
まちプラの時間を楽しむお年寄り=先月25日
春の日差しが差し込む一室で、お年寄りたちがおもちゃを使ったゲームを楽しみ、ハーモニカとオカリナの生演奏に耳を傾ける。先月25日、秋田県由利本荘市東由利にある老方診療所の待合室を会場に開かれたイベント「まちプラ」だ。
近所に住む小松フヨさん(91)は「ゲームで手を動かしたり、どうやればいいのか考えたり。みんなで楽しい時間を過ごせるのがいい」とにっこり笑った。
東由利の高齢化率は、今年3月末時点で50・9%。合併前の1市7町で最も高く、全県の38・5%(昨年7月時点)を大きく上回る。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家に閉じこもりがちな高齢者が気軽に集える場を設けたい―。まちプラの取り組みは昨年11月、地元の医療関係者のそんな思いをきっかけに始まった。冬場は休止し、今回が3回目。久々となった集いの場を70〜90代の9人が楽しんだ。
まちプラは「アクティビティ・ケア」の考え方を取り入れている点が特徴。頭や体を使うさまざまな活動をお年寄りに楽しんでもらい、心のリフレッシュや身体機能の維持につなげようとするものだ。
この日は多角形の積み木や吹き矢を用意。積み上げるのに指先を使ったり、矢を強く吹き出すために腹式呼吸を試したりと、健康づくりにつながるよう工夫を施している。
担当するのは元市職員の太田晃さん(64)。診療所を運営する佐藤病院(由利本荘市)の顧問を務め、地元の保健師らと協力して臨む。「遊びは心の栄養源。まずは集まって『アハハ』と楽しんでもらいたい。それで免疫力が高まり、健康維持につながればいいですね」
東由利の医療機関は、診察を週3回行う老方診療所のほか、個人病院と歯科医院が一つずつ。ほかに月数回の巡回診療があるだけで、医療環境が充実しているわけではない。高齢化率が高まる中、健康寿命を延ばし、古里に元気で長く住み続けられるような取り組みが重要度を増す。
閉じこもりがちだったお年寄りが活動的になるなど、「手応えを感じつつある」と太田さん。試行錯誤しながら、取り組みの輪を広げていくつもりだ。