • ・早期治療が後遺症を抑制するため、主症状の訴えがあったときは発症を疑います。
    • ・急性期の治療期間中は安静第一です。
    • ・心疾患など循環器系の疾患をもつ人は、特に疼痛の状況をていねいに確認します。

大腿骨頸部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)

  足のつけ根の骨が折れる骨折です。高齢者の四大骨折の一つです。他の三つは、腰椎の一部がつぶれる「腰椎圧迫骨折」、手首の骨が折れる「橈(とう)骨(こつ)遠(えん)位端(いたん)骨折」、腕の付け根の骨が折れる「上腕骨頸部骨折」です。

  • 主症状(発症のサイン)

    • ・転んで足のつけ根を痛がります。
    • ・状況としては、横に倒れお尻の横を打ちます。
  • 生活上の障害

    • ・四大骨折のなかで最も生活に与えるダメージが大きいです。治療の原則は入院し手術することです。
    • ・平均入院期間は約2か月です。
    • ・急性期治療の後、他の疾患やリハビリの状況によって自立歩行、杖歩行、寝たきりとなります。
  • 予後のリスク

    • ・寝たきりへの移行です。
  • 気をつけたいこと

    • ・退院後の過度の病人扱いは禁物です。早期に以前の生活に戻すことを意識します。
    • ・サービス利用も含め、リハビリを取り入れて回復の軌道に乗せます。
    • ・生活環境を整えます。段差解消や手すりの取り付け(住宅改修)、杖や歩行器(福祉用具)などを導入します。
    • ・本人に“治っている”“以前どおりにできる”ことをよく伝えます。

変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)

  膝の軟骨がすり減り、膝が痛くなることです。厚さ3〜4ミリの軟骨は加齢とともに薄くなっていきます。高齢者の関節症のなかで最も発症頻度が高いです。

  • 主症状

    • ・発症初期は、動き始めに痛み、動いてしまえば痛みはなくなります。
    • ・症状の進行に伴い、歩行時などに痛むようになります。しだいに痛みが増していきます。
  • 生活上の障害

    • ・痛みのため足を引きずって歩く、歩くと体が左右に揺れる、靴下が履きにくい、足の爪切りが困難、正座ができない、階段の昇り降りや乗り物の乗降が困難、和式のトイレが使えない、などの障害があります。
  • 予後のリスク

    • ・痛みから日常生活動作全般が億劫になり、動く機会が減ると、膝周囲の筋肉が落ちて足腰が弱ります。寝たきりへつながるおそれがあります。
  • 気をつけたいこと

    • ・薬物療法(痛みを抑える)、物理療法(膝を温めるなど)、運動療法(脚上げ体操など)を継続し、症状を良好に保つことです。
    • ・自分でできることは自分でしてもらいます。それが治療にも機能の維持にもなります。
    • ・膝に負担のかかる肥満を防止します。
    • ・家屋のバリアフリー化、杖やシルバーカーの導入を検討します。

後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)

  後縦靭帯(脊柱(せきちゅう)管内を縦に走る靭帯)が硬くなり、その後ろにある脊髄神経が圧迫されることでさまざまな障害が起こる疾患です。

  • 主症状

    • ・初期は肩こりや頸部の不快感から始まります。
    • ・しだいに手のしびれ、こわばり、痛みなどが生じてきます。
    • ・進行すると、字が書きづらい、箸が使いにくい、歩きづらい、尿が出づらいなどが生じてきます。
    • ・外傷により重症化しやすいのが特徴です。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
  • 予後のリスク

    • ・脊椎に強いショックが加わることで、四肢麻痺などを起こす危険性があります。一回の転倒で寝たきりになってしまうこともあります。
  • 気をつけたいこと

    • ・転倒防止に努めます。屋内の手すりの設置、段差の解消、杖やシルバーカーの使用を検討します。
    • ・肩がこっても、首をグリグリ回さないことです。脊髄神経の外傷につながります。ストレッチはリハビリスタッフの指示を守り、ゆっくり行うのが原則です。

脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)

  脊髄神経の通り道である脊柱管が狭くなり、さまざまな障害を引き起こす疾患です。障害は狭窄する部位により、頸部脊柱管狭窄症と腰部脊柱管狭窄症が代表的です。

  • 主症状

    • ・頸部脊柱管狭窄症は肩こりや頸部の痛み、上肢から手足にかけてのしびれがあります。悪化すると、手の力が萎える、足のふらつき、尿切れが悪くなるなどの症状が生じます。
    • ・腰部脊柱管狭窄症は、腰やお尻、ふくらはぎ、すねの痛み、しびれ、下肢筋力の低下などの症状があります。典型的な症状として、歩くと腰や足に痛みが出始め、立ち止まったりしゃがんだりすると痛みが和らぎます。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状が生活障害につながります。
  • 予後のリスク

    • ・痛みや痛くなる不安から歩く気力を失いがちで、下肢筋力の低下につながります。
    • ・後屈(背を反らす)は脊柱管をさらに狭くする危険があり、病状を悪化させます。
  • 気をつけたいこと

    • ・上手に歩いて運動量を落とさないことです。前屈姿勢で歩くと痛みが軽く、歩ける距離も延ばせます。杖やシルバーカーは前屈姿勢を保ちやすくなります。
    • ・痛みが強いときはコルセットを使用します。カイロや入浴で温めるのも効果的です。

関節リウマチ(かんせつりうまち)

  ゆっくりと確実に関節破壊が進む疾患です。体のいずれの関節にも起こります。女性に多い疾患です。

  • 主症状

    • ・関節症状として、関節の痛み、腫れ、手指のこわばり、炎症による関節破壊、関節の機能障害などがあります。
    • ・その他に、肘やアキレス腱の皮下結節、腱鞘炎、眼の血管炎、貧血、脱力感などが起こります。
  • 生活上の障害

    • ・上記の諸症状による生活動作の制限があります。
    • ・関節破壊のため、介助に専門的な知識、技術が必要とされます。
  • 予後のリスク

    • ・関節破壊が高度に進行した場合(ムチランス型)、本来の関節が消失して脱臼を起こします。寝たきりへ移行しやすくなります。
  • 気をつけたいこと

    • ・服薬管理と定期受診が必要です。薬剤により副作用もありますが、服用をやめることで病状の悪化など、より深刻な状態に陥る危険があります。
    • ・症状を正しく見極め、状態に合った介助方法を選択します。
    • ・リハビリは身体機能の維持に重要です。ただし、医療職と十分に連携した上で行います。
    • ・病気とのうまいつき合い方、当事者の仲間づくりのため、患者会「日本リウマチ友の会」等への入会を勧めます。

白内障(はくないしょう)

  レンズの役割を果たす水晶体が白色や黄白色に混濁し、視力を障害する疾患です。多くは加齢に伴って生じる老人性で、70歳以上の高齢者のほとんどにみられます。

  • 主症状

    • ・かすんで見えます。
    • ・まぶしく感じます。
    • ・暗い場所のほうがよく見えます。
    • ・眼が疲れます。
    • ・視界全体にモヤがかかります。
  • 生活上の障害

    • ・進行度によります。物が見えづらいこと、日中のまぶしさなどの不快さがあります。症状が一定せず、眼鏡による矯正も完全には難しいといえます。
  • 予後のリスク

    • ・進行が早い場合、手術をしないと失明や眼の合併症を生じます。
    • ・手術の成績は一般的に良好ですが、まれに術後に眼内に炎症を起こします。
    • ・見えづらさから行動意欲の低下、転倒が起こりえます。
  • 気をつけたいこと

    • ・不快さや見えづらさを「年のせい」と考えて訴えない場合、病状の悪化や転倒の危険が高まります。眼の見え方を訊ね、歩行の変化の有無も確認します。

緑内障(りょくないしょう)

  眼圧(眼球内の液体の圧力)が上がり視神経が損傷し、視野が狭くなっていく疾患です。自覚症状に乏しく、失明に至ることも多くあります。

  • 主症状

    • ・末期までは自覚できる症状はありません。
    • ・しだいに視野が狭くなっていきます。ただし、視野が狭まったことに気づきにくいです。
    • ・失われた視野は戻りません。
  • 生活上の障害

    • ・末期まではほとんどありません。末期に至ると視野障害を起こします。
  • 予後のリスク

    • ・生活に不自由を感じないため、治療が遅れます。その結果、失明に至るおそれがあります。
  • 気をつけたいこと

    • ・眼圧をコントロールする治療を継続します。
    • ・血縁者に緑内障患者がいる場合、定期的な眼底検査を行うのが理想です。