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【神奈川県】

分身ロボ「オリヒメ」平塚で接客 山陰の障害者が遠隔操作

神奈川新聞 2020年11月19日(木)
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島根県に住む障害者が遠隔操作で接客するロボットの「OriHime」=平塚市の福祉ショップ「ありがとう」

 外出困難な重度障害者の就労の場を広げようと、神奈川県は分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を遠隔操作し、障害者に接客業務をしてもらう検証実験を始めた。平塚市内の障害者の手作り商品を販売する福祉ショップ「ありがとう」(同市役所1階)にも10月からロボット店員が配属。山陰地方から遠隔操作する障害者は「外で仕事をする接客業が自分にできるなんて」と働きがいを口にする。県によると自治体での就労実験は全国初とみられ、七夕の街で“織り姫”が新たな雇用の形を模索している。

 

身ぶり手ぶり

 「こんにちは。平塚には初めて来ました。今日から『(ともに生きる社会)かながわ憲章』の紹介などをしていきます」
 10月26日午後、初めて店頭に立ったオリヒメは早速、接客を開始。雑談を交わしながらロボットの頭がうなずいたり、手を挙げてあいさつしたり…。人間らしい身ぶり手ぶりを交える。
 同ショップでの試行期間は1カ月程度の見込みで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者ら4人が日替わりで接客。当面は午後1時半から1時間の業務時間で県の共生社会の政策の紹介やグッズ販売を担う。
 オリヒメと話した市内の女性(51)は「初めてで楽しかった。これからはこういうロボットが活躍するようになるのかも」と興味津々。同ショップ運営協議会の橋眞木会長も「頼もしい。お店の雰囲気も変わるし、何よりもロマンを感じる」と新戦力を歓迎する。

 

仕事なく絶望

 この日、オリヒメを操作していたのは、700キロ以上離れた島根県に住む三好史子さん(26)。次第に筋力が衰えていく脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者で車いすに乗り、一人での外出も困難がつきまとう。「仕事を探しても障害者には選択肢が狭すぎる。通勤するにも介護が必要で、仕事がなくて絶望していた」
 2018年、オリヒメを開発した「オリィ研究所」(東京都)が期間限定で開催した社会実験に参加。自宅のパソコンからオンラインでロボットを操作し、カフェの店員を務め、その後もオリヒメを通じ各地で勤務を続ける。
 オリヒメはマイクとスピーカーを内蔵し、カメラを通じて相手の顔を見ることができる。顔や腕も操作して意思表示ができるため「テレビ電話と違い、身体がその場にあってコミュニケーションしやすい。あちこちに行けて、まるで『どこでもドア』みたい」と三好さんは希望を見いだす。

 

働き方発信へ

 「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)で16年に障害者ら45人が殺傷された事件を受け、共生社会を掲げる神奈川県。昨年、新設した「共生社会アドバイザー」にALS患者を委嘱。オリヒメを使い、毎月の会議にも出席している。
 今年3月にはオリヒメの積極活用を図り、オリィ研究所と連携協定を締結。今後、在宅の重度障害者を非常勤職員として雇用することも模索する中で今回の実験に着手した。
 平塚に先立ち、オリヒメは9月から1カ月間、県庁新庁舎での案内業務にも従事した。県担当者は「オリヒメの認知度もまだ低い。こんな障害者の働き方もあるということを民間にも発信していきたい」と説明。三好さんも「自分たちの実験を通じて、障害者にも健常者と平等な就労の機会を与えてくれる企業が増えてくれれば」と願っている。