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【静岡県】

ストレスケア、重要性浮き彫り 介護施設で感染疑い者発生訓練

静岡新聞 2020年11月25日(水)
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防護服を着て入所者の介護をする職員。バイタルも測定し、訓練前後の心身の変化を比べた=富士宮市

 福祉施設での新型コロナウイルス感染拡大防止対策で、県東部などで介護施設を展開する沼津市の企業が入所者のストレスケアに配慮した工夫を進めている。施設内で感染疑い者の発生を想定して実施した対応訓練でアンケートを実施した際、身体面よりも心理面で不調を感じる参加者が目立ったことがきっかけ。分析結果は論文にまとめて公表し、県東部などの自治体から高評価を得ている。
 論文をまとめたのは沼津市の介護会社イー・ケアと一般社団法人のどか。3、4月ごろ、ドイツや米国の介護施設で面会禁止や入居者の自室隔離などの対策を取っていたにもかかわらずクラスター(感染者集団)発生や死者が出た。のどかの冨田敦生代表理事は「一刻も早く対策を取る必要があると感じた」と動機を説明する。
 訓練は今年5月に同社などが運営する9施設8事業所でそれぞれ2日間にわたって実施し、職員と入所者計413人が参加した。感染疑い者の暮らすフロアを完全に隔離し、食堂は閉鎖。全入所者を自室隔離し、食事や排せつも部屋で行った。職員は全員が防護服を着用。訓練の前後で脈や血圧などのバイタルデータを測定し、アンケートにも答えた。
 職員のほとんどが「訓練実施で少し安心した」と答え、冨田代表理事は「発生した場合の動きを一度経験しておくことが大切と実感した」と訓練の意義を強調する。
 一方、課題として浮かび上がったのが入所者のストレスケア。バイタルデータの結果には職員、入所者ともに大きな変化はなかったが、アンケートでは暑さや多汗、緊張や疲労を感じた(職員)▽行動制限に対する不満(入所者)などの回答が多かった。
 懸念を強めたのは自室隔離で行動を制限され、不満や不調を訴える入所者が一定数いたこと。論文ではオンラインで別室の入所者と交流をしたり、安全な動線を確保し室外運動の時間を設けたりするなどの工夫の必要性があると指摘した。
 論文は県や県東部などの自治体に配布。一部の自治体から「結果を共有してもらえるのはありがたい」と評価を得た。インターネットなどでも公表し、冨田代表理事は「同業者にも参考にしてもらいたい」と期待する。