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【京都府】

理解されづらい「片耳難聴」 国内30万人以上、声に気づかず「無視」と誤解も

京都新聞 2021年4月15日(木)
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片耳難聴者が聞き取りに困る例

 「片耳難聴について、多くの方に広く知ってもらいたい」。京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に、近年発足した当事者団体からメッセージが届いた。

 片方の耳が聞こえづらい、もしくは全く聞こえない片耳難聴者。国内では30万人以上がいると推定されている。日常生活に大きな支障はないが、声のする方向がわかりにくいなどの不便がある。中には、声をかけられているのに気づかずに「無視をした」と誤解されるケースも。外見ではわからないため、周囲からは理解されにくい。自身も片耳難聴者である、京都光華女子大医療福祉学科(京都市右京区)で、聴覚障害を研究する高井小織准教授(60)は「日常のコミュニケーションで悩みを抱えている人が多い」と話す。

 片耳難聴は日常生活で悩みや不便を感じることもあるが、周囲の工夫によって解決できる場合もある。近年は専門家や当事者らによる市民団体「きこいろ」が発足し、正確な情報やサポートが広がりつつある。

 「騒々しい中で話を聞き取るのは苦手ですね」。そう話すのは、高井准教授。5歳の就学前診断で、左耳が全く聞こえないと診断された。

 片耳難聴は一側性難聴とも呼ばれる。原因は不明なことも多い。先天的な理由やおたふくかぜの合併症、大人になってからの突発性のものなどさまざま。治療も難しいことがほとんどだ。

 国による、片耳難聴者数の統計はない。きこいろでは、新生児聴覚スクリーニングで約千人に1人の割合で発見され、後天的な原因も含めると国内で30万人以上がいると推計している。

 片耳難聴者は日常生活に大きな支障はないことが多い。聞き取れる音の大きさは、両耳が聞こえる人と片耳しか聞こえない人との間で、差がほとんどないためだ。障害者手帳の交付対象にはなっていない。しかし、個人差もあるが、聞こえない耳の側から話しかけられると気づかない▽音や声が出ている方向がわかりづらい―などの不便がある。

 高井准教授も小中学生時、話しかけられた友達に気づかずに「無視をした」と誤解された経験がある。今でも宴会で会話を聞き取るのは苦手だ。また、緊張するのは運転中に助手席に人がいる場面。耳が聞こえない左側で会話をされるためだ。大学の初回講義では学生に左耳が聞こえないことを伝える。その上で、学生には正面で話したり、手を振って発言したりするよう求めている。

 近年では、2018年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」に片耳難聴のヒロインが登場したり、当事者であることを公表する芸能人も現れたりしたことで、認知度は高まりつつある。しかし、高井准教授は「『片耳が聞こえているから大丈夫』と勘違いされることも多い。正しい知識が広まっているとは言えない」と話す。

 そんな中、全国の専門家など10人が2019年8月に立ち上げたのがきこいろだ。これまでに片耳難聴者への行政支援や当事者団体はほぼなく、当事者が情報を得る機会は限られていた。

 きこいろには現在、当事者やその家族など約390人の会員がいる。高井准教授は副代表を務める。片耳難聴者を対象にした交流会や、保護者向けのレクチャーなどを全国の会場やオンラインで毎月開催してきた。

 ホームページでは、片耳難聴の原因や周囲の人ができる工夫も紹介している。家庭や職場向けの工夫では、聞こえる耳の方から話しかける▽にぎやかな場所では近くではっきり話す▽声かけに気づかない時は肩をたたく―などとイラストも交えながらわかりやすく解説する。

 片耳難聴者は聞こえづらい場面では、聞こえやすい位置に移動したり、聞こえる方の耳を相手に向けるなどして対応する。しかし、自身の力では解決できない場面もある。高井准教授は「当事者自身が片耳難聴に関する正確な知識を持った上で、周囲にどういった配慮をしてほしいかを適切に伝えることも大切」と語る。

 一方で、周囲による片耳難聴者への工夫や配慮も欠かせない。高井准教授は「自分の状態を伝えて改善されないのであれば、片耳難聴であることを伝えづらくなってしまう」と話す。その上で、「家庭や職場で、片耳難聴者が『ここで自分の状態を話しても大丈夫』と思ってもらえるような関係性を互いに築いてほしい」と話す。


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