
パソコン画面越しにAEDの使い方を指導する鈴木敬満消防士長(左)=多治見市三笠町、市消防本部
新型コロナウイルスの影響で対面での救急講習の開催が難しくなる中、岐阜県多治見市消防本部(同市三笠町)は、リモートで指導するオンライン救急講習を初めて実施した。市内の介護老人保健施設「メモリアル光陽」の職員10人を対象に、ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を利用して胸骨圧迫の正しい方法などを伝えた。
市消防本部は救命率向上を目的に救急講習に力を注いでおり、1年間の受講者1万人の実績を10年以上にわたって続けてきた。その成果もあり、救急隊が到着する前に救命手当てを行った人の割合が全国平均と比べて市は大幅に高いという。しかし、コロナ禍で2020年度の受講者は2千人ほど、21年度はこれまでに約800人と低迷が続いている。
救命手当ての質が保てないという危機感から消防本部は、従来とは異なる方法を模索している。20年度は動画投稿サイト「ユーチューブ」に、自宅に居ながら救急講習を体験できる動画を投稿した。
オンライン救急講習ではビデオ会議システムで市消防本部と同施設をつなぎ、心臓マッサージや自動体外式除細動器(AED)の使用法のほか、通報時などの情報伝達のポイントを伝えた。
受講した男性は「コミュニケーションが取りづらい部分もあったが、訓練は繰り返してやらないと忘れてしまうのでやれてよかった」と話した。指導した南消防署の鈴木敬満消防士長は「改善点もあるが、コロナ禍でもリモートで救急講習ができるという手応えがあった」と語った。