
「妊産婦の安心安全をサポートしたい」と語る佐々木真奈美さん(中央)と助産師の増子幸子さん(左)、昆野幸恵さん
岩手県遠野市は本年度、ホテルを使ったデイサービス型産後ケア事業を新たに始めた。ハイリスク出産に対応できる周産期母子医療センターに通院・入院する妊産婦の待機宿泊費と交通費を助成する制度も新設。同市にお産施設はなく、産前、産後ケアの充実を図ることで、不安や悩みを抱える母親や子育て世帯を支える。
産後ケアはこれまで、産婦の自宅や同市松崎町の市助産院「ねっと・ゆりかご」で受けられたが、新たに同市新町のホテル「あえりあ遠野」を活用する。助産師や保健師、看護師の2人体制で▽身体的ケアや保健指導▽心理的ケア▽乳房ケア−などを行う。
客室やレストランなどゆったりとした空間でくつろいでもらい、不安やストレスを和らげてもらうため、乳児をスタッフに預けての入浴や休息など、利用者の希望に沿う。
対象は市内に居住する産後4カ月未満の母親と乳児。1人最大4回まで、本年度は県の事業費補助により無料で利用できる。市は延べ36人の利用を見込み、本年度当初予算に施設利用経費など約170万円を計上した。来年度以降の利用料は1回3千円。
ハイリスク妊産婦への助成は出産前の宿泊費、タクシーや公共交通機関の交通費を実費で最大5万円まで補助する。本年度は10人の利用を見込む。
同市の出生数は2019年度125人、20年度111人、21年度は117人で緩やかに減少している。新型コロナウイルス禍の長期化による行動制限などで心身の負荷の高まりも懸念され、安心安全なお産のため妊産婦ケアの充実が必要と判断した。
市保健医療課の佐々木真奈美課長は「生まれてくる子どもたちのためにも、妊産婦のお産環境をサポートしたい」と意気込む。