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【高知県】

介護現場をITが手助け 利用者の状態「見える化」高知県内でも注目

高知新聞 2019年3月26日(火)
利用者の睡眠状況や呼吸、心拍などを表示するパソコン(高知市の「あざみの里」)
利用者の睡眠状況や呼吸、心拍などを表示するパソコン(高知市の「あざみの里」)

 人手不足が続く介護現場で注目されているのはIT(情報技術)の活用だ。職員の負担軽減やケアの質の向上が目的。介護者を“援護”するお助けマシンの世界を見てきた。 
 「あ、今、北の部屋のAさんが目を覚ました。たぶん、これから起きて、トイレに行くナースコールを押すんじゃないかな?」

 3月のある夜。午後11時ごろの高知市薊野北2丁目の特別養護老人ホーム「あざみの里」(80床)。2階フロア(30床)の介護職員の詰め所で、夜勤の女性職員が傍らのパソコン画面を見やった。

 絵入りの画面には利用者30人のデータが記されている。心拍・呼吸数、眠っているか、目を覚まして横になっているか、ベッドから離れているか、といった状況が一覧できる。

 体にはセンサーや管は一切ついていないのに身体の状況が分かるのは、ベッドのマットレスの下に、四国で初めて全室に導入した「眠りスキャン」という名のセンサーが敷かれているからだ。

 ベッドメーカーが睡眠の質向上を研究する中で生まれた商品。横隔膜や心臓の動きをセンサーが感知し、微細な振動の周期を人工知能が解析し、身体の状況を把握する。
 「青が熟睡、青と黄色だと目を覚ましそうな状態…」と職員。  画面が黄色になり、Aさんが目を覚ましたことを示した。「様子見てきます」。職員が部屋に向かうと、Aさんは「トイレに座りたい」とベッドから起き上がろうとしたところだった。

 ■スマホに映像
 ベッドのセンサーとスマートフォン、カメラ映像を連動させたケアも県内で始まっている。

 香美市土佐山田町に2月に新築移転した特別養護老人ホーム「ウエルプラザやまだ荘」(88床)。

 ベッドに重みがかかると反応するセンサーが利用者の起床や離床を感知するほか、ベッドから下りようとすると介護職員のスマホが鳴り、室内の映像がスマホに送信・録画される。

 映像の起動は利用者が大きく動いた時のみで、プライバシーの保護にはできる限り配慮しているという。

 ■夜勤の不安
 転倒や容体の変化などに気を配らなければならない高齢者施設の夜勤は、介護職の離職を生むストレスの一つになっている。

 冒頭の「あざみの里」の女性介護士は「今まではナースコールが鳴ってから部屋に行ってドアを開けるまで、どういう状態か分からず、不安が大きかった」と話す。

 眠りスキャンの導入以前は、巡視の物音で利用者が目を覚ましてしまうこともあったという。「職員の都合でケアの順序を決めるのではなく、利用者さん本位でケアができるようになった」

 「―やまだ荘」を運営する土佐香美福祉会の楠目隆理事長も「(利用者の様子が)見えるメリット」を強調する。

 「特にショートステイの利用者が入られた時は、夜間の状態が十分に把握できてないため、職員は不安。見える安心感は大きい」

 ■情熱頼みでは…
 ハードな仕事を支えるのは職員の「情熱」頼み。そうした介護現場にしないために、可能な効率化をITや機器に頼りたいと施設幹部らは語る。  

 「あざみ―」のケアマネジャー、井上輝昭さんは「効率化できるところは効率化して、利用者さんに向き合ってケアする時間を増やしたかった」という。

 「職員が持つ優しさや愛情だけに頼ったケアではいけない。職員を大切にすれば、自然と利用者にもいいケアができる」

 介護職員の姿を見ると隔世の感がある。

 ハンバーガーショップの店員のような無線インカムで連絡をとり、デジタル端末で介護記録を入力し、検索する。美容師のように腰に下げたポシェットには、利用者を人力で持ち上げずに移乗させる「ノーリフティング」に使う専用の手袋などを入れている。

 少しでも働きやすく―。お助けマシンが介護職員たちの活躍を支えている。(早崎康之)