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【山梨県】

終末期「もしバナ」ゲームで 医療やケア語り合う

山梨日日新聞 2018年12月26日(水)
「もしバナゲーム」を体験して、意思決定支援の重要性を語り合う参加者=山梨県立大池田キャンパス
「もしバナゲーム」を体験して、意思決定支援の重要性を語り合う参加者=山梨県立大池田キャンパス

 近年、医療現場で注目されている終末期の医療やケアについて事前に患者と家族、医師らで話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning、ACP)」。意義を伝えるため、ACPの考え方を理解するカードゲーム「もしものための話し合い もしバナゲーム」が全国の介護施設などで人気を集めている。来県した、「もしバナゲーム」の普及活動に携わる一般社団法人「iACP」(千葉)共同代表で亀田総合病院疼痛・緩和ケア科医長の蔵本浩一さんに、ACPの考え方やカードの利用法などについて聞いた。

 一度は人工呼吸器で一命を取り留めた女性患者。ただ夫には「もうあんな苦しい思いをする人工呼吸器は付けたくない」と告げていた。ある日発作を起こして病院に運ばれた。家族に対して、医師が再度、人工呼吸器を装着させるか決断を迫る。
 妻の言葉を聞いていた夫は「付けてほしくない」と話すが、離れて暮らす子どもたちは「母には長生きをしてほしいので(人工呼吸器)を付けてください」と主張する。患者の本心は、会話ができずに確認できない−。
 この状況は、ACPが必要だった典型的な例。蔵本さんらによると、ACPは2000年代から米国で広がり始めた。患者が意思決定できなくなった場合に備え、本人の価値観や人生の目標、将来の医療ケアに関する意向を話し合って共有する。近年では病気にかかっていない若年層にも広がっているという。
 患者本人の意思、判断がしっかりと確認できておらず、時間が限られている差し迫った状況下では医療関係者が判断を誘導せざるを得ない場合もあった。だがACPを活用したことで、患者の意向に沿った最期が迎えられるようになった。患者の想定と異なる病状となった状況でも、価値観を共有することで代理決定者の葛藤が軽減する可能性もあるという。
 ただし、当事者が元気なうちに人生の最期の在り方について話しておくのはなかなか難しい。話し合う場をつくるきっかけにしてもらおうと「もしバナゲーム」が米国で開発された。ゲームは、「『治療困難な病気で』『生命の危機が迫っているとき』『あと半年から1年の命と言われたら』あなたは何を大切にしたいですか?」という設定で進行。「私が望む形で治療やケアをしてもらえる」「私の思いを聴いてくれる人がいる」「あらかじめ葬儀の準備をしておく」などと記されたカードを選び、選んだ理由を深く話し合っていく。
 iACPは、米国で開発された「もしバナゲーム」を翻訳。16年6月に販売し、18年11月末現在で9千セット以上が売れ、医療や福祉関係者の勉強会などで活用されている。
 蔵本さんは、ACPについて「誰かの価値が優位に立つのではなく、患者と家族、医療関係者が多様な価値観を理解して共有し、『落としどころ』を探ることが大切」と強調。その上でゲームの活用について、「人生の最期の在り方について、『縁起でもないから』という理由で考えるのを避けていても、カードを使えば、ともに自然に話し合うことができる」という。
 「ACPは強制されるものではないが、自分や大切な誰かの『もしも』を元気なうちから話し合う意義を考え、『今をより大切に生きる』きっかけにしてほしい」と話している。