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— 和歌山県橋本市.医療法人敬英会介護老人保健施設グリーンガーデン橋本 —
担い手不足時代を拓く外国人人材の活用

▲ 施設の外観

全ての関わる人の質の向上を目指す

 平成8年に設立された医療法人敬英会(法人本部:大阪市)は、「人にやさしく、全ての関わる人の質の向上を目指す」という法人理念のもと、地域に根ざした医療・福祉サービスを提供し、住み慣れた地域で利用者・家族が安心して自立した生活を続けることを支えてきた。
 法人の沿革としては、平成10年に和歌山県橋本市に介護老人保健施設「グリーンガーデン橋本」を開設したことにはじまる。現在は、橋本市のほか、大阪市と豊中市において、3カ所の老健をはじめ、介護付き有料老人ホーム、ケアハウス、認知症対応型グループホーム、デイサービス、訪問介護事業所、居宅介護事業所等を運営。さらに、関連法人に大阪府寝屋川市で特別養護老人ホーム等を運営する社会福祉法人敬英福祉会があり、「敬英会グループ」を形成している。
 和歌山県橋本市にある老健「グリーンガーデン橋本」は、人材不足が慢性化する地域のなかで、超強化型老健として稼働率100%を維持しながら、質の高いリハビリとケアを提供している。
 同施設が立地する橋本市の人口推移や地域特性について、理事長の光山誠氏は次のように説明する。
 「橋本市は、隣接する大阪府のベッドタウンとして高度経済成長期に人口が急増しましたが、平成12年の約7万人をピークに減少し続けており、令和32年には半減することが推計されています。労働人口の流出も進み、介護人材の確保が非常に厳しい地域となっています。近年は介護人材の不足に加え、物価高騰などにより、老健の経営状況は厳しくなっており、令和5年度の全国にある老健の赤字施設の割合は3割を超え、廃止施設が増加傾向にあります。そのようななか、当法人は、平成21年から人材不足に対する戦略として「処遇改善」、「生産性向上」、「多様性」という3つの方針を掲げ、とくに外国人介護人材の確保.育成.定着に注力してきました」(以下、「 」内は光山理事長の説明)。


先駆的に外国人介護人材の採用、育成に取り組む

 同法人では、平成21年より先駆的に外国人介護人材の採用に取り組み、これまでの採用者は法人全体で300人を超えるなど、全国でも有数の実績となっている。外国介護人材の育成では、日本語の習得や介護スキルなど個々の状況に応じたOJTを実施し、多様な介護人材の確保、育成に取り組んできた。
 さらに、平成29年には、大阪介護老人保健施設協会や大阪府、他法人の事業所と連携し、外国人人材の介護福祉士の資格取得や就労を目的としたプログラム「大阪介護留学支援プログラム」を策定。他施設でも活用できるよう普及させることにより、外国人人材の介護福祉士の養成に大きく貢献している。
 現在の受け入れルートとしては、3校の養成校からの紹介が中心となっており、「グリーンガーデン橋本」では59人の外国人職員が在籍し、そのうち34人が介護福祉士となっている。グループ全体の外国人職員数は120人(うち介護福祉士74人)で、全職員に占める割合は約2割に達している。
 出身国別では、ネパール50人、ベトナム40人、ミャンマー12人、バングラデシュ9人、モンゴル4人など、多様な国籍の職員が在籍しているという。
 「最初の頃は、受け入れのハードルが低かったベトナム人が半数近くを占めていましたが、近年は減少傾向にあり、ネパールとミャンマーの人たちが増えています。これだけ多国籍の人たちが集まる職場は少ないと思いますが、長年の取り組みにより、多様性を認めあう職場の風土が醸成されているため、言語や文化などが異なっても一緒に支えあいながら、働くことが当たり前の光景となっています」。


 ▲ 施設内で養成校の教員と学生がヒアリングを行っている様子  ▲ 多国籍のスタッフが在籍しているため、掲示板は多言語で表示している
 ▲ 「グリーンガーデン橋本」では、59人の外国人職員が在籍して介護業務を行っている



外国人介護人材の受け入れのポイント

 外国人介護人材の受け入れのポイントとして、学習支援、生活支援、就労支援をあげている。
 学習支援とコミュニケーション支援では、公益社団法人日本介護福祉士会が運営する日本語学習WEBサイト「にほんごをまなぼう」を導入している。同サイトは、介護現場で必要な日本語能力と介護技術の習得をサポートするツールで、介護福祉士等の試験対策は13カ国語に対応しており、無料で利用することが可能となっている。
 生活支援としては、老健の敷地内に一般的な建築物の職員寮を設置するとともに、トレーラーハウスを活用した職員寮を整備している。
 トレーラーハウスは、住宅設備を備えた移動可能な車両として登録される建築物の一種となっている。一般的な建築物と異なり、車両(動産)の取り扱いになるため、建築確認申請や不動産取得税、固定資産税などが不要で、建築基準法から除外されることから通常は一般建築ができない土地に設置が可能などのメリットがあるという。
 トレーラーハウス1台当たりの定員は4人で、4台を職員寮として活用している。生活環境としては、それぞれの部屋に玄関があり、ベッドを備えた個室とキッチン、バス・トイレなどを完備し、プライバシーが保たれている。
 「家賃は、住宅補助を利用した場合、月2万円となっています。一般的な建築物の職員寮も整備しているため、職員は住まいを選ぶことができますが、快適な生活環境と経済的な魅力からトレーラーハウスへの入居を希望する外国人職員が多くなっています。法人側のメリットとしては、建築費が高騰するなかで経済性に優れており、1台の価格は周辺の工事を含めて2000万円ほどです。入居者1人当たり500万円と考えると、10年で回収することができます。もし不要になれば移動や売却することも可能となっています。さらに、職住近接のため、通勤手当がかかりませんし、災害など有事の際にも、職員がすぐにかけつけられることも大きいと思います」。


 ▲ トレーラーハウス内は、ベッドを備えた個室やキッチン、バス.トイレを完備し、プライバシーが保たれた生活環境を提供
 ▲ 生活支援として、敷地内には一般的な職員寮とともに、トレーラーハウスを活用した職員寮を整備

日本人職員と同様の処遇を行う

 外国人職員のキャリアアップでは、日本人職員と同様の仕組みを導入し、主任クラスの職員も多くなっている。外国人職員が主体となって運営している認知症カフェでは、地域交流を図りながら経験を積むことでキャリアアップにつなげているという。
 「外国人職員の受け入れのポイントでは、学習支援、生活支援、就労支援をあげましたが、まずは生活支援に投資を行いながらしっかりサポートすることが重要です。満足でなくてもよいので、不安と不満足の要因を必ず排除していくことが大切になります。また、外国人職員の定着に向けては、処遇改善も欠かせません。当法人は、介護福祉士の資格手当として毎月2万5000円を支給しており、外国人介護福祉士の手取り額は約20万円となっています。例えば、トレーラーハウスに入居している場合、家賃は2万円で済むので18万円以上が残ります。橋本市で生活していくには十分な給与額であることから、離職せずに定着することにつながっています」。
 また、橋本市は車がないと生活が難しい地域となるが、運転免許を取得してバイクや車を所有している外国人職員が多く、日本人職員と同様に自立して生活することができているという。


 ▲ 移動手段としてバイクや車を所有する外国人職員が多く、自立した生活を送っている

外国人職員を採用する経営的な効果

 「グリーンガーデン橋本」で外国人職員を採用している経営的な効果としては、@離職率の低下、A平均年齢の低下、B採用コストの低減、C事業収益とサービスの質の向上をあげている。
 離職率は、令和6年度は6.9%、令和7年度は1人の離職者もおらず、外国人職員が定着していることが質の向上の要因となっている。同施設の職員の平均年齢は43.2歳で、日本人職員が47.7歳であるのに対し、外国人職員は26.3歳と全体を大きく引き下げているという。
 「採用コストの低減としては、以前は人材派遣会社や有料職業紹介を活用しなくてはならず、現在もスポットで活用することがありますが、計画的な採用については外国人職員を安定的に確保できているため、採用コストが大幅に低減しています。また、多くの外国人介護福祉士が在籍することで『サービス提供体制加算1』の算定が可能となり、それだけでも大きな事業収益となっています。人材を確保することでサービスの質の向上につながり、それにより稼働率や在宅復帰率が高まり、経営が安定するという好循環が生まれています」。
 同法人は、外国人介護職員の育成や生活支援などの取り組みが評価され、令和5年度「介護職員の働きやすい職場環境づくり厚生労働大臣表彰」の優良賞を受賞している。


ICTの導入により生産性向上を図る

 そのほかにも、生産性向上に向けたICTの導入としては、業界最大規模の介護職・看護職の有資格者向けのワークシェアサービス「カイテク」(カイテク株式会社)と、介護施設・医療機関向けの無料シフト管理サービス「カイテクシフト」を導入している。
 「『カイテク』は、介護福祉士や看護師をはじめとした有資格者のみが登録され、即戦力となる人材をマッチングすることができます。また、シフト作成ソフトの『カイテクシフト』は、煩雑なシフト作成をスマホで完結させることが可能で、シフト作成やスポットワークの調整時間が大幅に削減でき、生産性の向上につながっています。『カイテクシフト』の開発では当法人も全面的に協力しました」。
 人材不足が慢性化するなか、先駆的に外国人介護人材の採用・育成に取り組み、質の高いサービス提供につなげることにより、利用者.家族の自立した生活を支える同法人の今後の取り組みが注目される。


地域を守るための事業所であり続ける
医療法人敬英会 理事長 光山 誠氏

理事長  人口減少に伴う慢性的な人材不足や介護需要の変化に加え、物価高や建築費の高騰により、介護施設や医療機関の経営はますます厳しくなり、事業を継続することが困難になる事業所が増加することが予測されます。
 その一方で、ピンチはチャンスと捉え、地域でいちばんの施設となれば必ず生き残ることができます。そのためにも、利用者.家族をはじめ、紹介してくれる地域の病院やケアマネジャーから信頼してもらうことが重要であり、地域を守るための事業所であり続けたいと思っています。




<< 施設概要 >>
理事長 光山 誠 開設 平成10年4月
法人施設 介護老人保健施設3カ所、介護付き有料老人ホーム、ケアハウス、グループホーム、デイサービスセンター、ヘルパーステーション、ケアプランセンター
住所 〒648-0003和歌山県橋本市隅田町山内19191
URL 0736−37−4165
TEL https://keieikai.com/ FAX 0736−37−4185


■ この記事は月刊誌「WAM」2026年5月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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