ニュース
介護

【青森県】

高齢者に安心与えたい/青森・デイサービスの利用減

東奥日報 2020年6月17日(水)
ニュース画像
休憩時に利用するテーブルには透明の間仕切りを設置し、飛沫感染を防ぐ=青森市青柳のスマイル青柳

 「コードをつかみながら、ゆっくり立ち上がってみましょう」

 6月2日、青森市青柳の通所介護(デイサービス)「スマイル青柳」。お年寄りたちがスタッフの指導の下、レッドコードと呼ばれる天井からつるしたひも状のサポート器具を使って、座った椅子から立ち上がる動作訓練に励んでいた。

 同施設はリハビリに特化した短時間デイサービス。「ケアスマイル青森」(大里洋志代表取締役)が青柳を含め、市内3カ所で同様の施設を運営する。同社によると、新型コロナウイルスの感染が青森県でも広がった3〜4月は利用者が大きく落ち込んだ。

 デイサービスは利用者とスタッフの密接が避けられない場面もあるが、動作訓練のほか食事や入浴といった日常生活に不可欠な支援もあり、各都道府県は休業要請の対象外とした。

 高齢者は感染により重症化や死亡リスクが高い「感染弱者」とされる。「家族に通所を反対されたり、外出に後ろめたさを感じたりして、最終的には通いたくても諦める人もいた」と大里代表。同社の3施設の定員は計約100人だが、利用率(登録者に占める実際の通所者)は通常の85%から65%まで20ポイント減少、売上高に響いた。

 大里代表が最も危惧したのは、売上高の減少以上に利用者の運動機能低下だ。食事や入浴サービスに比べて、リハビリは真っ先に削られやすいという。中断によって立ち上がりや歩行、姿勢保持といった日常生活の動作能力が低下し、転倒によるけがのリスクの増大、認知症を発症している場合は進行の恐れもある。

 右上半身が不自由で、約10年間、同社の施設に週2回通い続けている青森市の岩田紘さん(76)。県の外出自粛要請に伴い4月下旬から1週間、初めて休んだ。「剣道に野球と若いころはスポーツを楽しみ、体を動かすことが好きだったので家でじっとしているのがつらかった」と話す。

 厚生労働省はコロナの感染拡大を受け、デイサービスでも訪問看護を特例として容認。同社も訪問指導を始めたが、自宅への入室を拒む利用者もいた。そのため、訓練方法を分かりやすく写真で表したリーフレットを配り、電話で助言するなど、利用者が体を動かし続けられるよう支援した。

 県内の休業要請が解除された5月の大型連休明けから、利用者は戻りつつある。大里代表は「利用者が安心して通えなければ感染の第2波が来たときに同じ状況になる」と懸念する。

 同社の感染防止対策は、利用者が休憩時に使うテーブルに透明の間仕切りを設置するというもの。3施設とも厚労省が定める1人当たりの施設設置基準より約2倍の広さを確保し、窓も多いため適切な換気で密集、密閉を避けられる。送迎に使う車内では運転手、利用者ともフェースシールドを着用する。

 同市の吉田美代さん(86)は、約3年前から続ける動作訓練のおかげで椅子から立ち上がれるようになり、生活のレベルが上がった。「リハビリを休んでまた立ち上がれなくなったらと思うと怖い。施設内が3密だったら心配だけれど、ここでは安心して体を動かせる。1人暮らしなので、みんなと会えるのも楽しみの一つ」と笑った。

 大里代表は力を込める。「高齢者が日常動作の幅を広げることは生活の質の向上、生きがいにつながる。コロナで利用者減少に苦しんだけれど、感染防止対策の徹底を周知できれば、新しい利用者の獲得につながるかもしれない。ピンチをチャンスに変えたい」