ニュース
トップ

【長崎県】

「ことばの教室」楽しみながら 一人一人と向き合い 発音改善

長崎新聞 2020年2月25日(火)
ニュース画像
ことばの教室の室内。体の力を抜く練習をするトランポリンがあり、机の上には舌の動きを見る鏡を置いている=長崎市、大園小

 言葉をうまく話せない児童が通常学級に在籍しながら、必要に応じて別室や他校で授業を受ける通級指導の「ことばの教室」。長崎県内では23小学校に設置されている。長崎市滑石6丁目の市立大園小(堀ノ内祐輔校長、359人)は、市内4校の拠点校の一つ。同校の教室を訪ねて取材すると、発音や会話の力を向上させるため、児童一人一人と向き合った丁寧な授業が行われていた。

■週1回ペース

 大園小は2010年度にことばの教室を開設。現在、市内17校から41人の児童が基本的に週1回のペースで通い、指導を受けている。対象は、言葉を正しく発音できない「構音障害」と、滑らかに話せない吃音(きつおん)の児童だ。

 授業時間は大園小の児童は45分だが、校区外から通う他校の児童は75分を確保している。担当教諭が児童と1対1で向き合い、一人一人の状態に合わせて指導。改善が見られると通級指導は終わる。

 授業を見学した。音に集中できるよう窓を開けないため、教室にはエアコンを設置している。洗面台もある。口周りの筋肉を鍛えるトレーニングとして、うがいが有効なためだ。改善のためには家庭での練習も必要で、保護者がマジックミラー越しに授業を見られる観察室も用意されている。

 この日は構音障害のある2年生の男子児童が、昨年4月から「ことばの教室」を担当している緒方利彦教諭(35)の授業を受けた。構音障害の子どもは全身に力が入りやすいため、まずトランポリンで跳ねて体の力を抜き、うがいのトレーニングをしてから席に着いた。

 机の上には、口や舌の動かし方を確認できるよう鏡がある。児童は舌を前後左右に動かしたり、チョコレートソースをかけた丸い皿をなめたり、菓子を舌の上に載せて落とさないようにしたりして練習した。

 発声には母音が大事なため「アイウエオ」の発音は重点的に取り組む。児童は教諭の後に続いて短文を音読。授業は終始リラックスした様子で、なごやかな雰囲気のうちに終了した。教諭は「授業後の記録が大事」と、保護者への連絡帳に子どもの状態を記入した。

■周囲の理解を

 指導する教諭に特別支援学校の教員免許は不要。教員らは県難聴・言語障害教育研究協議会が主催する研修会などで指導方法を学ぶ。

 緒方教諭は「苦手なことに取り組む子どもには苦痛なはずだ。『やってよかった』『できた』と思わせるために、ほめることを忘れない」と心掛け、授業を楽しんでもらえるように内容を工夫している。

 保護者には「通わせてよかった」「子どもが楽しく通っている」と好評で、「こんなに早く治るとは思っていなかった」と感謝する声も出ているという。

 言語障害の通級指導は、長崎市内では約50年前に始まった。2019年5月現在で県内23小学校に36教室が設置され、392人の児童が学んでいる。

 長崎市立戸町小の江原由美教諭(53)は「ことばの教室」で15年以上の指導経験があり、大園小での開設に携わった。教諭によると、児童の言語能力向上には、普段通っている学校の担任教諭や周囲の児童が、ことばの教室に対し「特別なことではなく、みんなと同じように苦手なことの練習に取り組んでいる」と正しく理解することも重要になるという。

 江原教諭は「指導者の指導技術の向上」を課題に挙げる。「ことばの教室に通う児童の中には、他の支援が必要な場合もある。医療や他の通級などとつながりを持ち、次の支援に関する相談に対応する力をつけることも大事」と話している。