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| ▲ 施設の外観 |
地域に根ざした多様な福祉サービスを展開
京都府城陽市にある社会福祉法人南山城学園は、「利用者様の尊厳を守り、幸福を追求する」という基本理念のもと、地域に根ざした福祉サービスを提供するとともに、共生・共助の地域づくりを推進することにより、地域共生社会の実現を目指している。
法人の沿革としては、昭和40年に社会福祉法人を設立し、重度知的障害者の入所施設を開設したことに始まる。その後、利用者の高齢化・重度化への対応や、待機児童問題などの地域ニーズに応えるかたちで、多様な福祉サービスを展開している。
現在は、法人本部のある城陽市を中心に、京都府南部、大阪府島本町において、障害福祉事業では、障害者支援施設、障害者グループホーム、障害者デイサービス、就労移行支援、就労継続支援A型・B型事業所、相談支援事業所等、介護事業では介護老人保健施設、高齢者デイサービス、居宅介護支援事業所、保育事業では認定こども園、保育所、小規模保育所を開設している。
そのほかにも、若年者等就労支援拠点として地域若者サポートステーションの運営を受託し、ひきこもり支援、中間的就労支援、生活困窮者支援等を一体的に実施している。
障害福祉事業では、8カ所の障害者支援施設(総定員数約300人)を運営しており、重度知的障害や強度行動障害、医療的ケアが必要な人など、在宅で支えることや他施設の入所が困難な利用者を受け入れる役割を果たしてきた。
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| ▲ 地域ニーズに対応した多様な福祉事業を展開。写真は障害者支援施設「紡」 | |
共生・共助の地域づくりに取り組む
同法人は、地域共生社会の実現や、誰もが安心して暮らせる「共生・共助」の地域づくりを目指し、災害時の支援体制を整備するとともに、さまざまな地域活動を実践している。
災害時の支援体制では、平成26年に福祉避難所としての機能を有した「彩雲館」を開設し、城陽市と「福祉避難所の設置および運営に関する協定」を結んでいる。
建物は2階建てで、1階はバリアフリー構造となっており、オストメイト対応の多機能トイレや冬季に備えた床暖房を設置するほか、宿泊施設としての機能を備えている。また、ライフライン停止時には3日程度の電力が供給できる太陽光発電装置を設置するとともに、倉庫には約800人×3日分の食料や水などを備蓄している。
災害対策の体制について、理事長の磯彰格氏は次のように説明する。
「法人全体のリスクマネジメント体制の一環として、各エリアの管理職、DWAT(災害派遣福祉チーム)メンバー、管理栄養士、本部職員などで構成する『大規模災害部会』を設置し、地域の多様な関係者と連携を図りながら、大規模な避難訓練を実施することにより、災害時の利用者の安全確保と法人の事業継続が実現できる体制をつくっています。また、地域住民に福祉避難所として認知してもらうため、当施設で『彩雲祭』を毎年開催し、地域との交流を図るとともに、防災意識を高めてもらうことに取り組んでいます」。
平時には職員の研修や会議室として使用しており、100人以上を収容できるホールを地域住民に貸し出すほか、社会福祉士等の実習の宿泊場所としても活用しているという。
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| ▲ 平成26年に福祉避難所の機能を備えた「彩雲館」 | |
地場産業との連携により地域課題を解決
地域活動の取り組みとしては、福祉の枠を超えて地場産業や農業、工業と連携・協働した活動を行っている。地場産業との連携では、地域課題の解決に貢献できるプログラムとして「ほんず活動」に取り組んでいる。
「ほんず活動」について、障害者支援施設「紡」施設長の村地正浩氏は次のように説明する。
「城陽市は、碾茶(抹茶の原料)の名産地として知られていますが、『ほんず(よしず)』といわれる葦の茎を編んだ『すだれ』のようなもので茶園を覆い、適度に日光を遮ることにより、まろやかな旨味や甘みがあるお茶になるという伝統的な栽培方法があります。この『ほんず』の編み手が高齢化により不足していることから、入所施設の日中活動のなかで利用者が製作に取り組んでいます。利用者が地場産業を支える一翼を担いながら、地場産業の継承と障害者の社会参加を両立させる取り組みとして高い評価を受けており、利用者の生きがいや働きがいにつながる活動となっています」。
現在は、良質な「ほんず」の製作が評判となり、茶農家だけでなく、川床を営む料亭などにも納品しているという。
農福連携では、同法人の自家農園で就労継続支援B型事業と生活介護の利用者が40種類近くの野菜の無農薬栽培に取り組んでいる。さらに、地元のブランド梅「城州白」づくりの後継者不足という課題に対して、「青谷まちづくりの会」と協働し、梅が不作の年に農家の収入を助けるために、レモン栽培の普及に協力しているという。
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| ▲ 左から長野美香氏、村地正浩氏 | |
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| ▲ 「ほんず活動」を通して利用者は地場産業を支える一翼を担っている | ▲ 農福連携で利用者が栽培した野菜は、法人が運営するカフェなどで使用される |
産業用ロボットと障害者就労を組みあわせた仕事を創出
工福連携の取り組みとしては、令和3年に「KOUFUKU連携プロジェクト」を始動し、産業用ロボットと障害者就労を組みあわせた新しい仕事を創出することにより、就労支援の工賃向上と利用者の生きがい・働きがいにつなげている。
工福連携について、障害者支援施設「魁」施設長の長野美香氏は次のように説明する。
「活動内容としては、河川の氾濫や溜め池の監視、高齢者の見守りなどに活用される半導体センサー基板の製造において、就労継続支援B型事業の利用者が基板に部品を取り付ける作業を行い、それを産業用ロボットではんだ付けしています。民間企業から産業用ロボットの研修を受け、大学等の研究機関と連携してセンサーのプログラミングや活用についてアドバイスをいただいています。将来的には、こどもの教材キットや害獣対策センサーなどに活用し、地域に貢献していきたいと考えています」。
障害者就労と工業の連携は、いわゆる下請け作業が多くみられるなか、同プロジェクトでは、先端技術である産業用ロボットを活用し、高付加価値かつ公共サービスに資する製品を創造することを目指している。
さらに、地域のコミュニティスペースとして、城陽市で「ぷちぽんとKitchen + farm」、京都市伏見区で「カフェぷらんたん」、宇治市で「カフェさぴゅいえ」の3つのカフェを運営している。
「カフェは知的障害者の働く場となっており、『さぴゅいえ』は就労移行・就労継続支援A型事業所として、そのほかの2カ所は生活介護の利用者が作業に関わっています。提供するメニューは農福連携で利用者が栽培した野菜などを用い、ランチを中心に多くの地域住民にご利用いただき、地域と施設をつなぐ役割を果たしています」(長野氏)。
カフェの年間来客者数は、約2万人(令和6年度)にのぼり、カフェの機能を活用した居場所づくりとして、親子で楽しめるパン教室や絵本カフェ、キッズカフェ、マルシェなどの企画を実施している。
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| ▲ 工福連携として、センサー基板に部品を取り付ける作業に取り組む利用者 | |
地域住民の孤独・孤立対策に取り組む
孤独・孤立対策としては、高齢者向けに介護教室やヨガ教室、健康体操教室などを実施するほか、介護施設のリハビリ機器を無料開放することにより、孤独・孤立を防ぐとともに介護予防に取り組んでいる。
こどもへの支援としては、活動拠点の3地域でこども食堂を毎月開催している。地域のボランティア、学生、民生委員、行政職員、保護者などがスタッフとして運営に関わり、地域コミュニティの核となっている。また、障害や難病をもつ兄弟姉妹がいるこどもの孤独・孤立対策として、運営するカフェで「きょうだい児の会」を開催し、互いの体験や悩みを共有しながら情報交換を行う機会を提供しているという。
さらに、若年者等就労支援拠点では、15〜49歳までの若者の就労支援を行うとともに、ひきこもり状態の人たちに対し、居場所や交流の機会を提供するため、「夜カフェ」と「ZOOMカフェ」を開催している。
「『夜カフェ』は月1回、17〜19時の時間帯に居場所として開放しており、毎回10人ほどの方が利用しています。ひきこもり状態の人たちは、相談窓口に来所することにハードルがありますが、気軽に立ち寄れる場で自由に過ごしてもらうなかで、人とつながる機会を提供しています。また、居場所に来所することが難しい方も少なくないため、コロナ禍を機に『ZOOMカフェ』を開始し、オンラインで交流することにより、社会との緩やかなつながりをつくることに取り組んでいます」(磯理事長)。
そのほかにも、地域共生社会の実現に向け、地域住民向けのセミナーや体験イベントを通じて福祉への理解を深めることに取り組んでおり、小学校での福祉教育や大学で福祉現場や支援などについて伝える講演などを実施しているという。
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| ▲ 高齢者の孤独・孤立対策として、介護教室や健康体操教室、介護施設でリハビリ機器の無料開放などを実施 | ▲ 障害者の働く場として3カ所のカフェを運営。カフェの機能を活用した居場所づくりを展開している |
新たな指針「ネクストビジョン2035」を策定
同法人は、令和7年2月に創立60周年を迎えたことを機に、新たな10年の指針として「ネクストビジョン2035」を策定し、「暮らしの質の向上」、「経営資源の有効活用」、「創造性の発揮」を3本柱に掲げ、今後5年間の行動目標となる「中期経営計画2030」に盛り込んでいる。
「暮らしの質の向上」では、@人材確保・育成・定着と生産性向上、A障害者支援施設とグループホームの再編、B社会的養育事業の展開、Cこども事業の拡充と医療的ケアの強化の4項目を目指すべき方向性として示した。
「『社会的養育事業の展開』では、新たに乳児院を開設し、医療的ケアや発達障害などのニーズに対応していくことをあげています。また、『こども事業の拡充と医療的ケアの強化』としては、令和7年10月に子育て世帯が増加する島本町で小規模保育所と学童保育を開設しており、今後は発達障害に特化した診療所と、医療的ケアに対応できる認定こども園の開設を構想しています」(磯理事長)。
そのほかにも「創造性の発揮」では、孤独・孤立や生活困窮など複雑化・複合化する地域生活課題に対し、社会福祉法人の役割となる公益的な取り組みを通じて対応していくことをあげている。
地域共生社会の実現に向け、地域活動による「共生・共助」の地域づくりを実践する同法人の今後の取り組みが注目される。
社会福祉法人南山城学園
理事長 磯 彰格 氏
障害、介護、子育て、生活困窮などといった福祉の課題は、地域の暮らしと切り離すことはできません。法人の未来の羅針盤となる「ネクストビジョン2035」を策定し、「暮らしの質の向上」、「経営資源の有効活用」、「創造性の発揮」を軸に、制度の垣根を超えた包括的支援と人材育成を進めています。また、農福連携や工福連携など、地域資源と結びついた実践は、利用者が「支えられる側」から「支える側」へと変わる契機となりました。今後も孤独・孤立や災害対応など複雑化する地域生活課題に挑み、地域の誰もが担い手となる共生・共助の輪を広げていきたいと思います。
<< 施設概要 >>
| 理事長 | 磯 彰格 | ||
| 病院開設 | 昭和40年2月 | ||
| 法人施設 | 【障害】障害者支援施設、障害者グループホーム、デイサービス、就労移行支援事業所、就労継続支援A型・B型事業所、相談支援事業所など 【介護】介護老人保健施設、デイサービス、居宅介護支援事業所 【保育】認定こども園、認可保育所、小規模保育所、学童保育など 計39事業所 |
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| 住所 | 〒610−0111 京都府城陽市富野狼谷2番地1 | ||
| URL | https://minamiyamashiro.com/ | ||
| TEL | 0774−52−0425 | FAX | 0774−53−7578 |
■ この記事は月刊誌「WAM」2025年12月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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