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【秋田県】

「ちゃんと」を描ける? 障害者の戸惑い体験ワークショップ

秋田魁新報 2019年12月2日(月)
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図形を言葉で相手に伝え、紙に描かせるワークショップ。「伝わらないもどかしさ」を体験した 

 知的障害のある人は周囲の言葉をどう感じ、どんなことに戸惑っているのだろう。そうした感覚を疑似体験によって知る講座が今月16日、秋田市で開かれた。市手をつなぐ育成会の主催。約50人が参加し、ワークショップを通して「伝わらないもどかしさ」などを体験し、よりよいコミュニケーションの方法を探った。

 講師を務めたのは、障害がある人の家族や支援者でつくる山形県の「花笠ほーぷ隊」(古澤薫代表)の3人。いずれも障害がある子の母親たちだ。当日の体験をいくつか紹介したい。

■「ちゃんと」を絵で表現

 「ちゃんとやりなさい」「ちゃんとします」などと何げなく口にする「ちゃんと」という言葉。参加者は、この「ちゃんと」を絵で表現するワークショップに挑戦した。

 紙に四角を描いたり、「気を付け」の姿勢を描いたりする人がいる一方、悩んで何も描けない参加者もいた。

 ほーぷ隊のメンバーは「『ちゃんと』を絵にしてくださいと言われて戸惑ったと思います。障害がある人の中には、ものを頼まれた時に自分が何を求められているか理解できず、本当は分かっていないのに『分かった』と言ってしまったり、分かっていないのを知られたくなくてニコニコしてしまったりする人もいる。その戸惑いを体験してもらいました」と解説した。

 過去のワークショップで描かれた「ちゃんと」は、参加者の立場によってさまざまだったという。例えば学校の先生は「いすに深く腰掛ける子ども」、警察官は「警官の敬礼」、行政の職員は「スーツにネクタイ」の絵―。

 「『ちゃんと』のイメージは人それぞれで、いかに曖昧なものか分かる。相手に『ちゃんと』を望む時は、身近で具体的な例を伝えてほしい」

■図形を言葉で伝える

 図形が描かれた紙を見て、隣の人にその図形を言葉で伝え、描いて再現してもらう―というワークショップでは、図形を伝える側も描く側も苦戦していた。

 「『なぜ伝わらないんだ』『もっと分かるように言ってほしい』というそれぞれの立場のもどかしさを体験してもらった。どうしたら相手により伝わりやすいのか、普段から意識してみてほしい」

■意味のない文章を覚える
 「形見にりゆヤヘ口あ人くを山笑めーぽ鯛」。この意味不明な文を数秒で暗記し、紙に書き起こすというワークショップでは、全て書けた人は一人もいなかった。

 「『文字を意味として理解できない』『覚えたはずなのに思い出せない』という人もいる。決して頑張っていないわけではないし、その人のせいではない、ということを知ってもらいたかった」

 左右が反転した「鏡文字」を書くワークショップも行った。「学習障害のため、文章が鏡文字のように見える人もいる。そういう見え方をしているのが自分だけだと気付かず、大人になるまで一人で苦しむケースもある」

 メンバーが勧めるのが、字体や濁点の位置などを工夫して読みやすくした「ユニバーサルデザイン」文字の活用だ。「障害のある人が読みやすい文字は、誰にとっても読みやすいはずです」

 ◇  ◇

 花笠ほーぷ隊の古澤薫代表は、知的障害がある息子(27)への思いや、子育てで感じたことも紹介した。

「息子は元気に生まれ、歩くのも早かった。ただ、名前を呼んでも振り向かないことや、なかなか言葉が出てこないことが気になった。『なぜだろう? 何で育てにくいんだろう?』と感じていた」

 わが子に障害があると分かった瞬間から、親はそれまで思い描いた人生とは別の人生をいや応なく歩むことになる―と古澤さん。「周囲にお願いしたいのは、本人のことも親のことも温かい目で見守ること。『親がなかなか子どもの障害を認めない』という声を支援者から聞くことがある。でも親だって完璧じゃない。どうか責めないでほしい」

 息子は動きが活発で、外出先では周囲に「すみません」と謝る日々だった。だがある時、「お母さん、いちいち謝らなくていいんだよ」と声を掛けられた。ほっとした。
 「そういうふうに言ってくれる人が一人でもいたら、親は救われる。少数の専門家よ
り多数の理解ある人のいる場所が、住みやすい地域であり、優しい地域なのだと思う」

 花笠ほーぷ隊は知的障害や発達障害の理解者を増やそうと、各地で疑似体験の出前講座を行っている。問い合わせは古澤さん(メールアドレスvssv6002@gmail.com)