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【徳島県】

【若草プロジェクト設立4年】声に出せないSOS 虐待などラインで相談

徳島新聞 2020年2月26日(水)
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活動を始めたきっかけなどについて語る代表呼び掛け人の村木厚子さん

 虐待や性被害に苦しむ若い女性を支援しようと、徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さん(97)らが始めた全国組織「若草プロジェクト」が、活動開始から4年となる。無料通信アプリ・LINE(ライン)での悩み相談は年間2千件ほどの利用があり、「死にたい」との深刻な声も寄せられている。寂聴さんは「彼女たちの苦悩の原因は全て私たち大人がつくった現代日本のゆがみが生んだ」と支援の必要性を訴えている。 

 若草プロジェクトは瀬戸内寂聴さんと、厚生労働省元事務次官で津田塾大客員教授の村木厚子さんが代表呼び掛け人となって、2016年3月に発足。相談業務や一時保護施設「若草ハウス」の運営のほか、支援者向けの講座を開いてネットワークづくりと人材育成に取り組んでいる。

 村木さんによると、ライン相談には「虐待を受けて自宅にいられない」「AV(アダルトビデオ)への出演を強要された」などの声が届く。18年度は2171件の相談が寄せられ、うち113件は継続的な支援が必要と判断。電話やメールでのやりとりに切り替えた。自殺願望を口にする相談者も多く、深刻なケースは弁護士との面談や専門機関での支援につなげている。

 都内にある若草ハウスには1年間で10人以上が滞在し、スタッフが自立支援に当たっている。

 家庭の貧困や虐待、DVを受けるなど劣悪な環境で育った少女は家庭外に居場所を求めざるを得ない。会員制交流サイト(SNS)で大人の男性とつながり、宿泊場所や食事の提供と引き換えに性行為をさせられたり、JKビジネスや性風俗に勧誘されたりしているという。妊娠のリスクも付きまとう。

 村木さんは「被害女性は自分が悪いと思い込んでSOSをなかなか出せない。社会全体で受け止めていくべきだ」と話している。

 一人でも多く運動に参加を 瀬戸内寂聴さん

 若草プロジェクトの代表呼び掛け人の村木厚子さんと、代表理事の大谷恭子さんが寂庵に来られ、代表呼び掛け人になってほしいと話されてから、3年以上がたちました。

 豊かに見える日本で今、貧困や虐待に打ちひしがれている若い女性や、か弱い少女たちがたくさんいるという現実について(2人が)熱を込めて話されるのを聞き、胸が痛み涙を止めることができませんでした。

 彼女たちのために安全な「居場所」をつくり、少しでも生活に希望と幸福がよみがえるように尽くしたいという考えに、即、私も賛成し、何か役に立つことをさせてほしいと願いました。その結果、代表呼び掛け人の1人になり、この仕事に心を尽くすことを誓いました。

 こういう不幸な若い女性や少女たちがいることを知らなかったかつての私のように、一人でも多くの方々にこの運動に参加していただきたいと心から願ってやみません。

 「暗闇」目を凝らして 代表呼び掛け人・村木厚子さんに聞く

 「若草プロジェクト」代表呼び掛け人の村木厚子さんに、活動を始めたきっかけなどを聞いた。

 ―若い女性が抱える問題になぜ思いを寄せるようになったのか。

 拘置所にいた時、刑務作業をする若い女の子を見た。なぜいるのか検事に聞くと「薬物が一番多く、あとは売春系(の犯罪で)」と言う。後で勉強すると、虐待や性暴力被害など耐え難い事がある中での薬物依存だったり、頼れる人がおらず1人で生きていくための売春だったり。厳しい状況に置かれた女性がいると知った。

 ―少女たちと関わりどんなことを感じているか。

 皆自分を悪い子だと思っていて、社会もそのように扱う。だから助けを求められない。大人に対する警戒心が強く、懐中電灯を照らすと逃げてしまうような暗闇にいる小動物みたいだ。困っている子が必ずいると思って、暗闇に目を凝らさないといけない。風俗店のスカウトなど性的搾取をもくろむ大人は、そんな子を見つけ出すのが本当に上手だ。(スカウトか私たちか)どっちが先に声を掛けるかの戦いだ。

 ―厳しい状況に追い込まれた女性のために何ができるだろうか。

 「悪い子」と思われがちな少女の置かれた状況を理解してほしい。そして「本当に彼女たちが悪いのだろうか」と考えてみてほしい。世間の目が冷たいと、立ち直る時に本当につらい。彼女たちは凍るように冷たい水の中を泳いでいるようなもの。水の温度を少しでも上げるようにサポートし、泳ぎやすくしてあげてほしい。

 むらき・あつこ 1955年、高知県生まれ。高知大卒業後、78年に労働省(現厚生労働省)入省。女性政策や障害者政策を担当した。2009年の郵便不正事件で逮捕、起訴されたものの10年9月に無罪が確定。13年に厚労省事務次官に就き15年に退職。現在は津田塾大客員教授。