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【徳島県】

「ユニバーサル・ミュージアム」を目指し 徳島県立近代美術館、工夫重ねた10年

徳島新聞 2020年9月7日(月)
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聞こえる人も聞こえない人も参加して、美術に親しんだワークショップ=8月23日、県立近代美術館

 障害の有無や年齢に関係なく、誰もが訪れやすい「ユニバーサル・ミュージアム」を目指す徳島県立近代美術館の取り組みが10年目を迎えた。視覚による鑑賞が前提の美術館にあって、手で触れたり言葉を介したりして作品を楽しめる鑑賞会を開催。視覚障害者が参加しやすい場を提供してきたほか、聴覚障害者に向けては手話による作品解説や筆談で語り合う鑑賞会を企画してきた。当事者の声を取り入れながら工夫を重ね、美術館を多様な人が集う場にしようと試みを続けている。

 展示室で数人が絵画に描かれた木々になり切って立つ。みんなで同じ方向に体を傾けると、まるで風にそよいでいるかのよう。同館で開催中のユニバーサル美術館展の一環として、8月23日に行われたワークショップの一こまだ。ろうの俳優庄崎隆志さん=淡路島在住=を講師に、聴覚障害者を含む10人が言葉も手話も使わず、ボディーランゲージでコミュニケーションしながらアートに親しんだ。

 ユニバーサル・ミュージアムは、1980年代に米国の建築家が提唱した、できるだけ多くの人の利用を可能にする「ユニバーサルデザイン」の考え方に基づく。2000年代に入り、日本の美術館や博物館にも広がり始めた。

 県立近代美術館の取り組みは11年度にスタートした。県立聾学校(現・徳島聴覚支援学校)での勤務経験がある亀井幸子係長の発案で、手話通訳付きの展示解説を行ったのがきっかけだった。以降、作品の前で鑑賞者が筆談で対話する「筆談トーク」を実施したり、聴覚障害者向けに美術館を紹介したウェブ動画を制作したりしてきた。

 13年度からは視覚障害者が鑑賞できる方法についても模索。彫刻作品に触れるワークショップや展示のほか、絵画の輪郭を浮き上がらせた「触察図」を制作するなど工夫を重ねている。

 全盲の戸部節子さん(68)=徳島市=は15年、対話を通じて作品のイメージを膨らませる鑑賞会に参加。「見える人たちがさまざまに口にする感想を聞くことで、自分の頭の中のキャンパスに絵が描かれていくのに感動した」と振り返る。これがきっかけとなり、ボランティアとしてユニバーサル・ミュージアム事業に携わっている。

 このほか、子供を対象とした鑑賞会も頻繁に開催。ロビーに椅子を置いて語り合える場所を作ったり、チケットカウンターなどを分かりやすく示すサインを設置したりと、環境整備も進めている。

 芸術は多様な価値観を内包し、誰もが楽しめる表現活動だ。亀井係長と取り組みを続けてきた竹内利夫上席学芸員は「排除されている人がいることがおかしい」と言う。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大後は、作品に触れたり大勢が集まったりする企画は避けざるを得ず、模索が続く。「試みも途上であるし、コロナの拡大で悩みも多い。けれど、すべての人を『どうぞ、ようこそ』と歓迎できるよう、一歩ずつ進めていきたい」と竹内さんは話す。

「ユニバーサル美術館展」は9月13日まで。手話や要約筆記による展示解説、視覚障害者向けツアーは希望があれば随時実施する。事前相談が必要。問い合わせは同館<電088(668)1088>。


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