介護施設に導入されたインカム。情報共有の速度が上がり、現場では業務効率の向上を実感していた=南相馬市・福寿園
介護職員の負担軽減に向け、県内で情報通信技術(ICT)を介護現場に応用する取り組みが始まっている。職員の肉体的な負担軽減を図る介護ロボットに続き、一斉通信が可能なインカム(無線機)、利用者の行動を把握できるセンサーなどを活用することで、業務の効率化が期待される。全国的に介護人材の担い手不足が課題となる中、県は働きやすい環境を整え、介護の質と魅力のさらなる向上につなげたい考えだ。
◆◇◇課題解決...糸口
「○○です、△△さんつながりますか」。南相馬市の特別養護老人ホーム福寿園。職員は一斉通信が可能なインカムを装着して業務に当たる。「やることは変わらないが、全体の情報共有がスムーズになった」。副施設長の阿部雅志さん(41)は効果を実感する。
施設が抱えていた課題解決の糸口がICTだった。敷地面積は約4200平方メートルと広く、職員を探す際の時間のロスが生じていた。内線や簡易型携帯電話(PHS)に応答する際に、利用者から手や目が離れる時間を減らすなど危機管理の改善も狙いだった。
導入当初は、一斉通信により情報の対象者があいまいになるなどの課題が生じたが、発信者と対象者を明確にするなど対策を講じた。阿部さんは「施設に応じたルール化が重要」と話す。
3カ月の実証を終え、本格的にインカムを導入。理由は「情報の共有によりお互いが次の動きを予測でき、利用者に向き合う時間が増えた」からだ。施設長の菅原武さん(57)はサービスの質の向上に手応えをつかんだ。
◇◆◇導入、半数超に
厚生労働省の試算によると、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に、県内では約4万1000人の介護職員が必要となるが、約1万人が不足するという。人材確保が急がれる中、利用者が動いた際、離れた場所でも行動を把握できる非接触型センサーによる見守りなど、介護現場でのICT活用は多様化しつつあり、人材不足対策の一つとしての期待は大きい。
県は、腰痛緩和などを図る装着型の介護支援ロボットの導入支援を進めているが、本年度新たにWi―Fi(ワイファイ)やインカム、センサーなどの導入についても補助を開始。2025年までにICTを導入する施設の目標数を、県内の高齢者施設の半数以上に当たる282施設に掲げ、人手不足を補う動きを加速させる。
今後、県老人保健施設協会、県認知症グループホーム協議会、県老人福祉施設協議会などと連携、現場の声を踏まえた上で取り組みを進める。
◇◇◆介護の新常態
県は「ICTの活用により人材不足を補うだけでなく、さらなるサービスの向上につなげ介護現場の魅力をさらに高めたい」(高齢福祉課)としており、ICTを介護の「ニューノーマル(新常態)」として位置付ける方針。
山陰中央新報 2021年1月26日(火)
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