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【京都府】

「遊ぼうっていいたいよ」学校では話せない子 「場面緘黙」は不安障害 親も気付かず、発見遅れで二次障害

京都新聞 2020年2月25日(火)
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場面緘黙(かんもく)の子どもら対象の講座と伊藤准教授(京都府長岡京市・中央公民館)

 家族とは会話できるが、学校などでは話せなくなる「場面緘黙(かんもく)」の子どもたちを対象に、京都西山短期大(京都府長岡京市)が地域で支援する取り組みを行っている。不安障害の一つとされているが、気づかれにくく支援が行き届かないケースもあるという。周囲の理解と安心できる場の確立を目指し、関係者の模索が続く。

 京都市内で暮らす男性(47)は、場面緘黙と診断された長女(10)と、京都西山短期大の講座に通う。「本人がこんなに苦しんでいることにもっと早く気づいてあげればよかった」と振り返る。

 長女は幼いころから近所の人とあいさつできず、年齢を聞かれても答えられなかった。祖父母とも数時間一緒にいないと会話できなかった。幼稚園の年長の時に、場面緘黙だと分かった。

 親子で向き合うと、長女が胸の内を明かした。「話したいけど話せない。本当はお友達に自分から遊ぼうって言いたい」。1年生の休み時間は独りで絵を描いて過ごしていた。いつもノートはすぐに埋まった。

 2016年から講座に参加するようになった。長女は緊張していたが、「話せないのは自分だけじゃないんだ」とこぼしたという。両親は、小学校側と協議を重ねた。発言の機会を与えた上で強要しないことや信頼できる友達と同じ班にするなどの配慮が続けられている。4年生になった今、休み時間は友達と過ごす。昨年11月、クラスメートの前で初めて発表ができた。長女は「心の扉が開きかけた」と母親に伝えた。

 男性は「場面緘黙と分かったことで本人の気持ちを知ることができ、一緒に前を向けた。話すことは手段に過ぎず、安心できる場があることが大切だと思う」としている。

 場面緘黙は幼少期の発症が多いが、家庭内では話すことができるため、親は気づきにくい。学校や保育所の教員も「おとなしい」「人見知りが激しい」とだけ判断し、発見が遅れるケースが多い。対人関係を学ぶ機会の減少や自尊感情の低下、集団生活になじめないことなどで不登校や成人後のうつなど、二次障害を起こす場合もあるという。

 伊藤准教授は「場面緘黙を見過ごされたままだと、生きづらさを抱えて成長する可能性がある」と指摘する。「本人の表現の仕方で判断するのではなく、内面に思いを寄せてもらえるよう、理解を広げていきたい」としている。