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散髪、買い物付き添い 1日150キロ以上走る介護タクシー

介護タクシーで理美容店に到着し、女性客を店内まで連れていく白奥律子さん=芦北町
「脇を抱えるよ。1、2の3」。芦北町の理美容店。介護タクシーのドライバー白奥律子さん(63)=同町白木=は、体の不自由な女性を車いすから持ち上げた。鏡の前の椅子に座らせると、「散髪が終わる頃来るねー」と笑顔で店を出た。
ホームヘルパー2級の資格を持ち、町内の病院に18年間勤務。うち10年間は送迎バスの運転手を務めた。介助が必要なのに、同居家族のいない高齢者に出会ううち、「移動に困っている人を支えたい」と起業を決心。必要な2種免許を取得し、2007年に開業した。
介護タクシーは、身体障害者や要支援・介護認定者などに限って乗せることができる。車両は、客を車いすごと乗せるためのスロープなどを装備し、ドライバーはさまざまな介助もする。
白奥さんは、病院や理美容店などへの送迎のほか、温泉施設で利用者の背中を流したり、目が不自由な人の買い物に付き添ったりもする。3カ月に1度、飲食店での食事介助を楽しみにしている顧客もいるという。
1日の走行距離は150キロ以上。「必要な存在だよ」「いつまでも頑張って」といった声が励みだ。携帯電話に登録した顧客の数は150人を超す。需要が高まる一方で、自身の体力の衰えを感じるようになってきた。「あと5年ぐらいしか続けられないかも…」とこぼす。
それでも、頼もしい次世代の担い手が誕生している。町内の特別養護老人ホームで働いていた長濱辰典さん(35)が16年、隣の津奈木町を拠点に介護タクシーを始めた。若い同業者の開業に「肩の荷が少し下りたかな」。白奥さんは安堵[あんど]の表情を浮かべる。
人口の少ない山間部で、利用者を送迎する介護事業者は地域住民の見守りの役目も果たす。6年前の夏、芦北町の美里在宅支援事業所のスタッフ塩宮多紀子さん(36)は送迎中、川が増水し同町吉尾の80代夫婦の自宅が浸水しそうになっているのを発見した。
知らせを受けて駆け付けた同事業所の一川清一社長(63)が、土砂に巻き込まれそうになりながら夫婦2人を救出。ほどなく水位は床上1メートルほどに上がった。北九州市に住む長男(60)は「逃げる判断ができなかった恐れもある。見つけてもらわなければ助からなかったかもしれない」と感謝する。
「見守りは、一人一人の心掛けによるところが大きい。高齢化がますます進む地域を長く支える人材を育てたい」。一川社長は、若いスタッフに期待を寄せる。(福山聡一郎)
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