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【静岡県】

社会的養護の子、成人後も支援 静岡県の独自制度3年

静岡新聞 2018年1月17日(水)

休日に里親の望月哲郎さん(左)、文代さん(中央)夫妻と自宅でくつろぐ小林美奈子さん=2017年12月中旬、静岡市清水区

 家庭の事情や虐待などで親元を離れ、児童養護施設や里親家庭で暮らす子どもが経済的な理由で大学など高等教育機関への進学を諦めることがないようにと、静岡県が2015年度、全国に先駆けて独自に始めた20歳以降の修学支援制度が導入3年を迎えた。これまでに13人が活用し、学びを終えて社会に出た人もいる。県は社会的養護の枠組みで育つ子どもの自立に向け、18年度以降も制度を継続する意向だ。
 制度は、児童福祉法に基づく支援が終わる20歳から卒業までの間、生活費などを補助する。導入初年度の15年度は1人、16年度は新規に5人が活用し、17年度は16年度から継続する3人に加え、新たに7人を対象に補助している。施設や里親の元で暮らした高校生の卒業後進学率(静岡、浜松両政令市を除く)は、15年度末20・4%、16年度末48・0%と上昇傾向にあり、県こども家庭課の担当者は「一定の効果がみられる」と話す。
 類似の修学支援は静岡、浜松両市も実施している。17年度からは国も施設や里親宅から通学する学生に対し、22歳まで援助する制度を始めた。
 県児童養護施設協議会長の加藤秀郷静岡恵明学園園長は「県が全国で初めて予算化し、国も動いた。児童福祉法の措置が解除された後に直面する経済的な問題への風穴を開けてくれた。努力をすれば報われると子どもが実感でき、意欲や自己肯定感を高める制度」と評価する。

 ■「人に尽くす仕事、喜び」 適用1号小林さん 作業療法士に
 静岡県の修学支援制度の適用第1号となった静岡市清水区の小林美奈子さん(22)は、県東部の専門学校に通っていた2015、16年度に制度を活用し、卒業後の17年4月から同市内の病院で作業療法士として働く。「支援はありがたかった。(里親の)お父さん、お母さんに迷惑をかけずに通学できて良かった」と話した。
 小林さんは小学1年から里親の茶農家望月哲郎さん(65)、文代さん(66)夫妻の元で育てられた。高校卒業後の就職も考えたが、「本人が希望する進路に進ませてやりたい」と望月さん夫妻が小林さんの進学に備えて蓄えたお金で作業療法学科のある専門学校の学費や通学費用を賄ってきた。小林さんが20歳を迎えた専門学校2年の15年5月、児童福祉法上の支援が終わった。哲郎さんは「養育の責任はないものの、人情としてそのままにしておけない。工面に悩んでいたところ、美奈子の誕生日に前後して県の修学支援が始まり、本当に助かった」と振り返る。
 専門学校3年間を皆勤で卒業し、作業療法士の国家資格も取得した小林さんは、社会人1年目の今を「働きがいがある。既往症がある患者さんが多く、難しい仕事だけど、人に尽くす職業に就けてうれしい」と話す。勤務先の希望で現在も里親宅から通勤しているが、いずれ訪れる独り立ちの日に向けて準備を進めるという。

 <メモ>静岡県の「施設などで暮らすこどもの大学等修学支援制度」 児童福祉法の措置延長期間が終わる20歳の誕生日から大学、短大、専門学校などを卒業するまでの間、措置相当額を児童養護施設や里親を通して給付する。基準月額は児童養護施設が25万910円、里親が12万950円。20歳になった途端に自活を余儀なくされることから子どもが進学を断念するケースがあり、社会的養護を必要とする子どもの進学率の低さも指摘されていたため、支援の仕組みを整えた。

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