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【神奈川県】

ろう学校に地域の力 川崎の「寺子屋」、住民らが先生に

神奈川新聞 2020年7月29日(水)
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手話で自己紹介する児童(左)と進行役を務める原さん=8日、川崎市中原区の市立聾学校

 子どもの教育を地域ぐるみでサポートする川崎市教育委員会の「地域の寺子屋」が、新たに市立聾(ろう)学校(同市中原区)に開講した。特別支援学校に開設されたのは初めて。初日は児童が寸劇を披露して親睦を深めた。今後は同校の卒業生や地元の手話サークル会員らが“先生役”になり、子どもたちの学びを支えていく。
 寺子屋は、市教委から委託された運営団体が学校施設を活用し、児童生徒の学習支援を放課後に週1回、体験学習を土曜日などに月1回行う事業。地域住民らも先生役として活動を支える。2014年度からスタートし、これまでに市立小中学校全165校のうち、56校で開講している。
 市立聾学校に寺子屋「デフ☆キッズ ポッケ」を開設したのは、同校非常勤講師の原康夫さん(64)が委員長を務める実行委員会。原さんらが13年前から企画する聴覚障害のある子ども向けのイベントにかつて参加したボランティアや同校の卒業生ら約15人が先生役を買って出た。
 初日の今月8日は、同校の小学1〜5年生10人が参加。少し緊張しながら手話で自己紹介をした後、児童たちは童話「ウサギとカメ」の寸劇に挑戦した。身ぶり手ぶりを交え、のろのろと歩くカメや居眠りするウサギになりきる迫真の演技に、教室は笑いに包まれた。
 小学5年の宗政にこさん(10)は「初めてでドキドキしたけど、たくさん笑った。毎週行きたい」と笑顔。運営団体は今後、宿題を教えたり読み聞かせをしたりする考えで、自身も難聴の原さんは「単なる机の上の勉強だけでなくコミュニケーションを大事にして取り組みたい。社会で壁にぶつかっても乗り越えられる力を身に付けてほしい」と意気込んだ。
 市教委は21年度までに、市立小中学校全校での開講を目指しているが、運営団体や先生役の人材がなかなか確保できないことが大きなネックとなり、20年度で3分の1にとどまっている。加えて特別支援学校では児童の障害の程度に差があるため、開設が難しいという。寺子屋が市立聾学校に誕生したことに、市教委の担当者は「実行委や保護者の努力で実現した、とてもいいケース」と喜び、「これを弾みに1校でも多く開講できるよう、人材の発掘や育成に取り組みたい」としている。