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【鹿児島県】

認知症の人が荷物配達 鹿児島県姶良市の介護事業所とヤマト運輸が協力

南日本新聞 2019年6月12日(水)
岩城厚弘さん(左)の確認作業を見守る川原多喜子さん(中央)と那須明日香さん=姶良市加治木
岩城厚弘さん(左)の確認作業を見守る川原多喜子さん(中央)と那須明日香さん=姶良市加治木

 鹿児島県姶良市の介護事業所「共生ホームよかあんべ」と宅配大手の「ヤマト運輸」が協力し、認知症の人が荷物配達を担う珍しい取り組みが、今年1月から始まっている。いつまでも役割を持ち続け、地域で顔の見える関係づくりを−。関係者らは「意欲的な姿を見せることで、認知症を深く理解するきっかけにもなる」と期待を寄せる。

 今月7日、姶良市加治木の住宅街。よかあんべを利用する川原多喜子さん(82)と岩城厚弘さん(77)が、ヤマト運輸の制服で荷物を配り歩いていた。配達先の確認と見守りを兼ね、看護師の那須明日香さん(38)も同行する。

 「あれ、田んぼに水が入っている」。配達の途中、3人が立ち止まった。「新しい家をつくっている」「今日は天気がよかな」。地域の変化に目をとめ、すれ違う地域住民と会釈しながら、約30分かけて配達を終えた。

 2人の配達範囲は事業所から約2キロ圏内。この日は、書類5通の依頼を受けた。那須さんは「歩き方や歩ける距離を把握でき、運動機能の確認にも役立っている」と話す。

 荷物配達は、介護事業所での「有償ボランティア制度」を活用しており、事業所側の発案で始まった。事業所は、ヤマト運輸と業務委託契約を結び、委託費を受け取る。委託費は全額謝礼として、事業所から配達に当たった人に支払われる。

 配達は週3回程度で、謝礼は1件25円。現在は7人が、各自の状態に合わせて配達をしている。スタート時からほぼ毎回配達する岩城さんは、ここ数カ月、平均300円前後を得ている。「もらったお金で散髪に行った。業務用機械が使えるようになったり、体を動かしたりして、達成感がある」と喜ぶ。

 同様の取り組みは、全国で姶良市と福岡県大牟田市だけ。姶良市では他に、障害を抱えるなど比較的若い要介護者を支援する「リハケアガーデン加治木」も参加。社会参加のきっかけに役立てている。

 よかあんべを運営する黒岩尚文さん(50)は「介護サービスの利用時間が増えるほど、地域と離れがちになる」と指摘。「その人が社会で存在感を保ち続ける一例になる。住民が自分の将来と重ねて見ることで、認知症介護への理解も広まっていくのではないか」と語った。