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【高知県】

外国介護人材じわり浸透 高知県内、実習生が1年で14人

高知新聞 2020年3月23日(月)
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「ヘルシーケアなはり」で入所男性の食事を手伝うダシドルジ・バヤルマーさん。「土佐弁に苦労はしますが慣れてきました」(奈半利町乙)=提供写真

 外国人技能実習制度の対象職種に介護職が追加されたのが2017年秋。高知県内でも昨年3月の1例目を皮切りに、徐々に実習生の採用事例が増えている。人手不足に悩む業界で外国人材はこれから定着していくのか―。

「質」に手応え「数」は苦戦
 「今日は体調はどうですか? 痛むところはないですか?」

 約120人が利用する香南市の老人保健施設「あいの里」。モンゴル人実習生のサンジャミャタブ・ソロンゴさん(26)が、ベット上の高齢者に声をかけ、腰と肩に手を回して起床を手伝う。

 県内初の介護実習生として昨年3月に来高してから1年。今では排せつや入浴の介助から体操の指導や食事量・服薬のチェックまで幅広い業務を任されている。施設利用者からは「(モンゴルの)モンちゃん」と呼ばれ、「モンちゃんじゃないと嫌だ」と指名が入る溶け込み具合だ。

 帰宅後も日本語や介護の勉強に励む姿に、施設担当者は「期待以上の働きぶり。とても真面目で、信頼できます」。技能実習制度の在留期間は最長5年。「できればずっと残ってほしい」と期待を寄せた。

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 今年2月時点で、県内の介護事業所で働く外国人材は、経済連携協定(EPA)に基づく労働を含めて40人。うち技能実習生は、インドネシアとモンゴルから14人おり、7事業所で働いている。また、この3月中旬に新たにベトナムから12人が来高して就業準備を進めている。

 介護職を技能実習に追加する上で議論になったのは、それまで単純な労働が多かった実習生制度で、初の対人サービス業になること。日本語能力に起因したサービス劣化を懸念する声もあった。

 実際、県内の実習生たちのサービスの質はどうか。受け入れ業務などを担う「高知介護サービス協同組合」(南国市)の今村義男さん(71)は「自分の知る限りでは、おおむね真面目で意欲的」との評価だ。

 言葉の壁に関しては「確かに、研修は乗り越えても現場では困惑する実習生もいる」と今村さん。安芸郡奈半利町の老健施設「ヘルシーケアなはり」で昨年11月から働くモンゴル人実習生、ダシドルジ・バヤルマーさん(42)は「日本語は難しい。土佐弁は特に」と苦笑する。

 一方で「周囲に助けてもらっている」とし、施設担当者も「こちらのフォローや学習支援でカバーできる水準」と強調する。実習生へのフォローが手厚いのは、業界の人手不足がそれだけ深刻で「特に郡部の施設にとって実習生は貴重な労働力だから」だ。

 高知介護サービスによると、実習生を求める事業所は多く、1年目の受け入れ目標は50人に設定した。まだその半分以下にとどまる状況に「残念」と肩を落とす。希望しても日本語のレベルが水準に届いていない、送り出し機関との連携がスムーズに進まなかったことなどが背景にあるという。

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 高知県にとっては、実習生の受け入れ、さらに定着を促す上で、都会との賃金格差も立ちはだかる。実習生らが賃金の高い都会に流れるのは他の職種と同様だという。

 介護サービス協の今村さんは「生活費が安く、職場近くに住めば通勤も楽といったメリットもある。それらをどうPRできるか」。県も「自然や人情だけでは外国人に響かない。高知が進めているノーリフティングケア(福祉用具を用いた介護)など、先進的な取り組みをPRして呼び込みたい」と話す。

 実習生の定着へ、個別事業者ごとに工夫も凝らす。

 「―なはり」ではモンゴル人、インドネシア人実習生計4人を受け入れ、近くのシェアハウスで暮らしてもらっている。1人ずつ6畳ほどの個室があり、1階のダイニングに4人が集まればおしゃべりに花が咲く。「職員さんも地域の人も優しくて、楽しく働けています」とは、今年2月から働くインドネシア人のフェッビ・フリネラ・サリさん(28)。イスラム教徒の習慣にも配慮し、礼拝の環境なども整えている。

 団塊の世代の高齢化で、さらにマンパワー不足が進むとされる介護業界。外国人材が不可欠として、県も来年度、施設や日本語学校などで構成する人材確保の検討会を立ち上げるとしており、さらに浸透は進みそうだ。(谷沢丈流)