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【熊本県】

「病児保育」コロナで窮地 熊本県内施設も利用者減 働く親の支援に影響も

熊本日日新聞 2020年8月7日(金)
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「みるく病児保育センター」で、看護師と一緒に過ごす子ども。コロナ禍で病児保育室の経営も悪化している=熊本市西区

 急な発熱などで保育所や学校に行けなくなった子どもを預かる「病児保育」の利用者が新型コロナウイルスの影響で全国的に激減し、県内の病児保育室も経営難に陥っている。運営者は「このままでは閉所もあり得る」と危機感を募らせており、働く親を支える「セーフティネット」の維持に影響が出ることも懸念される。

 病児保育は子育て支援の主要事業の一つで、国の補助を受けて市町村が実施する。県内では35市町村が取り組み、山鹿市と山都町のみ直営でほかは民間委託。多くは小児科や保育施設に併設されている。急性期の「病児型」、回復期の「病後児型」などがある。

 熊本市内は8施設あり、2019年度は延べ5336人が利用した。小学6年まで利用可能で、保護者は1日2千円を払う。市は各運営団体に年500万円の委託料を支給するほか、加算単価として利用者1人あたり約1万円を補助する仕組みで、利用者の減少は収入減に直結する。

 熊本市内では今年4〜6月の利用者が計391人と、前年同期より72%減った。西区の「みるく病児保育センター」の場合、4月の利用者は27人(前年同月53人)、5月は12人(同68人)まで落ち込み、学校再開後の6月も23人(同79人)にとどまった。

 運営するNPO法人チャイルドケアサポート「みるく」理事長の杉野茂人医師(64)は「外出自粛や手洗いの徹底などで病気にかかる子どもが減った」と分析。休業や在宅勤務の広がりも利用減につながったとみられる。

 「みるく」の職員は保育士と看護師の計7人。安全確保のため1日の利用者が1人でも保育士と看護師を1人ずつ出勤させており、統括の永野和子さん(56)は「人件費を支払うのに精いっぱい。コロナ後は借金をして赤字を補う状態で、夏のボーナスも払えない」とため息をつく。

 全国病児保育協議会が6月、全国の病児保育施設に取ったアンケートによると、利用者数は前年同期に比べ4月は67%、5月は85%減少した。「自治体の要請で開所したが利用者はほとんどなかった。(利用者数に応じて)加算単価分が減るのは納得できない」などの声が寄せられた。

 病児保育は利用見込みが立てにくく、もともと経営的に厳しい施設が多い。厚生労働省が6月発表した病児保育の経営状況をめぐる初の全国調査によると、18年度は施設の6割以上が赤字だった。

 コロナ禍でさらに経営悪化が予想されるため同省は7月10日、4〜9月の加算単価を前年同月の利用者数を上限に補助すると都道府県などに通知。熊本市は当面4〜6月について、昨年の利用者数を基に補助すると決めた。

 影響の長期化が見込まれる中、「みるく」の永野さんは「病児保育の存在を知らない保護者もいる。周知に力を入れたい」と言う。杉野理事長は「病児保育は働く親にとって不可欠な制度。利用者数の変動が経営に直結しないよう補助のあり方を見直し、採算が取れる仕組みにしてほしい」と話している。(豊田宏美)