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【秋田県】

「農福連携」に期待 障害者の就労機会と農業の人手確保へ

秋田魁新報 2019年7月11日(木)
愛仙の利用者が作った出荷箱に入れられて顧客に届けられる「なつあかり」
愛仙の利用者が作った出荷箱に入れられて顧客に届けられる「なつあかり」

 秋田県仙北市西木町の社会福祉法人「秋田ふくしハートネット」(久米力理事長)が、障害者の農業参加「農福連携」に取り組んでいる。市内の生産2団体と連携協定を締結、同法人が運営する事業所「愛仙」の利用者が、出荷箱の組み立てや栽培作業に当たっている。農業の人手不足解消と、障害者の就労機会の確保につながりそうだとして期待を集めている。

 ハートネットは市内2カ所で指定障害福祉サービス事業所を運営。このうち愛仙は就労支援と生活介護を手掛け、54人が自立に向けて木工品製作や古紙回収などを行う。

 農福連携の取り組みは昨年3月から始めた。利用者の働く場や収益性の高い仕事を求めていたハートネットと、高齢化で農業現場の労働力が不足した市薬草生産組合の利害が一致し、市の仲介で連携協定を締結。利用者は生産農家と一緒に年間を通してシャクヤクの栽培に従事し、2年目の今年は新たにカノコソウの栽培にも挑戦している。

 ハートネットの石川晴久サービス管理責任者は「従来の作業よりも工賃が良く、作業のやりがいが大きい。利用者の労働意欲が高く、就労に向けた可能性が広がる。外での作業が心のリフレッシュにもつながっている」と話す。

 今年6月からは、市の工業団地で夏イチゴを栽培しているストロベリーファームとも連携を始めた。同社は海外産が主流の夏イチゴ市場に国産を売り込もうと2013年から、糖度が高い「なつあかり」を栽培。社会貢献の一環として障害者の雇用機会を創出するため、ハートネットと農福連携に取り組むことになった。今年から夏イチゴの生産規模を倍増させて人手が不足したことも理由にある。

 愛仙利用者は「なつあかり」を納品する際に使う出荷箱の組み立て作業を請け負う。作業は先月17日に始まり、利用者が毎日、段ボールを折り曲げて箱を作ったり、品種名のスタンプを押したりしている。完成した出荷箱は保管し、同社従業員が必要な分を毎日受け取りに訪れる。

 石川さんは「新しい仕事を任されるようになったことで自分たちが認められ、社会の一員として働き、貢献できているという実感もあるようだ」と話す。

 ストロベリーファームの宮下聡一郎統括マネジャーは「(箱の組み立て作業がない分)労働力を農作業に集中できて助かる。出荷箱の仕上がりも丁寧で、商品として顧客に届けることを誇らしく感じる」と歓迎する。

 出荷箱の製作を皮切りに、梱包(こんぽう)用資材の製作や一定の農作業なども担ってもらえないか検討中といい、「お互いのやりたいことやできることを理解し合い、少しずつ連携を進めたい」と力を込めた。

 ■適切なマッチング課題

 農福連携について、秋田ふくしハートネットの久米力理事長は工賃の向上や就労機会の拡大などに期待する一方、農業者と障害者とをつなぐコーディネート役の不在が課題だと指摘する。

 厚生労働省によると、愛仙と同じ就労継続支援B型の工賃(2017年度)は全国平均で月額1万5603円。都市部に比べて農村部の方が低い傾向にあり、愛仙は1万円程度にとどまるが、農作業の受託を始める前と比べ100円以上アップしたという。

 農作業が障害者の心身に与える好影響も期待されている。障害者の就労支援に取り組むNPO法人日本セルプセンター(東京)が13年度行った調査では、農業活動を行う全国の障害福祉施設の57%が利用者の精神面に良い影響があり、45%が身体面で改善があったと回答した。

 久米理事長は「雇用する側にも障害者を雇うことに不安がある中で、少しずつでも外に出て作業することで理解が進み、就労の受け入れ先が広がる効果もある」と強調。その上で、「農業者は障害者のことを分からないし、福祉側は農業の詳細が分からない。両者をつなぎ、適切なマッチングを支援する機関や人材がいれば県内でも取り組みが広がるだろう」と指摘した。