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高知市が災害弱者の避難支援へ 福祉専門職の助言得て個別計画を策定

マップを基に要支援者の情報を共有する十津深浦地区の住民ら(昨年9月、高知市十津3丁目)
高知市は南海トラフ地震に備え、避難に手助けが必要となる高齢者や障害者ら「災害時要支援者」の対策に本腰を入れている。一人一人の避難方法を事前に決める「個別計画」を福祉の視点も入れて策定しようと、2020年度から市内5カ所をモデル地区に指定。ケアマネジャーなど福祉専門職の助言も得ながら、避難の実効性を高めていく方針だ。
「この人は最近足が悪くて、ごみ出しにも車使いゆうね」「ここは元気なお孫さんがいるから、何かあっても大丈夫かも」
昨秋、高知市十津3丁目の集会所に地区防災会や町内会、民生委員のほか、市職員ら約30人が集まった。約140世帯が暮らす十津深浦地区は、高知市のモデル地区の一つ。一部は最大2メートルの浸水が想定され、地震時は地区の高台にある福祉施設に避難することになっている。
集会所で住民らは住宅地図を広げ、要支援者の状態などを情報交換。高知市高齢者支援課の担当者が「薬が切れると体調が悪くなる場合もある。個別計画にはかかりつけ医の情報もあるといい」と意見を添えた。災害担当でない福祉部門の職員らが現場で計画づくりに参加するのは今までにない光景だ。
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昨年9月末時点で、県内要支援者5万6926人のうち、個別計画の策定率は11・9%。4万人余りの要支援者が暮らす高知市の策定率は、2・9%にとどまっている。
策定に当たる自主防災組織などからは「策定件数が多く時間がかかる」「支援する人が決まらない」「障害や病気の知識がなく支援が不安」といった声があるという。
こうした課題を解消するため、高知市は2020年度から地域包括支援センターやケアマネジャーなど福祉専門職の力を借りて、名簿提供の同意を取り付けたり、個別計画の作成で助言をもらったりする取り組みを始めた。
高知市地域防災推進課は「福祉の視点を踏まえて、地域で要支援者の存在や支援方法を確認することは、災害時だけでなく、平時の見守りなど地域力の強化にもつながる」と話す。
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モデル地区ではさっそく成果が出ている。
十津深浦地区では、住民が要支援者への戸別訪問を重ねて取り組んだ結果、昨年11月末までに、名簿提供に同意した要支援者37人中34人(91・9%)の計画が完了した。
他のモデル地区も、春野町甲殿で61人中54人(88・5%)、御畳瀬で86人中58人(67・4%)、種崎四区で26人中23人(88・5%)と策定率が高く、横浜安ケ谷地区でも取り組みが進行中だ。
十津深浦自主防災会の馴田(なれた)正満会長(73)は「どこに要支援者がいて、どんな支援が必要なのか、立体的に把握できた」と手応えを口にし、「今後は個別計画を基に、普段から声掛けしたり、一緒に避難訓練に参加してもらったりする動きにつなげていきたい」。
計画策定をスタートラインに、共助のまちづくりに向けた意欲を見せた。(海路佳孝)
《ズーム》災害時要支援者と個別計画 2011年の東日本大震災で犠牲者の6割が高齢者だったことを踏まえ、政府は13年改正の災害対策基本法で、自力避難が困難な要支援者の名簿作成を市町村に義務付けた。市町村は要支援者の同意を得た上で、名簿の情報を自主防災組織や民生委員、消防団などと共有。名簿を基に避難支援のための個別計画を策定している。
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