
プロジェクトについて話し合う(左手前から)中山さん、渡辺さん、江坂さんら
新型コロナウイルス禍を乗り越え、地域とのつながりを取り戻したい―。いわき市のかしま病院は、医療従事者と地域住民らが一緒に地域でさまざまな活動に取り組む「いとちプロジェクト」を発足させた。相互の対話の場として、29日に「いとちかいぎ」と名付けた初会合を開き、医療や行政、地域の視点から何ができるかを話し合う。医学生や若い世代が地域について学ぶ場も設け、住み心地の良いまちづくりを目指す。
「感染対策で思うように患者の皆さんに寄り添えなかった。地域との交流もなくなり、人と人とのつながりがなくなったと強く感じた」。診療部長の中山文枝さん(56)はコロナ禍でのやりきれない胸の内を明かす。
感染拡大を受け、患者と家族の面会を禁止するなど対策を講じて病院を運営してきたが、医療従事者と患者、地域住民との間に「心の壁」のようなものを意識するようになったという。
プロジェクトには病院の医療従事者や事務職員、地域住民が参加し、まずは互いに顔の見える関係を築きたい考えだ。その上で最期まで自分らしく生きられる地域をつくったり、若手医師を地域で育てたりすることを目標に掲げる。初会合に向け、代表を務める事務部課長・広報企画室長の江坂亮さん(41)は「地域の皆さんと良い関係を築くきっかけにしたい」と意気込む。
プロジェクトに参画する総合診療科医長の渡辺聡子さん(41)は「私も子育てしながら医療に取り組み、地域とのつながりを大切に感じている。住民の皆さんといろいろな話をしたい」と期待を口にした。