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【愛媛県】

地域の明かりに えひめ在宅緩和ケア チームで診る

愛媛新聞 2019年1月11日(金)
事務所が「お隣」のみどり薬局で津曲芳久さん(左)と談笑するコーディネーターの宮岡範子さん。「いろんな情報や知識をやりとりできて、助かってます」
事務所が「お隣」のみどり薬局で津曲芳久さん(左)と談笑するコーディネーターの宮岡範子さん。「いろんな情報や知識をやりとりできて、助かってます」

【調剤薬局も24時間支える】
 「地域に合ったこぢんまりとしたチームで、ゆっくりスタートを切れた。それが良かったのかも」。大洲喜多地域の県在宅緩和ケア推進モデル事業でコーディネーターを務める宮岡範子さん(53)は目を細めた。
 退院しても在宅医が見つからず、たらい回しのようになって最後は救急搬送される―そんな例を、地域の訪問看護師としてつらい思いで見ていた。「患者・家族の大事な時間が失われ、医療者も疲弊する。電話一本で、患者の希望を実現できる仕組みがあれば…」。不安はあったが、モデル事業は「理想」でもあった。
 2012年4月に始まったモデルの、最初の受け入れは6月。当初は在宅医6人(現在は7人)、訪問看護ステーション4施設など少人数で、勉強と準備を重ねた。「医師も浦島太郎というか、最新の緩和ケアには疎い面もある。看護師も介護職も正直に『一から教えて』とお願いしました」
 バックベッド(緊急時入院先)は2床、喜多医師会病院に確保。土日など担当医の不在時には、在宅医の指示だけで入院できるなど独自の工夫も生まれた。
 重要な役割を担ったのは24時間対応の調剤薬局。みどり薬局(大洲)とあさひ堂薬局(内子)が、緊急時や夜間、休日の配達を引き受けた。加えて管理が難しく、大量に「箱買い」しなければならない医療用麻薬は、開業医には扱いにくかったが、医師らの要望に応え、まとめて買って融通する「小分け処方」を実現。格段に使いやすくなった。
 みどり薬局の管理薬剤師津曲芳久さん(60)は「地域のために、使命だと思って参加しています」。患者宅を訪ね、副作用の心配などへの説明や服薬指導、減薬を提案。訴えを聞いて医師に伝えることもある。
 患者・家族の「生活」をよく見ているのは、頻繁に訪問する看護師や介護職。主治医に言いにくい不安や疑問も、薬剤師やリハビリ担当者らには言えることもある。「チームで診る」意義は、そこにある。

 ある夫は、妻の調子が悪くなると出かけてしまう。「ご主人が一番怖くてつらいんだと思う。責めずに支えてあげないと」。別のある家族は「本人に病状を言わないで」、本人は「家族に心配をかけたくない」。どうしたらいいのか…。
 在宅医療では、家族や本人との密な関わりが必要。宮岡さんは「患者本人が、本当はどうしたいのか」を常に考える。「これでいいのか、と日々反省ですが」
 半面、患者が家で過ごす時間は「濃い」と感じる。「家族が戻って、みんなで寝転がって話せて…」。入院も安心だが、容体が悪化しても訪問回数を増やし、十分な緩和ケアで痛みをしっかり取ればきっと家で過ごせる―と思う。「これからも、文字通り『アットホームな』チームとして、みんなで支えたいですね」